参院選と衆院選の違いとは?簡単解説【参院選2022】

2022年7月に行われる予定の第26回参議院議員通常選挙(以下、参院選)
2021年10月には衆議院議員総選挙(以下、衆院選)が行われましたが、それから約9ヶ月で次の国政選挙が行われることになります。

参院選とは参議院議員を、衆院選とは衆議院議員を選出する選挙です。
しかし、実際のところ「この2つの選挙は何が違うんだろう?」と疑問に思っている方もいると思います。

そこで本記事では、参院選が始まる前に「参院選と衆院選の違い」をおさらいしていきます!
2つの選挙における基本的な項目を解説していくので、本記事を読めば一通り枠組みを理解できるようになるはずです。

参院選は半分だけ決める、衆院選は全議席を決める

参院選とは、参議院議員の半数を改選する選挙です。
任期は6年ですが、参議院議員には解散の制度がないため、3年ごとに定数の半分を改選する決まりとなっています。

2018年の公職選挙法改正で参議院の定数がそれまでの242から248に6議席増え、前回2019年7月に行われた参院選では元々の改選議席121議席+3議席(増えた6議席の半数)の計124議席が改選を迎えました。
今回も全議席248人の半数にあたる「124人」の参議院議員が改選される予定です。

一方で衆院選とは、衆議院議員の全議席を改選する選挙です。
衆議院議員の解散によるものと、4年の任期満了によるものがあります。
2021年10月に行われた前回の衆院選では、衆議院の解散に伴って全議席465人の衆議院議員を選出しました。

参院選は30歳以上、衆院選は25歳以上が立候補できる

参院選と衆院選では、選挙に立候補できる年齢、つまり「被選挙権年齢」が異なります。
参院選では30歳以上が被選挙権を持つのに対し、衆院選では25歳以上であれば立候補できます。

なぜ参議院のほうが被選挙権年齢が高いのかというと、日本は「二院制」という制度を採用しているからです。

参議院は政治の状況を俯瞰して慎重に審議する役割が求められており、中立で公正な立場から審議をすることを期待されています。この役割を「良識の府」「再考の府」といいます。

任期が短く解散がある衆議院に対し、任期が長く解散もない参議院は、いわゆる衆議院の「行き過ぎ」を抑え是正する役割を担います。
そのため、衆議院よりも「良識を有した人格」が求められるのです。

したがって、参議院では被選挙権年齢が衆議院よりも高い30歳に設定されているのです。

参院選は選挙区と全国比例、衆院選は小選挙区比例代表並立制

参院選と衆院選では、投票の仕組みも異なります。

参議院では選挙区と全国比例の2つの方法で議員を選出します。
一方で衆議院では、小選挙区比例代表並立制を採用しており、小選挙区選挙と比例代表選挙で議員を選出します。

それぞれの投票方法について、以下で詳しく見ていきましょう。

参院選の「選挙区」と「全国比例」

参院選では「選挙区」「全国比例」で投票が実施されます。

選挙区はほとんどが都道府県単位となっていて、各選挙区から合わせて74人の参議院議員を選出します。
選挙区ごとの定数は人口に応じて変動し、最多となるのは東京都の「定数6(12議席のうち3年ごとに半数改選)」となります。投票用紙には立候補者の個人名を記載して投票します。

一方、全国単位の比例代表では50人の参議院議員を選出します。
比例代表選挙は全国単位で行われるため、参院選の比例代表選挙は「全国比例」と呼ばれることもあります。
投票用紙には個人名(または政党名等)を記載して投票します。

参院選では「一票の格差」を是正するため、2015年の公職選挙法改正で「2合区・10増10減」が可決されました。
これは「鳥取・島根」「徳島・高知」を1つの選挙区(合区)とし、5選挙区の議員の定数を10増10減したものです。
これによって一票の格差は最大約3倍にとどまりました。

さらに2018年の公職選挙法改正では、参議院議員の定数を「6増」とし、さらに「特定枠」の新設を可決しました。特定枠とは、非拘束名簿式を採用している参院選の比例代表選挙の一部に拘束名簿式を採用するような仕組みで、あらかじめ政党等が決めた名前順で当選者が決まります。
2019年の参院選で初めて導入され、自民党の三木亨氏、三浦靖氏、れいわ新選組の舩後靖彦氏・木村英子氏が特定枠で当選しました。

