「エタリの塩辛」絵本完成 日本スローフード協会が雲仙市に寄贈 子どもに伝統食材伝える

絵本「エタリ トッタリ ツクッタリ」

 長崎県雲仙市の橘湾沿岸地域の伝統食「エタリ(カタクチイワシ)の塩辛」を題材にした絵本「エタリ トッタリ ツクッタリ」(一般社団法人日本スローフード協会発行)がこのほど完成し、14日、同市の小学校と図書館などに計66冊が寄贈された。
 同協会は、途絶えつつある伝統食材を調査、記録する世界的な取り組み「味の箱船」の日本での窓口。味の箱船には世界で5655品目、うち日本で74品目が登録されている。エタリの塩辛も登録食材の一つ。
 次代を担う子どもたちに伝統食材を紹介するため、同協会がエタリの塩辛など国内の4品目を題材に選んで「味の箱船 絵本シリーズ」を作った。絵本「エタリ-」は同協会の黒川陽子さんと、雲仙市南串山町の生産者で「エタリの塩辛愛好会」事務局の竹下敦子さんらが担当した。
 同市の橘湾沿岸地域では、漁獲されるカタクチイワシをエタリと呼び、その塩辛の漬け込みが秋の風物詩だったが、近年は食生活の変化に伴い、あまり作られなくなった。絵本では、海を泳ぐカタクチイワシが塩辛に加工され、食卓に上がるまでを、ほのぼのとしたタッチで表現。「エタリ タリタリ ターリタリ」というフレーズが繰り返され、リズミカルに読める工夫もされている。
 黒川さんと竹下さんが同市役所を訪れ、金澤秀三郎市長に絵本を贈呈。黒川さんは「郷土に根差した(エタリの)食べ方を書きものとして残すことができて良かった」、竹下さんは「エタリの歌や踊りも考えているので、子どもたちに読み聞かせてもらいたい」と話した。金澤市長は「豊かな自然に育まれた食材は雲仙市の宝。絵本を大切に活用する」とお礼を述べた。
 「エタリ-」は1650円。3月ごろから書店で購入できる。問い合わせは黒川さん(電子メールetari.ehon@gmail.com)。

金澤市長に絵本を手渡す竹下さん(中央)と黒川さん(右)=雲仙市役所

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