「新しい長崎県に」 新知事に大石さん 知名度不足も地道に浸透図る

支持者から笑顔で花束を受け取る大石さん(左)=20日午後11時41分、長崎市茂里町、県医師会館

 長崎県民が選んだのは12年ぶりの知事交代だった-。新型コロナウイルス流行下での制約、保守分裂といった異例ずくめの知事選は、新人の大石賢吾さん(39)が4選を目指した現職の中村法道さん(71)との激戦を制し初当選。全国最年少知事が誕生する。20日深夜、当選が確実になると、大石さんは支援者らと喜びを分かち合い、「皆さんと一緒に新しい長崎県をつくっていく」と力強く語った。中村さんは3期12年の実績と経験をアピールしたが、及ばなかった。新人の宮沢由彦さん(54)は支持が広がらなかった。
 午後11時半ごろ、長崎市茂里町の県医師会館。テレビで「当選確実」の速報が流れると、支援者から大きな歓声と拍手が湧いた。大石さんは両手を挙げてガッツポーズ。かすれた声で「ありがとうございました」と何度も繰り返した。
 医師として訪問診療をしていた際、福祉の手が届いていない現場を目の当たりにし「公助の在り方を変えなければいけない」と政治を志した。出馬表明は昨年末と出遅れたが、医師や看護師、薬剤師らの団体、自民党県連、日本維新の会などから推薦を受け、ゼロから態勢を整えた。
 ただ、新型コロナ感染拡大により集会などが開けず、「顔を売りたい新人には痛手だった」(陣営関係者)。会員制交流サイト(SNS)を活用し、毎日の活動を発信。事務所にライブ配信用のスタジオを設け、政策面だけでなく、人柄が伝わる動画チャンネルを開設するなど地道に浸透を図っていった。
 街頭演説では、飲食店の酒類提供自粛など県内で一律規制した県の新型コロナ対策を批判。医師としての知見も踏まえ、「地域の感染状況に合わせた対応をすべき。私ならばすぐに変わる」と主張した。都市部では子育て支援の充実を、離島では「(五島市出身として)苦しさが分かっているからこそできる」と1次産業振興策などを熱っぽく訴えた。
 自民や維新の国会議員と街頭に立ち「国とのパイプ」をアピール。母校の県立長崎北高ラグビー部OBらの熱い応援演説に感極まることもあった。終盤になるにつれ、有権者の反応に手応えを深めていった。「これからは若い人が引っ張っていかんば」「期待しとるよ」-。そんな声に背中を押されながら県内を駆け回り、立候補表明からわずか2カ月で知名度不足を挽回した。
 3人の子どもを育てる父親でもある大石さん。「全国最年少知事」は支援者らと万歳をして喜びを分かち合った後、力強く述べた。「県民一人一人に寄り添う県政をしっかり運営していきたい。お力添えをよろしくお願いします」


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