コロナで4カ月入院「人生変わってしまった」 増える重症者、医師らも警戒

友人と談笑する泉さん(右)。「入院中は多くの人にお世話になった」と周囲に感謝する=昨年12月末、足利市内

 新型コロナウイルスに感染し重い肺炎に苦しんだ患者の中には、呼吸障害が残ったり長期のリハビリを余儀なくされたりする人が少なくない。「人生が変わってしまった」。昨夏に約4カ月入院した40代男性は、今も長時間の歩行につえが必要という。流行するオミクロン株は重症化しづらいとされるが、感染者の急増で重症者も増加した。医療関係者は継続した感染対策の必要性を訴えている。

 「体がだるくて動けない」。昨年8月上旬の朝、栃木県足利市、自営業泉賢一(いずみけんいち)さん(42)は救急搬送され意識を失った。頭痛が続き、自宅で療養していたさなかだった。搬送先の病院で新型コロナの感染が分かり、人工心肺装置ECMO(エクモ)を装着した。基礎疾患はなく、ワクチンはこれから接種する予定だった。

 意識が戻ったのは、約2週間後。リハビリを始める段階になったが、筋力が衰えてベッドに座ることができなかった。「スマートフォンの入力も大変で、長文は書けなかった」。手足を動かす訓練から始め、約3カ月で歩行器を使って歩けるまで回復し、入院から4カ月後の12月に退院した。

 しかし、以前と比べて疲れやすくなり、布団から起き上がるのも困難に。500メートルほど離れた書店まで歩いたが動けなくなり、迎えを呼んだこともあった。

 現在は、つえをつきながら歩く訓練を続け、筋力の回復に努める毎日だ。「ここまで体力が落ちるとは…」と、長期入院の影響の重さを痛感している。

 今年1月以降はオミクロン株が急拡大し、重症者も少しずつ増加。2月21日時点の栃木県内の重症病床使用率は19.6%と、警戒度レベル2の20%に迫っている。

 重症患者を治療してきた済生会宇都宮病院の医師仲地一郎(なかちいちろう)さん(49)は「重症化すると、数カ月入院する人は珍しくない」と説明する。特に肺機能の低下は深刻で、退院後も酸素吸引が必要となる患者は多い。

 筋弛緩(しかん)薬を投与して肺や体を休ませるため、長期化すると筋力低下も大きい。理学療法士がリハビリを担うが、担当する同病院の斎藤孝典(さいとうたかのり)さん(44)は「肺の力が衰えてリハビリが進めづらい人もいる」と話す。

 仲地さんは「重症患者は、呼吸や歩行の障害など日常生活に直結する大きな問題が長く続きやすい」と指摘。「コロナへの感染を契機に別の感染症も悪化して亡くなる人も多い」と、感染対策の必要性を訴えた。

歩行器を使って歩く泉さん。「入院中は多くの人にお世話になった」と周囲に感謝する=昨年12月末、足利市内
歩行器を使って歩く泉さん。「入院中は多くの人にお世話になった」と周囲に感謝する=昨年12月末、足利市内

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