【MLB】“ロボット審判”導入で何が起こる? 試験運用した米独立L社長が語る変化と課題

“ロボット審判”を導入した米独立L社長が実際に運用した所感を語った【写真:Getty Images】

自動ストライクボール判定システム(ABS)は今季から3Aに導入される見込み

MLB傘下の3Aリーグで、今季から自動ストライクボール判定システム(ABS)が導入される見込みだと米複数メディアが報じている。“ロボット審判”とも呼ばれる同システムはどのような影響をもたらすのか? 実際に試験導入していた米独立リーグの社長が実情を明かしている。

MLBとパートナーシップを結んでいるアトランティック・リーグは、2019年シーズンの後半からABSが導入されていたが、今季から取り止めになることを発表している。同リーグのリック・ホワイト社長が「ピッチング・ニンジャ」の愛称で知られる投球分析家、ロブ・フリードマン氏のYouTubeチャンネルに出演。“ロボット審判”を実際に運用した所感を語った。

NPBでも使用される計測器「トラックマン」を使用したABSの精度は「誤差1/4インチ(約6.35ミリ)内」で「どんな人間よりも詳細に見ることができる」とホワイト氏はその正確性を高く評価する。

一方で、予想外の要因で判定にズレが生じてしまった経験も明かした。例えば、ホームベースやバッターボックスが完全に水平でなければ、測定に誤差が発生する。シーズンが進むうちに、天候やプレーによってホームベースが中心から歪んでしまい、判定に影響が及んだこともあったという。

ホワイト氏は「システムがちゃんと機能していても、他のところで問題が発生することが分かった。これこそMLBが我々に試験導入を依頼した理由だ」とこの実験の意義を説明する。

投手の攻め方、捕手の構え方にも変化が

ただ、この実験に全ての選手が納得していたわけではなかった。「なぜ俺たちがこんなことをしないといけないのか」と問う選手は多く、リーグを離れる決断をした選手も少なからずいたという。選手からの不満は、今季からABSを取り止める要因の1つにもなった。

逆にシステムをうまく利用し、活路を見出す選手もいた。少しでもストライクゾーンをかすめていればストライクと判定されるため、よりギリギリを狙った投球ができる投手が有利となった。

捕手の構え方にも変化が。球審からの“見え方”を気にする必要がないため、大きな変化球でボールからストライクを狙うとき、ウエストするかのように大きく外して構え、投手にターゲットを分かりやすく見せる捕手も現れた。一方、際どいコースをストライクと判定してもらうための技術「フレーミング」はその価値を失うことになる。

“ロボット審判”には当然ながら“人間らしさ”はない。大差がついて勝負が明らかな試合を早く終わらせようと、審判がストライクゾーンを広くするようなことも起こらない。どんな試合展開でも判定は一定だ。

今後ABSの実験の場は3Aに移されることになるが、その結果次第では将来的にメジャーで導入される可能性もある。そうなれば、プレーする側も見る側も、新しい様式に慣れる必要が出てきそうだ。(Full-Count編集部)

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