趣味は“スバル360” 「大切に乗り続けたい」 西海・冨多さん、20年かけ修復

修復を終え軽快なエンジン音を響かせているスバル360と冨多さん=西海市西彼町(写真の一部を加工しています)

 「趣味はスバル360」。商用車が主流だった昭和30年代、一般家庭への普及を目指し開発された軽自動車を長崎県西海市西彼町の自営業、冨多雄三さん(63)が20年の歳月をかけ修復した。車は2サイクルの軽快なエンジンを響かせ、西海路を駆け抜けている。
 スバル360は富士重工業(現SUBARU)が開発。販売開始の1958年から70年の終了までに約39万台を製造。形状から「てんとう虫」の愛称で親しまれ、今でもファンが少なくない。
 修復した車は65年前期製。40歳のころ大分で古びた車体と出合い15万円で購入した。登録を一時抹消し、工場勤務の傍ら部品を集め修復を進めたが、思うように時間が取れず、50代半ばに諦めかけたこともあった。60歳の定年退職後は整備に没頭。一昨年秋に車検を通過し、昨年春にエンジンや足回りの調整を終えた。
 社会に出て初めて買った車がスバル360で、この車が「3代目」。手を加え憧れていたほろつきのオープンカー仕様にした。日常の足にはもっぱら軽トラックを愛用しており、走らせるのは晴れた日のみ。ちょうつがいが後ろについた前開きドアや、エアコンがない時代に外気を取り入れていた「三角窓」を年配者は懐かしみ、若者の目には斬新な車に映っているという。
 現行の車には「電気仕掛けであまり興味がない」と語る。部品を全てばらし、再度組み上げた修復経験から「自分でメンテナンスできるのがおもしろく大きなプラモデル。道具としての愛着もわいてくる」と魅力を語る。
 世間では脱炭素社会に向けた電気自動車(EV)の普及も進むが、冨多さんは「修復を通じて知り合いもできた。他に乗りたい車はなく、車検で『駄目だ』といわれるまで、手入れを続け長く大切に乗りたい」。わが子を見つめるようなまなざしを「てんとう虫」に向けた。


© 株式会社長崎新聞社