【第4回】専門職大学での学びの実態に迫る ~学生アンケートからみえてきたその魅力~

専門職大学・短期大学(以下、専門職大学)は、従来の大学や専門学校の教育では、目まぐるしく変わる社会の変化・ニーズに対応できなくなった現状を踏まえ、優れた専門技能をもって(高度な実践力)、新たな価値を創造することができる(豊かな創造力)専門職業人の育成を目的とした新たな高等教育機関として2017年に制度化されました。

質の高い実践的な職業教育を行うことが制度的に義務化されました。その目指すところや教育内容は、従来の大学や専門学校とは全く異なるものです。2019年度から設置が始まり、すでに多くの学生が専門職大学で学んでいますが、実際に、学生たちは、その学びをどのように感じ、どのように受け止めているのでしょうか。

今回、IT、情報経営、リハビリテーション、ファッション、農業、動物看護などそれぞれ異なる領域の各専門職大学で学ぶ学生たちにアンケート調査を行った結果、「少人数教育」「理論と実践が連動した教育内容」「実務家教員による実践的な学び」など、従来の大学とは異なる専門職大学の特色に、学生が魅力を感じ、その学びへの満足度が高いことや専門職大学への期待度が高いことなど、その実態がみえてきました。

アンケートの質問項目

Q1: 従来の大学ではなく、専門職大学を選んだ理由を教えてください。

実践に重きを置いた教育内容 ―従来の大学との決定的な違い

専門職大学を選んだ理由(Q1)を尋ねると、いずれの領域においても、従来の大学とは異なる「実践に重きを置いた教育内容」であることが魅力にあげられていました。「専門性に特化している」「実践的な授業形態が多く編成されている」「理論と実践が連動した内容で専門的な知識と技術を学ぶのに最適な環境である」「実習教育が多いカリキュラム編成である」「臨地実務実習やインターンシップ制が充実している」といった内容のコメントがみられ、また「学士(専門職)」が取得できることも魅力の一つになっています。

基礎から実践へと連動したわかりやすいカリキュラム編成

実際に学んでいる内容(Q2)については、「充実した基礎教育が提供されている」「基礎教育から実践教育へと理解しやすいカリキュラム編成になっている」「充実した臨地実務実習やインターンシップ制などが実践されている」など、常に実務や臨床の現場を意識した教育内容に満足していることが伺えました。

専門職大学だから実現できる「少人数教育の実践と豊富な実務家教員」

専門職大学ならではの魅力(Q3)として、「少人数教育の実践と豊富な実務家教員の配置」が全ての領域における共通の魅力としてあげられています。「学生相互間及び学生と教員の間の距離が近い」「コミュニケーションがとりやすい」「アットホーム的である」など、専門職大学の特長の一つである少人数教育という教育環境を重要視しているコメントが寄せられました。また豊富な実務経験をもつ実務家教員がでなければ対応できない実践的かつ専門的な教育が受けられることに、やはり満足度が高い印象です。実務家教員の指導の下で、早い段階から企業との共同プロジェクトに参加している大学があることは、専門職大学だからこそできる実践的教育と言えるでしょう。

→多彩な実務・実践関連授業による実践力向上

多彩な実務・実践関連授業による実践力向上

実践力が身についたと実感できた授業(Q4)では、やはり、実務・実習関連の授業が多くあげられていました。これも専門職大学の特長だと思われます。実務・実習関連の授業内容が、基礎理論科目と連動し理解しやすいことも一因になっていると考えられます。リハビリ系及び動物看護系では、他の職種との連携や社会人としてのマナーの重要性を学ぶ授業もあげられていました。

展開科目による「豊かな創造力」の涵養―そして新たなフィールドへの挑戦

展開科目(Q5)は、これまでの大学教育にはなかった、まさに専門職大学ならではの新しい教育課程です。展開科目の目指すところは、専門科目とそれらと関連する他分野の学びを通して変化の激しい社会に柔軟に対応できる発想力や応用力を身につけるところにあります。

展開科目は、他分野の知識が修得でき、多面的な学びができ、視野が広がり、柔軟な発想ができ、その体験は自らの専門領域にフィードバックされ、自らの知識と技術の向上を実感できる点からも、領域を問わず高い評価が得られています。展開科目が求める「豊かな創造力」の涵養が実践できていることは間違いなく、グローバル化に伴う他領域の理解にも一役買っているようです。展開科目からの学びにより、卒業後の新たな領域への挑戦も期待されます。

自己表現能力―これまでの自分からの脱皮

専門職大学での学びから成長を感じたこと(Q6)として、論理的思考、多角的な考え方、主体性、行動力、コミュニケーション力、プレゼンテーション力、他職種との連携の取り方など多彩な自己表現能力が身についたと、自らの成長を自覚しているようです。少人数教育、理論と実践が連動した学び、多くの実習による実践的学びができる専門職大学だからこそ成長できた能力と言えます。

描く夢は、新たなフィールドの牽引者。「高度な実践力」と「豊かな創造力」を武器に

学生が描く将来像には、それぞれの領域で、専門職大学で培われた「高度な実践力」と「豊かな創造力」をもって地域社会へ貢献しようとする強い意欲が感じられます。また、すでに学生時代から明確な将来へのプロ意識をもっていることも強く感じます。これも専門職大学の学生の特長と思われます。「グローバルに活躍できる人材になりたい」「教育格差の是正に取り組みたい」「新たなフィールドに挑戦したい」「安全・安心な社会を作りたい」「人と自然をつなぐような仕事がしたい」など、壮大な夢が語られています。学生は、専門職大学での学びがあるからこそ可能となる新たな世界へのチャレンジ精神で満ちています。専門職大学での学びによって、それぞれの夢が実現することを願ってやみません。

まとめ

対象とした専門職大学の専門性は、前述の通りそれぞれ異なった領域でしたが、領域の違いにかかわらず学生が専門職大学にもつ印象は極めて良好で、提供される教育に対しての期待度や満足度は非常に高く、また専門職大学での学びから各自の将来への視界も開けていることがわかります。

今回のアンケートから、各々の専門職大学で設置の趣旨に沿う教育が実践されており、専門職大学の実践的教育は、まさにこれからの社会のニーズに応え得る教育であり、これからの社会において専門職大学の貢献度は極めて大きいものであることを実感しました。

※アンケート調査協力校(各大学1名)

大阪国際工科専門職大学

岡山医療専門職大学

高知リハビリテーション専門職大学

国際ファッション専門職大学

情報経営イノベーション専門職大学

東京国際工科専門職大学

東京保健医療専門職大学

名古屋国際工科専門職大学

農林環境専門職大学

農林環境専門職短期大学

びわこリハビリテーション専門職大学

ヤマザキ動物看護専門職短期大

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