リトル セトウチ(Little Setouchi)福山伏見 〜 “はじめる”を試せる場所。曜日ごとに店が替わるシェアキッチン

古い建物をリノベーションした店が次々と登場している、福山駅前の注目エリア・伏見町。

その伏見町にシェアキッチンがあるのを知っていますか?

その名は「リトル セトウチ(Little Setouchi)」。

同じ場所で、曜日ごとに違った店を楽しめるのが醍醐味です。

また飲食店開業を目指すかたにとっては、実験的にお店が開けるチャレンジの場としても魅力があるのではないのでしょうか。

さらにリトル セトウチは福山市伏見町だけでなく、尾道市西土堂にも2号店を出店しています。

注目のシェアキッチン・リトル セトウチの特徴やこだわり、魅力などを探っていきましょう。

福山と尾道にある古い建物をリノベーションしたシェアキッチン、リトル セトウチ

リトル セトウチは、福山市中心部と尾道市中心部にあるシェアキッチンです。

株式会社 umika(ウミカ)が運営しています。

2020年(令和2年)1月に福山市伏見町で、古い建物をリノベーションしてオープンしました。

2021年(令和3年)には尾道市西土堂に、2号店もオープンしています。

リトル セトウチでは、毎日昼の部(午前11時〜午後4時)と夜の部(午後4時〜午後11時)で、毎日日替わりで店が変わるのが特徴です。

同じ場所で日時によってさまざまな店や料理を楽しめるのは、とても魅力的ですよね。

福山伏見の店内
福山伏見の店内

福山伏見の店内にはカウンター席が5脚、5人がけのテーブル席が2卓あります。

リトル セトウチ(Little Setouchi) 尾道西土堂のデータ

尾道西土堂の外観 (提供:umika)

2021年3月にオープンした2号店・リトル セトウチ 尾道西土堂についても紹介します。

尾道西土堂があるのは、JR尾道駅北東およそ350メートルのところです。

築50年の建物をリノベーションしています。

尾道西土堂の店内 (提供:umika)

リトル セトウチ福山伏見の利用店舗一覧

2022年(令和4年)2月時点の情報。価格は消費税込

リトル セトウチ 福山伏見の曜日ごとの店舗は、 以下のとおりです。

一部の店舗を紹介しましょう。

【週末のおうち kano】

kanoで人気の「髙橋商店のカレーランチ (990円)」

週末のおうち kano」は、コーヒーやモーニング、ランチのほか、タルトや焼菓子が楽しめるカフェです。

モーニングでは、旬の野菜と神石高原町の平飼い卵を使った料理が楽しめます。

【ニコキッチン】

本格スパイシーチキンカレー弁当 フライドチキン付き(800円)

ニコキッチン(Nico Kitchen)」はフードトラックでの移動販売店で、テイクアウト専門のカレー店。

20種類の味がある「フレーバーちーずぼーる」も人気です。

週に一度、リトル セトウチの店内でもテイクアウトのカレー弁当とフレーバーちーずぼーるを販売しています。

【しもみん農場カフェ】

人参カレープレート(900円)と生絞り恋人参ジュース(単品 550円、ランチに+300円でセットに)

しもみん農場カフェ」は、市内でニンジンをメインに栽培している「しもみん農場」が出店しているカフェです。

出てくる料理は、農場で収穫された農薬・化学肥料不使用の「恋人参(こいニンジン)」をメイン具材としたものが中心。

ニンジンのドレッシングもあり、店頭販売もしています。

【木よう漁師の日 Umi+】

提供:太進館

木よう漁師の日 Umi+(ウミト)」は、走島にある旅館・太進館が運営しています。

その日にとれた、新鮮な魚介を使った海鮮料理が楽しめる店です。

なおUmi+は完全予約制ですので、事前に予約をしてください。

リトル セトウチ 尾道西土堂の利用店舗一覧

リトル セトウチ 尾道西土堂の店舗も紹介します。

一部の店舗を紹介しますね。

【Latte art House】

Latte art Houseのカフェラテ (提供:umika)

Latte art House(ラテ・アート・ハウス)」は、カフェラテなどのドリンクやスイーツが楽しめるカフェです。

なんと、ラテアートの大会で優勝した経験があるバリスタが運営しています。

【おやつや Hygge】

おやつや Hygge」は、焼菓子をメインとした店です。

さまざまなタルトやスコーン、ケーキなどが楽しめます。

【ci vado】

ci vado(ちば~ど)」は、”粉もん“が楽しめる店。

ピザをはじめ、パニーニやパンなどが人気です。

【BOTANICAL DENIM】

BOTANICAL DENIM (提供:umika)

BOTANICAL DENIM(ボタニカル・デニム)」は「瀬戸内をまとう」をコンセプトに、瀬戸内の風土を表現したファッションブランドです。

瀬戸内の果樹を用いた草木染めのデニムなどがあります。

リトル セトウチを運営するumica(ウミカ)と福山市のデニム生地製造企業・篠原テキスタイル、ファッションデザイナーのTERADA.(テラダ)によるプロジェクトです。

