奨学金活用し進学を 宮大・湯田准教授が解説本出版

奨学金制度の動向と指導手引を書き下ろした湯田准教授

 生活困窮世帯の子どもたちの進学保障に役立ててほしいと、宮崎大大学院教育学研究科の湯田拓史准教授(教育行政学)が奨学金制度を分かりやすく説明したブックレット「奨学生への指導手引」を出版した。書き下ろしで1千部作成し、県内外での教員研修や学生の授業などで活用する。県内の書店にも並ぶ。
 本紙が2014年に連載した「だれも知らない~みやざき子どもの貧困」に集まった寄付金を基に16年、児童養護施設や困窮世帯の子どもたちを対象にした奨学金給付や学習支援事業がスタート。運営の中軸を担う宮崎市のNPO法人Swing―By(高橋好香代表理事)がブックレットのシリーズ化を企画し、その第1弾となる。
 19年以降に急速に進展した授業料無償化政策の動向を分析した湯田准教授は「学校推薦型だった奨学金制度は、自己申請型の性格を強めている。その分、子どもたちや保護者の情報へのアクセス力が求められることになる」と話す。
 前半は基礎知識として公教育費の国際比較や国内での進学率の推移など、進学や教育の現況を大局的に知ることができる。後半部は就学前から就職までにかかる費用、具体的事例を挙げて生徒指導や保護者対応法を掲載。各章に挟んだコラムとともに、子どもたちとじかに接する学校の進路指導担当者や福祉関係者の現場実践にすぐに役立つ分かりやすい内容に仕上がった。
 「困窮世帯の子どもたちの進学問題を『家庭の問題』にせず、公的な教育支援につなげ教育を受ける権利を保障するために本書を広く活用してほしい」としている。A5判110ページ。千円。湯田准教授は同法人理事を経て現在は奨学金アドバイザーを務めており、収益は同法人に全額寄付される。

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