<社説>基地負担増 県民の願いに逆行する

 在沖米海兵隊が那覇港湾施設(那覇軍港)で航空機の離着陸などを伴う訓練を実施したことについて在沖米海兵隊政務外交部長のニール・オーウェンズ大佐は、船舶と航空機を使う訓練に那覇軍港は「理想的な場所だ」と述べた。今後も訓練に使用する可能性を示唆した。訓練は県や那覇市の反対を押し切って実施された。今後、常態化する懸念が強まっている。 一方、防衛省は米軍嘉手納弾薬庫地区の一部返還を発表した。その大部分を防衛省の用地とするという。訓練用地として使われるとみられる。

 このようなやり方は明らかに基地負担増であり、県民の負担軽減への願いと逆行する。政府が唱えてきた「負担軽減」はまやかしと言わざるを得ない。日米政府は基地の運用や返還の在り方を抜本的に見直し、負担を軽減すべきだ。

 那覇軍港の使用について県は、沖縄の日本復帰時に米軍施設の使用条件や目的などを定めた「5.15メモ」に沿って港湾施設として厳格に運用し、航空機の離着陸や訓練をしないよう米側に求めた。これに対しオーウェンズ大佐は5.15メモの那覇軍港の項目には「何一つ制限は書いていない」と強調した。「米軍の運用について抗議は受け付けない」と主張する大佐の高圧的態度は断じて容認できない。県民の懸念をないがしろにする姿勢は県民軽視である。

 さらに由々しき問題は米軍が自由に使用目的を広げられる状況を日本政府が追認していることである。政府も那覇軍港内で航空機の離着陸や訓練は可能だとの見解だ。基地負担軽減への県民の願いとあまりにも懸け離れている。この姿勢を改め、那覇軍港の使用条件を厳格化し、米軍に順守させるべきだ。

 そうでなければ、那覇軍港の移設議論も見直さなければならない。国と県、那覇、浦添両市は「現有機能の移転」という位置付けで移設に向けた議論をしてきたからだ。

 県は軍港への航空機の飛来は、港湾の機能に沿わない目的外使用との立場だ。軍港の使用目的が自由に広げられるのならば「基地負担の新たな形」となり、県が移設を容認する前提は崩れる。使用目的が拡大され訓練が常態化すれば、県が求めてきた先行返還も難しくなる。

 県軍用地転用促進・基地問題協議会(軍転協)は昨年12月に政府へ提出した要請書に、那覇軍港で航空機を運用しないよう盛り込んだ。県、那覇、浦添両市は那覇軍港の使用条件について政府と早急に議論し使用目的拡大を阻止すべきだ。空の自由使用など米軍に特権を与えている日米地位協定も改定する必要がある。

 嘉手納弾薬庫地区の一部返還は1996年3月に日米合同委員会で承認されていた。なぜ返還に26年もかかり、大半を自衛隊が使うのかも疑問だ。復帰50年たっても新たな基地負担増を強いる日米政府の姿勢は断固容認できない。

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