足利市西宮町の両崖山で発生した山林火災から21日で1年。鎮火まで23日間を要し、一時は300世帯以上に避難勧告が出されるなど市民生活にも大きな影響を及ぼした。寒さが緩むこれからの季節は山でのレジャーを楽しむ人が増えるが、県内で発生した山林火災の原因の多くが農作業中の火入れやたばこなど人為的だったことから、屋外での火の扱いには細心の注意が必要だ。
県は1518ヘクタールを焼失した1977年の黒羽町(現大田原市)・馬頭町(現那珂川町)での山林火災を教訓にしようと、3月15日を「山火事防止デー」に指定。3~5月は「春の山火事防止強調運動」として啓発活動に取り組んでいる。
県森林整備課によると、行楽や山菜採りなどで山に入る人が増える3~5月に森林火災が多発する傾向にある。空気が乾燥していると、火の付いた落ち葉や下草が風にあおられて燃え広がりやすくなるという。
昨年1年間で発生した県内の林野火災は38件(前年比15件増)。原因別では、ごみ・落ち葉焼却からの延焼が14件と最も多く、農作業での火入れが10件、建物火災からの延焼が3件、たばこが2件と大半が人為的なものだった。
民家の近くであれば道路や水道が整備されていて、消防車が現場近くまでたどり着ける。だが、両崖山のように山頂付近で発火すると火元まで徒歩で行くか、防災ヘリによる上空からの放水になり、消火活動が困難になるケースも。防災ヘリは強風では出動できず、再び燃え広がることもあるという。
山火事につながらないよう、野外で火を使う場合は普段以上に注意が必要だ。森林やその周辺で火入れする場合は事前に市町長の許可を受け、十分な防火設備を用意してから行う。火入れ中はその場を離れず、使用後は確実に消火を。強風時や乾燥時、枯れ草や落ち葉などがある場所では火の使用は避ける。たばこは指定された場所で喫煙し、吸い殻は必ず消して投げ捨てない。
山火事で森林や下草が失われると、山が水を蓄える機能が損なわれ土砂災害などが起きやすくなる。同課は「野外で火を入れる場合は最後まで責任を持って後始末するなど、ルールを守ってレジャーを楽しんでほしい」と呼び掛けている。
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新型コロナウイルス禍だからこそ心身をリフレッシュさせたいと、登山やキャンプといったアウトドアが注目されている。アウトドア専門店「WILD-1宇都宮駅東店」では、コンパクトに持ち運びできるガスバーナーや調理器具は人気商品の一つだ。
アウトドアシーンでの火の取り扱いについて、佐々木徹(ささきてつ)副店長は、火を使って良い場所なのか事前に確かめ、現地に着いてからも空気が乾燥していて枯れ葉など燃え広がりやすい物が近くにないか、周囲の迷惑にならないか考えて使用するよう呼び掛ける。
佐々木副店長は「ガスバーナーが使えない場所なら、保温性に優れた水筒で熱湯を持参すればフリーズドライの食品やホットコーヒーなどが楽しめる。アウトドアを楽しむためにもマナーを守ることが重要」と話した。
【足利・両崖山火災】2021年2月21日午後、足利市西宮町の両崖山(251メートル)の山頂付近から煙が出ていると登山客が119番した。発生3日目に延焼拡大し、県内外の消防局・本部や他都県の防災ヘリ、自衛隊ヘリなどの応援を得て発生23日目の3月15日に鎮火した。焼失面積は167ヘクタール。一時は市内の305世帯に避難勧告が発令され、近くの中学校や高校が休校したほか、北関東自動車道足利インターチェンジ(IC)-太田桐生IC間が通行止めになった。