北海道新幹線開業後の北海道の遠距離交通事情

北海道新幹線の延伸開業を2030年に目指し工事を行うJR北海道。

経営がものすごく厳しい現状の中、新幹線全線開業は経営改善のための急務となっている。今回は、JR北海道の北海道新幹線延伸開業後、北海道の遠距離交通がどう変わっていくかを解説していこうと思う。

北海道ならではの「新幹線であるべき」理由

北海道ならではの「新幹線であるべき」理由

北海道ならでは、とは言ったものの、これは日本海側の一部本州の地域にも当てはまるかもしれない。もう答えはわかるだろう。そう、「雪」だ。

結論から言ってしまうと、大雪で壊滅状態となった航空の代替的な本州への輸送手段として、新幹線が必要とされているのだ。

北海道は非常に交通網が大雪に支配されることが多い。勿論、北海道という全く本州と違う天候の中、様々な対策はしているのだが猛威を振るう大雪に、様々な交通手段が太刀打ちはできない状況なのである。

特急北斗で函館に行ってから新幹線は時間がかかるうえにそもそも北斗が雪に耐えられない可能性も十分あり得る。いくら北海道の雪のために車両設備も整備されているとはいえ、貧弱なのである。旭川空港のようにバイパスとして北海道で驚異の定時運行率を誇る空港もあるにはあるのだが、如何せん札幌から旭川までは関東に換算すれば東京から静岡県富士市、栃木県宇都宮市並みの距離を有する。いくら北海道内の距離感は本州とスケールが違うとはいえ、大雪のシーズンに札幌からわざわざ旭川まで移動するのは無理がある。

旭川空港を実際にバイパスとして本格的に札幌圏の第二空港として機能させることも実際に検討はされているのだが、あまりに非現実すぎるのではないかと思う。

そこで、新幹線が必要とされているのだ。トンネルをたくさん設置し、上越新幹線のような設備もつければ北海道の大雪にも充分耐えられる強靭な交通手段となりうるはずだ。

大雪の時の定時性。到底飛行機には関東への利便性は敵わないが、こういう利点を全面的に押し出し、差別化を図っていくべきだ。

「東京」ではなく「函館」「仙台」

多くの北海道新幹線反対派の人たちがよく言うのが、「新幹線できたところで東京までのシェアで航空に勝てるわけがない。」ということなのだが、はっきり言ってしまうと、北海道新幹線は東京方面への接続には正直あまり力を入れていないように思える。

どちらかというと、函館や仙台といった、道南・東北方面へのアクセスを重視して運営し、また利用もそういったものが多くなるのではないかと筆者は予測している。

先ほど申しあげたとおり、運行においての確実性においては確かに新幹線を売りにすることはできるかもしれない。しかしながら、平常時には新幹線は高く所要時間も長いため敬遠されるだろう。

ただ、すべての区間において別の交通手段が勝っているというわけでもなく、新幹線も飛行機や高速バスに対抗できる部分は多い。

それの一つが函館。現在は特急北斗を利用して所要時間は4時間。ある程度の需要は得ているのだが、高速バスの安価化が原因で優勢とは言えない状況なのである。

そこで、新幹線という手段ができることにより所要時間1時間、運行の安定性も確保となると多少値上げはあってもバスより集客が見込める可能性が極めて高い。

そして仙台。現状航空機がシェアを獲得しているこの区間でも、新幹線の需要が高まる可能性が高い。遠距離のほうが有利となる航空機において、東京方面になれば成田空港のように多少空港から遠くても新幹線より多い需要を獲得できるが、仙台となれば厳しいだろう。

仙台空港と新千歳空港、どちらも郊外にあり、都市中心部から直接アクセスできる新幹線よりも不利なのだ。また、LCCが貧弱なこの区間では新幹線と同等の値段、もしくはそれ以上の値段で航空券が売られることも多く、そういった点で新幹線のほうが条件もいいことも一つの理由として挙げられる。

札幌オリンピック?

北海道新幹線の開通を目指す2030年に、札幌オリンピックを誘致しようという方向も進んでおり、その点でも北海道新幹線の全線開通は課題なのである。

おそらく移動には新千歳空港、もしくは羽田乗り換えといった手段が用いられることだろう。ただでさえ需要が高い東京―札幌間の路線では交通量の激化が予想される。

また札幌五輪は冬季に開催されるため、先ほど話したように天候上の理由で航空機が機能しなくなるという最悪の事態も予想される。そのバイパスとして北海道新幹線の早期開通が必要不可欠なのである。

北海道だからこそ、新幹線を必ず建設しなければならない。JR北海道の社運を賭けた路線は、今後救世主となれるのだろうか…。

最後に

最後に、この記事を最後まで見てくださった皆様に感謝いたします。今後のJR北海道の発展に期待しながら、この記事を結びとします。

画像:撮影者(@ine_JRh)の許諾を得て使用

【著者】はこはま

神奈川県東部で育ち、横浜に住む。関東地方、北海道地方を中心に色々な地方でマルチな視点から記事を執筆。Twitterフォローもよろしくお願いします!!

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