悩める根尾昂に課す“置いてけぼり特訓”の真意 「まだ皆さんが期待する段階じゃない」

中日・根尾昂【写真:小西亮】

20日は練習試合には行かずに森野打撃コーチと“丸1日マンツーマン”

中日の根尾昂内野手が、春季キャンプで打撃開眼への模索を続けている。20日は沖縄・宜野座村で阪神との練習試合があるが、ついて行かずに森野将彦打撃コーチとマンツーマンの特訓を1日中することに。逸材だからこそ焦らず、急かさず、ブレークの土台を確立していく。

19日に1軍キャンプ地のAgreスタジアム北谷で行われたDeNAとの練習試合では「9番・右翼」でスタメン出場。3回の第1打席は詰まりながら中前に落としたものの、第2、3打席は凡退。立浪和義監督は「まだタイミングが合う時と合わない時がある。それを試行錯誤しながらやっている段階。早く自分の形ができたらいい」と語る。

その“形づくり”のために、特別講座を設ける。指揮官は「明日(20日)は敢えて1日、森野コーチと朝から夕方までバッティングをやる。(練習試合には)連れて行かない」と明言。個別レッスンで、みっちりバッティングと向き合う時間が必要だと判断した。

提案した森野コーチから見ると、取り組むべき課題は「全部」。タイミングの取り方、トップの作り方、スイングの軌道……。この日の試合前練習では、身振り手振りで“スイングをしていい範囲”を伝えた。「今は(バットを構えた位置より)後ろの範囲も、フォロースルーしたその先の範囲も振っている」と言い、無駄な大振りを指摘する。

中日・根尾昂【写真:小西亮】

焦って短命に終わるより、じっくり固めて長く主力になってほしい存在

4球団競合の末に引き当てた甲子園スターで、チームにとっては絶対に育てなければいけない存在。ただ、その壮大な期待値と現状に“ズレ”が生じていると、森野コーチは見ている。

「まだ皆さんが期待しているような段階じゃない。これからやっていかないといけない選手なんだから」

周囲は1日も早いブレークを心待ちにしているが、高卒4年目の21歳。ヤクルトの村上宗隆内野手らのように2、3年で結果を残すようになる選手もいるが、高卒の打者は比較的時間がかかるとも言われている。

下手に焦って短命に終わるよりも、じっくり打撃を固めて長く主力を張ってもらった方が、チームにはとっては大きい。落合博満監督時代の“黄金期”を知る森野コーチだからこそ、常勝軍団を作っていくための方法を怠らない。

まさに、急がば回れ。試合に出てアピールしたい気持ちを押し込め、バットを振って振って、振りまくる。試合中心の日程になってくると時間も裂けないだけに、今こそチャンス。“森野ゼミナール北谷校”が、根尾のためだけに開講する。(小西亮 / Ryo Konishi)

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