革製品などを手掛ける銀職庵水主=長崎県大村市水主町1丁目=の筆頭職人、中山智介さん(41)が、クジラの皮を使った製品作りに挑戦している。現在、国内ではほぼ生産されていない“幻の革製品”といい、「クジラになじみ深い長崎の革職人として、ぜひとも復活させたい」と意気込んでいる。
中山さんが扱う革は牛革をはじめ、ワニやエイなど多様。財布などの製品のほか牛革で食器も製作しており、革製品のコンテストでは4年連続の入賞も果たしている。10年以上前に「クジラの革製品は無いのか」と疑問を持ち調べたところ、昔は財布やベルトといった製品があったものの、現在では生産されていないことが分かったという。
2019年に日本が31年ぶりに商業捕鯨を再開したのに合わせ、捕鯨船の所有会社と接触。何度も交渉を重ね、食用にも使われず廃棄されていた生殖器の皮を購入できることになった。素材が手に入ってから約2年間、クジラ皮をなめす技術を持った県外企業の協力も得て、特性について研究を重ねたという。
今月、大村市内であった展示会で初めて革財布を参考出品。表面はスポンジ状で独特の手触りが楽しめ、「しわの入り具合もクジラならではの表情」(中山さん)。丈夫でしなやかだが柔らかい分、加工は難しかったという。
販売するにはまだ価格が高めといい、コストを下げるために今後まとまった数の革を発注する予定。さらに経年変化の様子も観察していくという。財布のほか名刺入れなど製品のバリエーションを増やし、ふるさと納税の返礼品としてもPRしたい考えだ。
中山さんは「これまで扱ってきた中でも特に思い入れのある素材で、今後はヒレの皮にも挑戦したい。ほかの製品に活用してもらうため革の販売も考えており、クジラ革製品が長崎の新たな特産品になれば」と話した。問い合わせは中山さん(電090.1975.7478)。