「この瞬間、描いた方がいい」旬を逃さず野球イラスト“バズらせた”描き手の哲学とは

ハーフスイングの判定を塁審に求める元オリックスのアダム・ジョーンズ【画像:パーソル パ・リーグTV】

イラスト描く上で守る哲学「選手と描き手はイーブン」

野球選手の特徴的な“一瞬”を捉えたイラストを、SNSなどで見たことはないだろうか。切り絵のような画風で人気を集めるイラストレーターの「りおた」さんは、SNSへの投稿を重ねながら選手とも交流を深めてきた。「Full-Count」では、りおたさんにインタビューを敢行。1枚のイラストができるまでや、1月にSNSで“バズった”アダム・ジョーンズ外野手(元オリックス)の作品について語ってもらった。

【実際の画像を見る】テレビでの紹介から15分…りおたさんが“早業”で仕上げたジョーンズのイラスト

りおたさんは子どもの頃から野球が大好き。山口県在住とあり、一番近くでプロ野球が開催される球場は広島・マツダスタジアムだった。

まだチケットが取りやすかった時代は熱心にスタンドに通い、プレーを見つめた。広島人気が爆発し、チケットが取りづらくなってからは足が遠のいたものの、その後はテレビなどを通して、他球団にも視野が広がったという。気づいたのは「凄く魅力的な選手がたくさんいる」こと。その選手たちを描き、命を吹き込む“りおた流”は、どんな哲学から生まれているのだろうか。

「シンプルで大胆な絵柄、色使いを心がけていますね。あとは(漫画家の)やくみつるさんのような、見た瞬間『この人』ってわかるようなものを目指しています。真面目なファンの方には嫌がられる事もありますが『この選手は僕にはこう見える』という部分を描いていきたい。あくまで選手へのリスペクトと愛が前提ですが、そこはどんなに有名な選手だろうと、描き手とイーブンだと思っています」

イラストはスケッチブックへの下描きを始めてから、1日あれば完成できるという。さらに大事にしているのが「旬」だ。出し時を逃さない瞬発力で話題となったのが、1月に描き上げたアダム・ジョーンズ外野手(元オリックス)のケースだった。

1月14日の深夜、バラエティ番組の「アメトーーク!」(テレビ朝日系)で昨季パ・リーグを制したオリックスが特集された。この番組中、打席のジョーンズがハーフスイングの判定を、捕手と一緒になって塁審に求めるという“珍場面”が紹介された。直後、りおたさんは「この瞬間、描いた方がいい気がする」とピンと来たという。

「アメトーーク!」を見てから15分で公開、ジョーンズ本人も反応

「ジョーンズ選手は愛すべきツッコミどころはありましたが、時折見せるホームランの飛距離はやっぱりMLBのスーパースターでしたよね。ミスをした若手を励まして勇気づけている場面もあったり、長所も短所も含めて人間味が溢れていて、たまらなく好きだなぁと思っていました」

スケッチブックを手にとり、下描きが2、3分。さらにパソコンで仕上げて完成まで15分の早業だったという。自身のツイッターにアップすると、あっという間にバズった。深夜だったこともあり、米国に帰国していたジョーンズが目にして、すぐ自身のツイッターで拡散。さらにアイコンにまで使ってくれた。

「あれこそまさに『今じゃないと意味がない1枚』でしたね。同じ絵を翌日や、数日後に出したところでもうウケないと思うんです。特にスポーツを描く上では、絶対に旬な時期があるので。仕事もあるのでいつもとはいきませんが、描ける限りはと思っています。国際大会などでファンの熱が高まっている時に、タイムリーなものを出したい。広まれば認知してもらえるチャンスですし、いつも以上に共感してもらえる。自分の気持ちもそこに乗っかった嘘偽りのない一枚が出来ると思います」

ジョーンズに限らず、選手から直接の反応も増えて来た。阪神期待の若手・及川雅貴投手からはインスタグラムにメッセージが届き、イラストを提供することになったという。

「野球選手というかアスリートには、自身がファンや世間にどれだけ『親しまれているのか、認知されているのか』を気にしている人が多いと思うんです。だからイラストを描いたらとにかくタグをつけて、SNSにメンションもする。本人に見てもらえなければ意味がないというつもりでやっています。ウザがられたり、嫌がられてないと良いのですが、そこは勇気を持って……ですね」

今後は球団公式の仕事や、グッズのデザインをしてみたいという野望もある。そして描いてみたいのが、新庄剛志監督の就任で注目を集める日本ハムの新ユニホームだ。ファンの間では賛否両論の変化も「いまのNPBは黒とか紺の帽子ばかり。原色に近い色は新鮮ですし、これで10年、20年とやっていきたいという覚悟を感じます。ロゴも、他のスポーツで見られるようなシンプル化への動きを取り入れている感じがしますね」とデザインのプロには好印象だったよう。イラストへの“ビッグボス”登場も近そうだ。

【動画】元オリ・ジョーンズのチェックスイング集

元オリ・ジョーンズのチェックスイング集【動画:パーソル パリーグTV】 signature

(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

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