<日々全力 瓊浦高バド 林貴昭監督(1)> 躍進 「ものすごい勢い」

生徒と正面から向き合い、全力で指導する林=長崎市、県立総合体育館

 高校バドミントン界で今、最も勢いがある指導者が長崎県にいる。瓊浦男子を率いる林貴昭、48歳。母校を全国上位常連校に定着させ、次代を担う有力選手を輩出する県スポーツ界のリーダーの姿を追った。

 林の一日は、長崎市の学校の寮に近い公園から始まる。
 1月下旬、午前6時前。暗がりを街灯が照らす中、白い息を吐いて走る教え子たちに、林はじっと視線を送っていた。
 「どこか変わった様子はないか」。一人一人に目を配る。公園内を約20分、30周を走り終えた選手から順にグータッチで出迎え、朝食を済ませた後、マイクロバスで全員を学校へ。そこからは体育教諭として授業を受け持ち、放課後は部活で指導する。いつも帰宅時間は午後9時を過ぎる。
 「生徒を寮に送り終えたら、がくっと力が抜ける。でも、朝にはスイッチが入る。情熱は絶えない」
 自他ともに認めるきちょうめんな性格。肌身離さず持つスケジュール帳は、練習メニューから試合結果、普段の気付きまで丁寧な字で埋め尽くされている。「これがなくなったら何もできない」。試合の日から逆算して練習の骨組みを考え、生徒の状態を見て肉付けする。そのすべてを記録した手帳は、過去の成功体験も失敗もすべてが詰まった“参考書”だ。
 経験に裏打ちされた緻密な指導、バドミントンに注ぐ情熱、確実に結果を出す手腕-。県外からも徐々に「林先生の下でやりたい」という生徒が増えてきた。
 日本代表の世界トップレベルでの活躍もあり、バドミントン人気はこのところ一気に高まり、それに伴って高校の競技レベルも格段に上がった。その中で、林は2015年の瓊浦赴任以降、7年間で全国大会の団体2位1回、3位4回という実績を残してきた。個人では19年の全日本ジュニア選手権ダブルスで町田脩太・永渕雄大組(早大1年・筑波大1年)が日本一に輝いている。
 全国優勝常連の埼玉栄を率いる大屋貴司(53)は、そんな林に一目置く一人。30年来の仲という5歳下のライバル指導者を高く評する。
 「情熱的で責任感が強く、自分が決めた道に真摯(しんし)に向かう。だから瓊浦は今、ものすごい勢いで力をつけている」(敬称略)


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