特定枠については後ほど詳しく解説します。

衆院選の「小選挙区」と「比例代表」

衆院選では「小選挙区比例代表並立制」を採用しており、小選挙区選挙と比例代表選挙が同じ投票日に実施されます。

小選挙区選挙は、衆議院議員の定数465人のうち289人を選出する選挙です。
全国を289個の選挙区にブロック分けし、1選挙区から1人を選出します。
有権者は、投票用紙に立候補者の個人名を1人だけ記載して投票する決まりです。

一方で比例代表選挙は、定数465人のうち残りの176人を選出する選挙です。
全国を11個にブロック分けし、各政党等の獲得議席数に応じて当選人の数を決めます。
比例代表選挙では「拘束名簿式」を採用しているため、あらかじめ政党等が決めた名簿の上位順に候補者の当選が決定します。
なお、投票用紙には「政党等の名称」を1つだけ記載する決まりです。候補者名を記載すると無効になるので注意しましょう。

参院選にだけある制度「特定枠」とは?

「特定枠」とは、2019年の参院選で初めて導入された制度で、衆院選にはない仕組みです。

2019年以前の参院選の比例代表(全国比例)では、得票順に当選が決まっていく「非拘束名簿方式」が採用されていました。
非拘束名簿方式とは、名簿にある個人名での得票順に応じて当選が決定する仕組みのこと。
つまり、有権者は当選させたい候補者を投票によって選ぶことができたということです。

しかし「特定枠」が導入されることによって、政党等があらかじめ決めた「優先的に当選人となるべき候補者」が存在する仕組みに変わりました。
得票数にかかわらず、特定枠に指定された候補者は名簿の上位に位置づけられます。
つまり、政党の獲得議席数が特定枠の候補者の数よりも多かった場合、特定枠の候補者は当選が保証されるということです。

この特定枠を使うか否か、また使う場合に何人に適用するかについては、各政党の判断に委ねられています。

仮に特定枠を使用した場合の例を挙げてみましょう。

例えば、比例代表で「せんこむ党」が3議席を獲得し、せんこむ党から比例代表で立候補していた各候補が個人名票をそれぞれ、A候補は3000票、B候補は2000票、C候補は1000票、D候補は500票を獲得したとします。
特定枠の導入以前であればA候補、B候補、C候補が当選します(画像左)。
しかし、特定枠にあらかじめD候補を指定していた場合、当選するのは「D候補、A候補、B候補」の3人となり、C候補は落選します(画像右)。

特定枠についてもっと詳しく知りたい人は、ぜひ以下の記事をご覧ください。

【関連】今から知っておきたい!参院選2022の全国比例の仕組み

衆院選にだけある制度「比例復活」とは?

衆院選には「比例復活」の制度があるのに対し、参院選には比例復活がありません。
「比例復活」とは、小選挙区と比例代表に重複して同時に立候補した候補者が、小選挙区で落選した場合に比例代表で当選することです。

仮に小選挙区で落選しても、以下の3つの条件を満たす場合は比例復活当選を果たせます。

  • 政党に所属している
  • 小選挙区と比例代表とに重複立候補している
  • 小選挙区で有効投票の10%を獲得している

ただし、当選するには当選者の得票数の何%を獲得したかを示す「惜敗率」が重要な指標になります。
衆院選の比例代表は候補者名簿の上から順に当選する制度なので、同一順位の場合、惜敗率の高い方から当選が決まります。

詳しくは下記の記事をご覧ください。

【関連】【衆院選2021】「比例復活」とは?小選挙区で落選しても当選する仕組みを解説!

まとめ:参院選と衆院選の違い

改めてここまでの要点をおさらいします。

  • 参院選は議席の半数を改選する、衆院選は全議席を決める
  • 参院選は30歳以上、衆院選は25歳以上が被選挙権を持ち、立候補できる
  • 参議院は選挙区と全国比例、衆院選は小選挙区選挙と比例代表選挙で投票を実施
  • 参院選だけにある「特定枠」は、得票数にかかわらず政党等が決めた候補人を優先的に当選させる制度
  • 衆院選だけにある「比例復活」は、小選挙区で落選しても諸条件を満たすことで比例代表での当選を可能にする制度

以上、参院選と衆院選の違いについて解説しました。

2022年7月には3年ぶりに参院選が実施される予定です。いつも必ず投票に行く人はもちろんのこと、「参院選にも衆院選にも行ったことがない……」という人も、今年の参院選にはぜひ参加してみませんか?

選挙のことなんて全然わからない!という人も、ぜひ本記事を参考にして投票所に足を運んでいただけたら幸いです。

(執筆協力:森しゅなつ

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