チームリーダーに挑む19歳の若鷹 専門家が評価する「全く引けを取らない」点とは?

ソフトバンク・井上朋也(左)と松田宣浩【写真:荒川祐史】

A組に抜擢されアピールを続ける高卒2年目の井上朋也

19歳の若鷹が絶対的なチームリーダーに挑んでいる。埼玉・花咲徳栄高からドラフト1位で入団し、高卒2年目を迎えたソフトバンクの井上朋也内野手がA組キャンプに抜擢され、猛アピールを続けている。

現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は宮崎市で行われているソフトバンクのキャンプを訪れ「高卒2年目にして、スイングが速く強い選手ぞろいのソフトバンクの1軍野手の中にいても、全く引けを取らない」と、フリー打撃で柵越えを連発する姿に感嘆した。

井上はルーキーイヤーの昨年、1軍出場こそならなかったが、ウエスタン・リーグでは45試合出場、打率.246、3本塁打11打点と経験を積んだ。ただ、本職のサードには、今年5月で39歳になるベテランの松田宣浩内野手がいる。昨季は打撃不振などで115試合、打率.234、14本塁打47打点に終わったものの、その存在感はいまだ健在。この日のサインプレーの練習などでも、井上と松田が交互に三塁を守った。

課題は“腹切り”になりがちなバット軌道

昨季のソフトバンクの三塁のスタメンは松田の102試合が断トツ。現在、B組でキャンプを過ごし、紅白戦などでA組に参加しているリチャードが21試合、今季から外野手登録となる栗原が19試合、川瀬が1試合を守った。リチャードが“ポスト松田”の急先鋒と目される中で、19歳の井上は先輩たちをごぼう抜きにして、その座を射止めることができるか、にわかに注目を集めている。

もちろん19歳には、克服すべき課題もある。野口氏は「井上のスイングの軌道は“アウトサイドイン”になりがちで、あれだと特に左投手に対してはボールを“点”でしかとらえられず、確率が低くなる。フリー打撃で『あれっ? 左投手は苦手なのかな』と感じさせるところがあったのは、このためだと思います」と指摘した。

ちなみに、野口氏のヤクルト現役時代の監督で名将と呼ばれた野村克也氏は、アウトサイドインのスイングを“腹切り”(右打者の場合、グリップが左腰へ向かって一直線に向かう軌道)と呼び、修正を求めたと言う。ソフトバンクは昨季、8年ぶりのBクラス(4位)に沈み、在任7年間で日本一5度を誇った工藤前監督が退任。藤本監督が就任して迎える今季、大幅な世代交代は生まれるのだろうか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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