カネミ油症 次世代の健康影響調査 全国油症治療研究班・辻学班長インタビュー 新基準策定へ「根拠資料出す」

オンラインでインタビュー取材に応じる辻研究班長

 カネミ油症2、3世らの救済策を探ろうと、全国油症治療研究班が取り組む次世代の健康影響調査。九州大学病院油症ダイオキシン研究診療センター准教授の辻学班長(45)がオンライン取材に、調査の手応えや進捗(しんちょく)などを語った。

 -中間報告を今月公表。途中経過の受け止めは。
 想定を超える388人から回答が集まり安心した。診断基準見直しへの期待も表れた数字ではないか。内訳を見ると、高齢者が多い油症患者(1世)と違い、働き盛りや今後働く20~40代が多い。健康問題(の把握)が非常に大切な世代の調査だと改めて分かった。
 何らかの自覚症状がある人がほとんど。医療人としての感触では、先天性疾患も一般的な人口割合に比べて多いと思う。ただ今回は本人の認識を聞く調査なので、新年度の検診で医師が客観的に症状を確かめてから、統計学的に調べたい。

先天性疾患について

 -次世代は未認定が多いが救済の必要を感じるか。
 次世代の方々を何人か診ているが、普通の方と違う健康障害は出ている。ただ油症次世代として出ているのか、一般的にも起こり得る障害なのかは、科学的に分別することが大切だ。
 現行の診断基準は、油症の症状とダイオキシン類血中濃度で(認定可否を)判断しているが、濃度が低い次世代には適用できない。調査で次世代に特有の症状などを明らかにして、新しい次世代の基準を作れれば救済につながると思う。そこを研究班として最終的な目標にしていきたい。

 -初の公的調査。
 私が班長になる前、次世代調査がなかなか進まず、どこに、どれくらいの人がいるかも全く分からなかった。今回は388人全員と電話連絡が取れて、現住所も把握できた。研究班と次世代の方々とのネットワークができたことも、非常に大事だ。

 -調査票の自由記述欄にはどんな声があったか。
 「早く認定につながる健康被害を見いだしてほしい」という内容が最も多い。2番目に多いのは「ほかの2世がどんな過ごし方をしているのか」「どんな症状を持っているのか」というもの。今回できたネットワークで症状や境遇などの情報共有もできるのでは。

 -診断基準改定に向けて。
 今後の油症検診も踏まえて研究班で解析し、「この症状の割合が高いから、診断基準に入れた方が良い」といった議論をする。研究報告書は第三者の有識者に客観的に評価してもらい、厚生労働省に提出する。
 私たちにできるのは(新基準策定の)根拠資料を出すところまでで、その後は(加害企業の)カネミ倉庫による医療費補償や法律の整備の話になる。根拠資料を次世代救済にどうつなげるか。厚労省や政治家が受け止め、「社会的解決」を考えてもらうしかない。研究班としては次世代ができるだけ広く救われる研究報告を出したい。


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