リトル セトウチは「はじめる」を試せる場所

リトル セトウチはシェアキッチンなので、たとえば以下のようなかたにおすすめです。

  • いつか飲食店を開業したいが、すぐには出店できない人
  • マルシェやフリーマーケットなどに出店するための厨房を探している人
  • 菓子やパンづくりといった特技を活かして商売がしたい人

いきなり店を持とうと思うと、物件探しをはじめさまざまな準備が必要です。

さらに土地・店舗などの賃貸料、設備の購入費用、水道光熱費や維持費などで、莫大な資金もいります。

リトル セトウチなら少ない資金でも、実験的に店舗を出せるのが魅力です。

リトル セトウチを利用して店を出し、軌道に乗った段階で実店舗を出店するといった使い方もできます。

“はじめる”を試せる場所が、リトル セトウチなのです。

リトル セトウチの特徴

リトル セトウチの特徴やポイントを紹介します。

営業許可取得済み&充実した厨房設備

福山伏見の厨房

リトル セトウチでは厨房・席があるスペースが借りられますが、飲食営業と菓子製造業の営業許可を取得済です。

調理設備も充実しており、さまざまな料理のほか、パンや菓子づくりに必要な機器も備えています。

そのため契約後、すぐに店舗運営に取りかかれるのがリトル セトウチの魅力です。

福山伏見の厨房 (菓子向)
尾道西土堂の厨房 (提供:umika)
尾道西土堂の厨房 (提供:umika)

利用料金が低価格

リトル セトウチの特徴は、非常駐管理であることです。

清掃などの衛生管理は、利用者自身でおこないます。

これによって、低価格な利用料を実現しました。

さらに光熱費は定額です。
これは利用者にとってうれしいですよね。

地域とのつながりができる

地域の商店会や自治会へ参加することにより、地域とのつながりが生まれます。

商店会や自治会が主催するイベントなどへの協力により、事業者同士のつながりができるのも魅力です。

リトル セトウチの詳細な内容や申込方法などについては、リトル セトウチの公式サイトを見てください。

お客にも、店側にも魅力があるシェアキッチン・リトル セトウチ。

運営する株式会社 umika(ウミカ)の代表取締役でクリエイティブディレクターの谷田恭平(たにだ きょうへい)さんにインタビューをしました。

リトル セトウチの代表・クリエイティブディレクター谷田 恭平さんへインタビュー

お客にも、店側にも魅力があるシェアキッチン・リトル セトウチ

運営する株式会社 umika(ウミカ)の代表取締役でクリエイティブディレクターの谷田恭平(たにだ きょうへい)さんに、開業の経緯や施設の特徴、今後の展望などの話を聞きました。

「リノベーションスクール」で出会った者たちで起ち上げる

──開業の経緯を知りたい。

谷田(敬称略)──

もともと私は瀬戸田町(現 尾道市)出身なのですが、東京で設計士として建築関係の仕事をしていました。

2018年(平成30年)に福山市が主催した、まちづくりについて学ぶ「リノベーション スクール」に参加したのですが、これがリトル セトウチが誕生するキッカケです。

チームに分かれていろいろなアイデアを出していたのですが、私のいたチームで古い建物を改装してシェアキッチンにするという構想が出ました。

これは実現できたらおもしろいなと思ったんですが、私は建築畑の人間。
建築以外のことはわかりません。

リノベーションスクールには、さまざまな分野のおもしろそうな人がいましたので、ほかのかたに力を貸してほしいと思いました。

そこで参加者のかたがたにお声がけし「クリエイティブチーム umika」が誕生したんです。

umikaのメンバー(現 株式会社umikaの役員)には、備後とことこで紹介したアンカーホテルを運営するサン・クレアの東 真貴さん、ジンジャー ダイヤモンドの中尾 圭吾さんも名を連ねている

──クリエイティブチームがのちのumikaの前身となった?

谷田──

はい。
起ち上げの約半年後の2019年(平成31年)3月に法人化して、株式会社 umikaが誕生しました。

最初は施設の管理をする家守(やもり)会社として活動を始めています。

伏見町にある4階建ての建物(現在のリトル セトウチがある建物)を一棟まるまる借りました。

もともとギャラリーカフェがあった建物だったのですが、20年以上前にカフェは廃業していて、カツラ・ウィッグの店があるのみの状況。

カツラ店が退去していただけたので、一棟をumikaで管理することになったのです。

そして上の階はテナントとして貸し出し、1階をシェアキッチンとして改装しました。

こうして2020年(令和2年)1月にリトル セトウチとしてオープンしたんです。

──「リトル セトウチ」という名前の由来は?

谷田──

リトル セトウチには「瀬戸内という地域の人や生活にフォーカスする」という意味合いがあります。

人の営みなど小さな部分にスポットライトをあて、瀬戸内のおもしろさや魅力を感じてほしいんです。

食文化もそのひとつですね。

非常駐管理なので、低コストで高スペックな設備が週一で利用できる

──さまざまな事業案のなかから、シェアキッチン事業を始めた理由は?

