ロシアが仕掛けた戦争と中国の思惑|和田政宗 ロシアによるウクライナに対する戦争が始まった――。各国がロシアを非難するなかで、中国は「安全保障に関するロシアの正当な懸念を理解している」と述べた。ロシアと中国は連携しているのか。中国の思惑はどこにあるのか。中国に「NO」と言える政治家、和田政宗議員が徹底解説!

「第三次世界大戦」の危機

ロシアによるウクライナに対する戦争が始まった。「侵攻」などと言われているが、正確に述べれば主権国家であるウクライナに対するロシアによる戦争である。

ロシアがさらにエスカレートすれば、米国とNATOの軍事的対抗措置によって「第三次世界大戦」となりかねない様相であり、日本は「専守防衛」というような形で、国土と国民を守れるのかという状況に陥っている。全面戦争になれば、核兵器の使用など、壊滅的な状況となる。

「第三次世界大戦」の危機と述べたのは、ロシアが仕掛けた戦争と中国の動きが連動しかねないからだ。ロシアによるウクライナへの戦争に対して、制裁をはじめとする厳しい措置をまずアメリカがしっかり取れないなら、それを見て中国は台湾と尖閣への侵略を考えるであろう。

「これぐらいの制裁で済む」ということを中国が判断すれば、北京冬季パラリンピック後、即時実行する恐れがあり、日本はアメリカやNATO諸国と連携するとともに、時にこれらの諸国より厳しい措置を取らなければ、中国の行動を抑えることはできないと考える。

ウクライナへの戦争において、中露は連携していると見て良い。国境を越えてウクライナに侵入するロシア軍を中国国営テレビ局CCTVが映像に収め、世界に配信した。ロシアとウクライナの国境になぜCCTVがいるのか。ロシアとの連携のみならず、つぶさに戦況を監視し、中国自らの行動の判断材料としようとしているのである。

五輪精神を無視したオリンピック

中国は、北京冬季五輪が終了し、パラリンピックも終われば、国家の威信をかけた大イベントはなくなり、今後はやりたい放題となる。五輪など利用できるものは全て利用してプロパガンダを行い、その後は弾圧や覇権主義を強める。昨今、繰り返し中国が行ってきたことである。

北京冬季五輪については、ウイグルやチベットなどを弾圧しながらのオリンピック開催であったことについて、大いなる非難をしたい。五輪憲章には、「オリンピズムの目的は、人間の尊厳を保つことに重きを置く平和な社会の確立を奨励すること」とあるが、完全にこの五輪憲章、五輪精神を無視したオリンピックだった。

北京五輪開催前からウイグルに装甲車が展開されたことを以前も書いたが、2月17日のIOC(国際オリンピック委員会)の記者会見では、大会組織委員会の厳家蓉報道官が、「台湾は中国の一部だ」とか「新疆ウイグル自治区での強制労働はねつ造されたうそだ」と述べ、中国政府の一方的な主張を、オリンピックの場で展開した。まさに、オリンピックの政治的中立を侵す発言だが、IOCはこれについては何にも言わなかった。

まさに五輪憲章に反する大会であり、そうした大会を開催している中国に対して何も言えないIOCは存在意義が問われるとともに、オリンピック自体の意義が問われることになる。そして中国の増長を助けた。

2008年北京五輪の聖火ランナーを投獄

ウイグル人への弾圧はオリパラ開催下の現時点で進行しているのみならず、過去にオリンピックの聖火ランナーなどで関わった人達にも行われている。

米国連邦議会が出資する「自由アジア放送(RFA)」の報道によると、2008年の北京夏季五輪の際、聖火ランナーを務めたウイグル人男性のアディル・アブドゥレヒムさんが「反革命」的な動画を見たことを理由に懲役14年の刑を受けて収監されているとのことである。

また、同じく2008年の北京五輪で聖火ランナーを務めたウイグル人男性のカマルトゥルク・ヤルクンさんは、父親のヤルクン・ロジさんが2016年に逮捕され、今はアメリカに在住し、父の釈放を求め活動している。

ロジさんは「分離主義活動に従事した」という理由で2016年に逮捕され、2018年に国家政権転覆扇動罪で懲役15年の有罪判決を受けた。ロジさんは、文芸評論家かつ作家で、10年以上にわたって使用されてきたウイグル文学の教科書の編集を担当していたということで、息子のカマルトゥルク・ヤルクンさんは、「ウイグルの文化、言語、アイデンティティを維持しようという父の努力を潰すため、中国当局が逮捕し、投獄した」と語っている。

北京冬季五輪に参加したアスリートの責務

ヤルクンさんはツイッターで、北京冬季五輪前に五輪へのボイコットを呼びかけ、北京五輪の開催は、中国による大量虐殺を助長するだけだと発信した。ヤルクンさんは、このように訴えている。

「ウイグルに対する中国のすべての大量虐殺と侵害を踏まえれば、北京冬季五輪に参加することは、この悪夢を恒久化するのに役立つだけです。アスリートがオリンピックのステージを利用して、ウイグルに対する連帯と支援を表明してくれることを願っています」

悲痛な叫びであり、ヤルクンさんのツイッターでは、妹も動画で父親の解放を求めている。

我々は、二度と民族弾圧のもとプロパガンダとして行われるオリンピックを行なわせないとともに、中国国内のウイグル、チベット、南モンゴルの方々の自由の確立と独立、解放を支援していかなくてはならない。

こうした中国の覇権主義、ロシアのウクライナに対する侵略。我が国は自由主義陣営のリーダーとして国際社会と連携し、断固たる措置を取って行くべきである。

著者略歴

和田政宗

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