満員の球場を知るのはわずか3人…“オンライン時代”で変わるDeNAチアの存在意義

「diana」オーディションに臨んだJunonさん(左)とRinaさん【写真:荒川祐史】

DeNAのオフィシャルパフォーマンスチーム「diana」でコロナ前を知るのは3人に

満員のスタンドでチアリーダーが踊る――。以前は当たり前だった光景を今は見ることができない。新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、球団チアの在り方も大きく変わった。1月24日に発表されたDeNAのオフィシャルパフォーマンスチーム「diana(ディアーナ)」の今季メンバー19人のうち、“コロナ前”の2019年から継続しているのはわずか3人。ほとんどのメンバーが観客に埋め尽くされた横浜スタジアムを知らないまま、2022年シーズンを迎える。

【動画】華麗なダンスで魅了する参加者たち…dianaオーディションの実際映像

チーム最長の5年目を迎えるJunonさんは、小学生の頃は“野球女子”。所属チームでDeNAの試合を観戦した時、満員の球場で踊るdianaに目が留まった。「それからずっとdianaになりたいと思っていました」。2017年の末にオーディションを受けて合格。夢を叶えた。

2018年、19年は観客の声援や鳴り物とともに応援歌が流れる中で、憧れの舞台に立つことができた。しかし、2020年以降は事情が変わった。コロナ禍で公式戦は延期され、再開された当初は無観客開催。グラウンドではなく、スタンド最上段でのパフォーマンスを余儀なくされた。

「たくさん練習しても見せられない。苦しかったなというのが正直な気持ちです」。観客との距離だけではなく、スタンドでのパフォーマンスは選手たちとの距離も遠くなった。「こんなにも違うものか」と戸惑う日々だった。

無観客のスタンドで踊るうちに、大歓声の中で踊りたいという気持ちが一層強く強くなった。dianaのメンバーは現役だろうが関係なく、オーディションで毎年決まる“1年契約”。「満員のスタンドをもう1度見たかったというのが継続の決め手でもありました」。初心に戻って受けたオーディションでdiana歴代最年長タイの5年目のシーズンを手にした。

コロナ禍での活動は「パフォーマンスに悩むことがありました」

もうひとり、4年目を迎えるRinaさんも、満員のハマスタを知るメンバーだ。小学生の頃に祖母に誘われてハマったダンスだが、野球に関心はなかった。ダンスの専門学校時代に、dianaの説明会に出たのがきっかけ。メンバーになってからは喜びに満ちた日々が続いた。小さい頃から観客の前でパフォーマンスをするのが大好き。1年目の2019年は満員のスタンドで踊れることが楽しく、近くで活躍する選手のプレーに魅了され、野球も大好きになった。人気ゲーム「プロ野球スピリッツA」も始め、自分のチームはもちろんDeNAだ。

しかし、コロナ禍で2020年以降は環境が一変。「お客さんが見えない中で、パフォーマンスに悩むことがありました」。そんな中、Rinaさんを支えたのはファンの声。たとえ同じ場所にいられなくても、公式ツイッターには応援メッセージがたくさん寄せられ、パネルやリモート応援でも、ファンの存在を感じることができた。「無観客でも自分たちはスタジアムに入ることができる。その場にいる分、ファンの方の気持ちを持つことが大切だなって」。

届ける相手はスタンドの観客だけでなく、テレビなど画面越しのファンの存在もより意識するように。2人がともに語ったのは「個々に注目が行くこと」。Junonさんは「どんな時にワイプで抜かれてもいいようなパフォーマンスをしなければならないと改めて感じました」と、難しさを感じている。

一方で、コロナがメンバーを奮い立たせた面もある。より一層高いレベルが求められ、審査員のひとりも「新たなdianaが見られるかもしれない」と期待を寄せる。メンバーの思いはひとつ。「満員のハマスタで踊ること」。大歓声を知るメンバーは少なくなったが、この2年は決して無駄ではなかったはず。再び観客が戻ってきた時、新生dianaは今まで以上のパフォーマンスを見せてくれるはずだ。(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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