カネミ油症 次世代の健康影響調査「ほとんどに体の不調」 研究班「新基準作り救済を」

 長崎県などに多いカネミ油症患者の子や孫ら「次世代被害者」を対象に、本年度から健康影響を調べている全国油症治療研究班(事務局・九州大)の辻学班長(45)が21日までに、長崎新聞社の単独インタビューに応じた。調査に回答した388人について「ほとんどに何らかの体の不調がある」と指摘。一方、現在の油症認定の仕組みは次世代の健康実態に合っていないとし、「認定の新しい基準を作り、次世代救済につなげることが研究班の最終的な目標」と語った。
 同班は油症特有の症状に関わる回答を中間報告にまとめ、今月公表した。倦怠(けんたい)感や頭痛などを訴えた人は約4割、皮膚症状がある人も3~4割に上る。辻氏は次世代を診察した経験も踏まえ「(油症でない)普通の人とは違う健康障害が出ている」との実感を語る。
 先天性疾患の出現率にも注目。5%前後に「早産・低体重」や「歯の病気」があり「感触として一般的な人口割合と比べて多い」。新年度は次世代に油症検診を受けてもらい、医師の診察で客観的なデータも集めた上で特有の疾患などがないか統計学的に解析する。
 油症認定の可否を決める現在の診断基準は、原因物質ダイオキシン類の血中濃度を重視しているが、次世代の多くは濃度が高くないため未認定。同班はこれとは別に次世代認定の根拠を探っており、今後の解析で次世代に多い疾患などが確認されれば、診断基準に加える方向で検討する。
 研究報告は第三者の客観的評価も受け、来年以降に厚生労働省へ提出する。辻氏は「研究班としてできるのは根拠資料を出すところまで」とし、新基準運用に向けた法整備など、同省や政治家らによる「社会的解決」が求められるとの認識を示した。


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