プジョー、2022年のル・マン参戦見送りを発表。『9X8』は競争力を高め今夏デビューへ/WEC

 プジョーは2月25日、WEC世界耐久選手権の最高峰カテゴリーであるハイパーカークラスに挑戦するため現在、同社が開発作業を進めているル・マン・ハイパーカー、『プジョー9X8』のホモロゲーション前の車両開発とテストの完了に専念するため、6月11~12日に開催されるル・マン24時間レースを欠場する予定であることを明らかにした。

 フランスのメーカー金曜日、ハイブリッドシステムを搭載するハイパーカー『プジョー9X8』が、5月7日に行われるWEC第2戦スパ6時間レースまでに準備が間に合わないとアナウンスし、その影響で6月に開催されるル・マンのグリッドにも並ぶことができないと「予測」している。

 スパ6時間レースへの出場は、ハイパーカークラスに参戦するプジョー9X8のBoP(バランス・オブ・パフォーマンス:性能調整)のベースラインを定めるために必須とされている。

 WECのフレデリック・ルキアンCEOは先月、プジョーが24時間レースの前にイベントに参加する必要があると述べた。また、プジョーとしても、クルマの競争力を強化のためにそれが必要なことであると認識している。

 1月下旬、プジョーはリヤウイングを持たない、彼らの独創的な考えに基づくクルマが開幕戦セブリングに参加しないことを宣言した。9X8はこれまでにアラゴンとポール・リカールでテストを実施している。エンジニアリングチームはホモロゲーション取得に向けて今後、春から夏にかけてさらなるテストを予定している。

 LMHル・マン・ハイパーカー規定車がWECに参戦するためには車両のホモロゲーションが必須だ。このホモロゲーションは基本的に2025年まで変更することができず、メーカーが“Evo”ジョーカーを選択した場合に限り調整が可能となる。

 チームが母国ラウンドであるル・マンを放棄した理由について、プジョーWECテクニカルディレクターを務めるオリビエ・ジャンソニは次のように述べた。

「ごくシンプルに、(レースに)必要なレベルの信頼性を達成するために(開発に)必要な時間を確保するためだ」

「BoPの調整に関する明らかな理由があるため、5月7日のスパ・フランコルシャン6時間レースに出場することなくル・マン24時間に出場することはできないだろう」

「(この決定を下したことで)我々はスパとル・マンでのレースに影響されることなく、チームとリソースのすべてを活用した、私たち自身のテストセッションを計画し実行することを可能としている」

「ル・マンはオペレーションの面でも信頼性の面でも、カレンダーの中でもっとも難しいレースだ」

「我々はいくつかの短いレースから(プログラムを)スタートさせ、チャンピオンシップで徐々にスピードを上げていく予定だ。ロードゴーイングカーと同様に、納期を守るか、品質を重視するかを選択しなければならないとき、我々はつねに品質を優先する」

■現時点でのデビュー予定は、ル・マン後のモンツァか

 ル・マン後に行われるWECのレースは7月10日にイタリアで開催される第4戦モンツァ6時間だ。

 プジョーは、ル・マンでトヨタやグリッケンハウス、アルピーヌと競争する代わりに、イベント中に観客に対して「サプライズ」を仕掛けることで、夏以降の9X8のデビューに向けて「期待と興奮を高める」ことを計画している。

 ジャンソニは、LMHホモロゲーションを完成させるプロセスは、彼らが達成すべき「一連のマイルストーン」で構成されていると説明した。

「そのスケジュールと(実際に)実行に移すことは厳密に定義されている」と同氏。

「このプロセスは、車両のすべてのコンポーネントを(写真と重量測定値付きで)詳細に記述したホモロゲーションファイルの提出、エアロダイナミクスの風洞試験、FIA国際自動車連盟(およびACOフランス西部自動車クラブ)による車両の検査によって終了する」

「この後の開発は“凍結”される。その後、パフォーマンスのパラメーターが評価され、BoPの重要な要素であるパワートレインの出力や車両重量、ハイブリッドエネルギーの展開パワー、およびモーターアシストが始動する最低速度が調整される」

「メーカーはBoP評価の対象となるために必要なレベルの性能と信頼性を判断した場合、つまりWECとル・マン24時間レースで理論上、ライバルメーカーと同じ勝率があると判断したときに、そのクルマが公認を取得する準備ができたと判断する」

「そしてこの時点から、ホモロゲーションサイクルが終了するまで、車両にそれ以上大きな技術的変更を加えることができないことを認めるんだ」

 3月のセブリング1000マイルに続き、第2戦スパと母国戦であるル・マンを欠場することを決めたプジョー。彼らはWECの年間エントリーリストにその名が記されているとおり、シリーズ最高峰の舞台で93号車と94号車の2台のハイパーカーを走らせることを計画している。そのデビュー戦は確定していないものの、計画が順調に進み、これ以上の先延ばしがないことを祈りたい。

© 株式会社三栄