還暦おめでとう!マーシーこと真島昌利のグッとくるポップロック10選  2月20日は真島昌利の誕生日、マーシーの魅力を知るための名曲10選

ザ・クロマニヨンズ(ex - ザ・ブルーハーツ、ザ・ハイロウズ)のギタリスト、マーシーこと真島昌利が今日2月20日、還暦を迎えた。

今月10日には初の著書であり自伝的ディスク・ガイドの『ROCK&ROLL RECORDER』がリリースされている。この中でマーシーは、ビートルズとの出会いの衝撃が全ての始まりであったと明かしている。同様にビートルズに衝撃を受けロックに開眼した僕は、憚りながら親近感を抱いた。

ヴォーカルの(甲本)ヒロトと37年間3つのバンドを共にし、曲を半々に分け合う様はレノン=マッカートニーをも想起させる。

そこで今回は、稀代のメロディメイカーたるマーシーの魅力が分かる隠れた名曲を、それも敢えてポップス寄りの10曲を選んでみた。名付けて “グッとくるポップロック10選”。発表順に挙げてみよう。マーシーの知られざる魅力が少しでも伝われば幸いである。

風のオートバイ / 真島昌利

「TRAIN-TRAIN」での大ブレイクから1年足らずで、マーシーはソロデビューを果たした。ブルーハーツの前に組んでいたバンドTHE BREAKERSでのバンドメイト、篠原太郎との共同プロデュースで作られた名作の誉れ高きファーストソロアルバム『夏のぬけがら』(1989年)からの、ずしりと重いスローなラヴバラード。ブルーハーツでは表現出来なかったであろう、荒涼たる世界の中での切実な愛が描かれている。

脳天気 / ザ・ブルーハーツ

 いい天気だ いい天気だ
 いい天気だ ノーテンキだ

ブルーハーツが大きく表現の幅を広げた4枚めのアルバム『BUST WASTE HIP』(1990年)から。ミドルテンポのメジャーなフォークロックなのだが、「あれじゃないこれじゃない 少しは忘れる」といった歌詞に鬱屈が見え隠れする。ソロの世界観にも通じる虚無も感じられる、正に隠れた名曲だ。

オーロラの夜 / 2人でいれば / 真島昌利

再び篠原太郎と共同でプロデュースした2枚めのソロアルバム『HAPPY SONGS』(1991年)は、マーシーのソロで最もポップスが全開した1枚になった。個人的にはソロアルバムの最高傑作だと思っている。

 オーロラのように オーロラのように
 消えてしまう前に

ファーストシングルにもなった「オーロラの夜」は、せつなさもあるがロマンチックでドリーミーなアップミドルテンポのポップス。一方「2人でいれば」はマーシーが低い声で歌うアコースティックなスローラヴバラード。その詩の世界は前作のような重さは無く、やはりロマンチック。

10曲には入れられなかったが、セカンドシングルの「夜空の星くず」もフィル・スペクターをオマージュしたサウンドのドリーミーな逸品。心が温かくなる曲が多いこのアルバムのキーワードは “ロマンチック” なのかもしれない。

ホームラン / 泣かないで恋人よ / ザ・ブルーハーツ

ブルーハーツの最もポップな4枚めのアルバム『HIGH KICKS』(1991年)から。こうやって発表順に並べてみると、マーシーのソロとブルーハーツのアルバムに明らかにある種の比例関係が認められる。

「ホームラン」は、未来のONがこの中にいるかも… と草野球を歌ったミドルアップテンポのフォークロックで、その詩の世界もあくまでもポジティヴで清々しい。僕はディレクターを務めた掛布雅之さんの自伝的なテレビ番組のオープニングでこの曲を使った。

