“芸術的”内角打ちに開花の予感 オリの21歳に専門家驚嘆「お手本のような打撃」

ロッテ戦で一発を放ったオリックス・太田椋【写真:宮脇広久】

左翼ポール際へ切れない打球「バットが内側から出ている証拠」

昨季25年ぶりのパ・リーグ優勝を果たしたオリックスで、今季も新たな若手がブレークしようとしている。高卒4年目の21歳で、二塁の定位置を狙う太田椋内野手だ。23日には「球春みやざきベースボール」のロッテ戦(SOKKEN)に6番・DHで出場。7回に内角の速球を左翼ポール際ギリギリへ運ぶ、技ありの1発を放った。

【実際の映像】「お手本のような打撃」と専門家も驚嘆したオリ太田椋の“芸術的”内角打ち

「結構厳しいコースでしたが、うまく打てました。距離は行ったと思いましたが、切れるかどうかなと……。(ファウルにならなかったのは)バットがちゃんと内側から出ている証拠かなと思います」。太田は技術的な背景を説明しつつ、自画自賛した。

7回先頭で打席に立つと、ロッテ4番手の左腕・山本大貴に対しカウント3-2から、内角速球を見事にとらえた。現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏も「内角打ちのお手本のような打撃」と称賛した。

一方で野口氏は「太田は昨年からさぞかし、悔しい思いを抱いてきたことでしょう」と推察する。というのは、オリックスの昨季の開幕スタメンには、20歳の太田が二塁、19歳の紅林弘太郎内野手が遊撃で、そろって名を連ねた。しかし太田は打撃不振で5月17日に出場選手登録を抹消されると、約4か月間の2軍暮らし。1軍では53試合出場、打率.172、3本塁打、9打点に終わった。

大きな壁の安達、追って来る野口…中嶋監督「競争で行くしかない」

対照的に1歳下の紅林は、シーズンを通して1軍に定着し、打率はパ・リーグの規定打席到達者29人中27位の.228にとどまったものの、2桁の10本塁打と48打点をマークし爪痕を残した。実際、いずれもリーグ2位の13勝&防御率2.51をマークした宮城大弥投手と紅林の“高卒2年目コンビ”、それに7年目で三塁の定位置を獲得した宗佑磨内野手の台頭は、オリックスをリーグ優勝へ強く後押しした。太田はこれに乗り遅れた格好だ。

昨年のオリックスで、二塁手として最多の73試合にスタメン出場したのは、34歳のベテランの安達了一内野手だった(太田のスタメン二塁は40試合)。野口氏は「安達は守備もうまいし、打撃も送らせてよし、進塁打を打たせてよし、エンドランをやらせてもよし。太田にとってそう簡単に超えられる相手ではありません」と大きな壁の存在を指摘。さらに、ドラフト2位ルーキーの野口智哉内野手も二塁と遊撃をこなし、この日は7番・二塁で先発。太田にとっても、さらには紅林にとっても脅威となりそうだ。

若手の勢いをリーグ優勝につなげた中嶋聡監督にとって、怖いのは慢心。だからこそ、太田の本塁打も手放しで褒めたりはせず、「続けていくしかないし、しがみついていくしかない。常に競争でいくしかない」とチーム内での争いを促した。

そんな中、太田は「昨年のオフから低くて強い打球を求めてやってきました。今のところ、自分の思った通りにできていると思います」と手応えを感じている。1年遅れのブレークを果たし、連覇の原動力となるか。

【実際の映像】「お手本のような打撃」と専門家も驚嘆したオリ太田椋の“芸術的”内角打ち

「お手本のような打撃」と専門家も驚嘆したオリ太田椋の“芸術的”内角打ち【動画:パーソル パリーグTV】 signature

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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