習得する気なかったのに「投げられてしまった」 鷹・杉山一樹の“規格外”な新球種

西武戦で好投したソフトバンク・杉山一樹【写真:福谷佑介】

2回パーフェクトに封じた西武戦で投じた新球チェンジアップ

23日に宮崎市・生目の杜運動公園で行われた「球春みやざきベースボールゲームズ」西武戦で0-8と大敗を喫したソフトバンク。この日の天候のように“お寒い”内容に終わった試合の中で、ただ1人、強烈なインパクトを残したのが、開幕ローテ入りを狙う右腕の杉山一樹投手だった。

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この日の3番手として6回からマウンドに上がった杉山。先頭の渡部には球場のスピードガン表示でこの日最速だった155キロの真っ直ぐで空振り三振に仕留めると、続く山村も真っ直ぐで空振り三振に。その後も1人の走者も出さずに2イニングを無安打無失点3奪三振にまとめた。他の投手が四球絡みで失点するなど精彩を欠く中でのパーフェクトピッチングだった。

最速160キロを誇る剛腕は1月に新型コロナウイルスに感染し、筑後のC組でキャンプをスタートさせた。やや出遅れる形となったが、15日に宮崎キャンプに合流。紅白戦登板などのステップを踏み、対外試合初登板で好投して見せた。課題の制球力でも無四球で「実戦も少ない中で来たので、不安はなかったですけど、この3年間の課題をどう試合の中で克服できるかを考えてやりました」と手応えを感じさせた。

この日の投球で、目を引いたものがある。それが130キロ前後で沈むチェンジアップだ。昨季までの杉山はストレート、スライダー、カットボール、フォークが主な持ち球で、チェンジアップは試合で使う球種には含まれていなかった。昨秋のキャンプでフォーム作りのためのボールとして投げていたが、それが今春初の対外試合登板で実際に打者相手にも投じるようになっていた。

「投げるつもりはなかったですけど、投げられてしまった」

この日の登板後、杉山は「投げるつもりはなかったですけど、秋のキャンプからチェンジアップを投げる体の使い方がすごく良かったので、投げていくうちに投げられてしまった」と言う。フォーム作りのために投げていくうちに、自然と持ち球として使えるまでに“進化”していった。

「チェンジアップはスムーズに体が動く。1番(フォームを)意識しやすいんです。力がある分、誤魔化せてしまう。チェンジアップの握りでは力が入らない。もともとは体のメカニックを先に考えていて、それにチェンジアップの握りが合った」

ほぼ鷲掴みで握るという杉山のチェンジアップ。ストレートの握りとは違い、指先の力などが使えないため、体全体を使って投げることが必要になるという。このチェンジアップを投げることによって、自分の思い描いている投球フォームが体現しやすいことに気づき、練習に取り入れているうちに、チェンジアップを“習得”していたのだという。

最速160キロを誇る投球スタイルも規格外なら、グラブに入れる刺繍の“迷言”などでも規格外さを発揮してきた杉山。投げるつもりがなかったのに習得した“新球種”を新たな武器にして、開幕ローテ争いを勝ち抜く。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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