「泣かないで恋人よ」は楽器の数も多くない、スローなラヴバラードで、ヒロトの素朴なヴォーカルも光る。

 泣かないで恋人よ
 どうにかなるようになる

詩は恋人をあれこれと励ますもので、そこにはマーシーらしい吹っ切れた哲学も見えるのだが、美しいメロディを含め、曲はロマンチックそのものだ。

手紙 / ザ・ブルーハーツ

前作『STICK OUT』(凸)から僅か5か月後にリリースされた凹アルバム『DUG OUT』(1993年)は、前作がロック全開だったのに対し、ポップな曲やスローナンバーが並ぶ落ち着いたアルバムになった。そのオープニングを飾るのがストリングスとブラスを大胆にフィーチャーしたスローナンバー。

 ヴァージニア・ウルフのメノウのボタン
 セロハンのバスのシートに揺れている

中原中也が好きだったマーシーらしく、詩は難解だ。分かるべきではなく感じるべきなのだろう。しかし僕はこの曲を初めて聴いた時、そのあまりに美しいメロディにも圧倒され涙してしまった。初めて聴く曲で涙したのは「TRAIN-TRAIN」以来であった。マーシー自身もソロで歌ったことのある、これは紛う方無き名曲。このアルバムにはマーシーのポップな名曲が他にもまだまだある。

月光陽光 / ザ・ハイロウズ

ハイロウズ2枚めのアルバム『Tigermobile』(1996年)の最後を締めくくる曲。アルバム4枚めのシングルにもなった。

色々あるけれど月光陽光に照らされて進んでいくよ、といった前向きな歌詞。音数も多くアップミドルテンポでロック寄りではあるが、メロディが美しく多分にポップでもある。昨夏、ハイロウズのドラマー、大島賢治がこの曲を叩くのを生で観て、この名曲の良さを再認識した。

恋に落ちたら / ザ・クロマニヨンズ

クロマニヨンズ4枚めのアルバム『MONDO ROCCIA』(2009年)から。この曲の歌詞は「あのね」だけ、これが何回も繰り返される。しかしこれが流石のメロディメイクでしっかりと聴かせる曲になっていて、しかも胸がキュンとすらしてしまうのだから堪らない。

詩人であるマーシーが、特にクロマニヨンズになってから言葉の数を減らしてきているのだが、絞られた言葉でも我々の心をぐっとつかんで離さない。この曲はその究極だ。

ガランとしてる / ましまろ

ヒックスヴィルのヴォーカル真城めぐみとギターの中森泰弘と結成されたユニット、ましまろのデビューアルバム『ましまろ』(2015年)の1曲でシングルでもリリースされたミドルテンポのフォークロック。

ブルーハーツの時以来、マーシーにとっては実に21年振りのソロ活動であった。難解な詩、アコースティックなサウンドは正にマーシーソロを彷彿とさせる。メジャーのメロディながら、“名は体を表す” とばかり、タイトル通りの明るい虚無感がしっかりと響いてくる。

―― 以上10曲、機会があれば是非お聴き頂きたい。また、この曲が抜けているのではないか… というご意見があったら是非お寄せ頂きたい。

最後に、ザ・クロマニヨンズはこの1月まで6か月連続でシングルをリリースし、それを『SIX KICKS ROCK&ROLL』というアルバムにまとめた。その3枚めのシングル「大空がある」はマーシー作で、ジャングルビートが効いたロックなので10選には入れなかったが、シンプルながら聴けば聴くほど今の時代に沁みわたってくるポップナンバーでもある。下にごく短いMVも貼っておくので、機会があったら聴いてみて頂きたい。マーシーの根底に流れるものが変わっていないことがお分かり頂けるはずだ。

カタリベ: 宮木宣嗣

アナタにおすすめのコラムザ・ブルーハーツ「TOO MUCH PAIN」心に残るジョー・ストラマーとマーシーの言葉

▶ 真島昌利のコラム一覧はこちら!

80年代の音楽エンターテインメントにまつわるオリジナルコラムを毎日配信! 誰もが無料で参加できるウェブサイト ▶Re:minder はこちらです!

© Reminder LLC