谷田──

シェアキッチンは初期投資はかかるのですが、運営コストが低いんです。

しかも入居者の協力があれば、無人管理も可能じゃないかと思いました。

さらに創業支援という側面もあります。

これは挑戦する価値があるなと思ったんです。

──無人管理とは。

谷田──

普段はumikaのスタッフが常駐していません

多くのシェアキッチンは、営業終了後に清掃がちゃんとできているかとかのチェックがあります。

しかしリトル セトウチは無人管理なので、チェックもありません

営業終了後は次の店舗が利用するのですから、次の利用者のかたに迷惑にならないように片付けるのをお願いしています。

そのため、利用者同士で協力してもらっているんです。

またumikaのスタッフも、私を含めてみんなリトル セトウチのほかに別の仕事を持っています。

だからリトル セトウチは利用者だけでなく、スタッフにも負担がかからないようにしているんですよ。

──ほかの特徴は?

谷田──

水道光熱費が固定なのもポイントです。

だから売上の見通しが立てやすいのは、ポイントではないでしょうか。

リトル セトウチは非常駐管理なので、低コストで高スペックな設備が週一で利用できるのがセールスポイントです!

──運営上、心がけていることは?

谷田──

町の行事には参加するようにしています。

リトル セトウチも伏見町商店会に属していて、地域に根付いた施設運営を心がけているんです。

もともと「まちづくり」を目指して始まったものですから、地域に根差した施設にならないといけません。

ですから利用者のかたにも協力をしてもらっていますね。

入居のときにも、地域の行事への協力はご理解いただいています。

リトル セトウチで実験営業し、卒業して実店舗をもった人も

──リトル セトウチの利用事例を教えてほしい。

谷田──

インターネットを使ったケーキの通信販売をしている「kizashi(キザシ)」という店が、リトル セトウチを利用していました。

非常に人気のケーキで、その後リトル セトウチを卒業されて「Bunki(ブンキ)」という実店舗を出しています。

リトル セトウチを使って通販で実験的に販売をし、手応えを得たので実店舗を出したという事例です。

通販の店だったので、お客様のなかには「あのケーキ屋は地元の店だったのか!」と驚いたかたもいるとか。

私自身も驚きましたが、そんなすごいかたとつながったのもシェアキッチンを始めたからですよね。

ほかにリトル セトウチで実験営業したのち、手応えを感じて実店舗を出した店として「春日スンドゥブ」さんもあります。

もともとバーの「あき乃」(アンカーバーなどを運営)さんが、新規事業としてリトル セトウチでスンドゥブ専門店「伏見スンドゥブ」を始めました。

これがとても好評でして、郊外へ移転して実店舗での営業を始めたんです。

このように、いずれ自分の店を持ちたいという夢をもったかたや、新規事業を始めたい既存店が、リトル セトウチを実験営業の場として利用されることは多いですね。

──ほかの事例もある?

谷田──

実験店舗とは違った目的では、ブランディング目的で運営のかたもいます。

もともとキッチンカーの移動販売をしていて、週一でリトル セトウチで営業するかたもいました。

リトル セトウチで営業することで、多くのかたに店名や料理を知ってもらえます

またもともと飲食店で働いていたけど、生活環境の変化によって断念したが、今の生活環境に合う形で飲食店をやりたいというかたの利用もありますね。

あとめずらしい事例としては、ベーグル専門店の「MINORI BAGLE +(ミノリ ベーグル プラス)」ですかね。

リトル セトウチの初期から営業している人気店だったのですが、今年(2022年)からリトル セトウチを卒業し、市内にあるパン屋「タートル」の一商品として製造・販売するようになりました。

自分で実店舗を出すのではなく、既存店の一商品となったのはおもしろいですよね。

「ローカル=身近な生活」を地域価値にしていく

──今後やってみたいことや展望はある?

谷田──

umikaでは「ローカルを地域価値にする」というビジョンを掲げております。
そして「ローカルとは身近な生活圏」だと考えているんです。

身近な生活に価値を感じられれば、そこに住みたいと思ってもらえると考えています。

実は私たちは、シェアキッチン以外に「BOTANICAL DENIM(ボタニカル・デニム)」という活動もしているんです。

地元のアパレル企業と連携し、瀬戸内の果樹を用いた草木染めのデニムなどをつくっています。

また新たな挑戦として始めるのが「まちの空想倶楽部」というイベントです。

シェアキッチンは「はじめるを試す」ところですが、まちの空想倶楽部は「やってみたいを見つける」イベントとしておこないます。

我々はクリエイティブチームなので、業態・業界にとらわれず、ジャンルを横断していきながら価値をつくっていきたいですね。

あとはシェアキッチンに関していえば、備後とその周辺へドミナント出店をやっていきたいと考えています。

福山・尾道と出店したので、倉敷や三原などにも出店していきたいですね。

毎日違う楽しみがあるシェアキッチン・リトル セトウチ

曜日によっていろいろな店が楽しめるリトル セトウチ。

同じ場所でたくさんの店が楽しめるのは、とても魅力的です。

またお店を出したいという人にとっては、チャレンジの場、実験の場としても活躍するのではないでしょうか。

もしお店に挑戦したいという気持ちがある場合、まずリトル セトウチで営業してみるのもいいかもしれませんね。

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