“絶”やしたくない“絶”品ローカルグルメを救え! 人気観光地が“絶メシリスト柳川”で目指すものとは?

福岡のグルメな皆さん、「絶メシ」という言葉をご存知でしょうか?その発祥は、 2017年に登場した群馬県高崎市のローカルグルメサイト「絶メシリスト」。地域に根付く「失うには惜しく、絶やしてはならない絶品グルメ」=“絶メシ”と言う切り口で地元の飲食店を紹介したところ、エリアを越えての大反響を呼びました。2020年には“絶メシ”をテーマにしたドラマが制作されたり、石川県や広島県など全国各地で地元の“絶メシ”に目を向ける自治体が次々と出ていたりと、その波は全国に波及しているんですって。

今回ご紹介するのは、高崎市に次いで絶メシ全国展開第一弾となった福岡県柳川市。でも、柳川といえば、歴史ある「川下り」や「うなぎのせいろ蒸し」ですでに有名ですよね。十分な観光資源に恵まれているような気がするのですが、どうして“絶メシ”をフィーチャーすることになったのでしょうか?
現在も毎年「認定店舗」が追加されている“絶メシリスト柳川”の取り組みを追ってみましょう。

雰囲気込みで味わう心のオアシス 絶メシリストとは?

絶メシリストでは、掲載するお店に対して“個人経営である”、“この店でしか味わえない絶品料理がある”…などいくつかの定義を設けています。この中で注目すべきは“地元民に愛されている店”ということ。
★絶メシリストが掲げる定義はコチラ https://www.yanagawa-net.com/zetsumeshi/

皆さん、地元の行きつけのお店を思い浮かべてみてください。店主はおいちゃんやおばちゃんで、店内も地味だったり、古めかしい。けれど、なぜかホッとする雰囲気を持っている。看板料理も必ずしも地元の名産品が入っているわけではなく、価格も庶民的。けれども、他のどの店にも似た味に出会ったことはない。そして、ふとした時に無性に食べたくなる、そんな“心の名店”を誰しもが思い出の中に隠し持っているのではないでしょうか。
“絶メシリスト”では、そんなお店が主役です。

こちらは絶メシリスト柳川の掲載店の写真。どのお店も、訪れるとどこか懐かしい気持ちになります

柳川で絶メシリストが始まった理由

群馬県高崎市に続き柳川市がこうした絶メシリストを手がけた背景には、「従来の観光イメージとは違う視点でまちを体験してほしい」という前提があります。さらに企画が進むにつれて原動力となったのは、地元を長く支えてくれた絶メシ店を存続させたいという思いです。
実際に、地方の飲食店では店主の高齢化が進み、多くのファンを持っているのに閉店を余儀なくされる店が後を絶ちません。そうなると、店主が技とアイデアを詰め込んでたどりついた絶メシもこの世から消えてしまいます。
絶メシリスト柳川のキャッチコピーの通り、「食われんごっなったっちゃ、知らんば~い」な状況なんです。

柳川市は地域グルメの過疎化をまねく状況を変えたいと、2018年に絶メシリスト柳川を立ち上げました。
掲載店の情報は柳川市民の皆さんから収集。市役所職員とプロのライターで結成した「絶メシ調査隊」が検証を重ねて決めています。地元人の情報で選ぶからこそ味の保証はもちろん、初めて行ったのに懐かしい気持ちになれる。観光客にとっては旅先をよりディープに楽しめるガイドになるのです。

行列ができたお店も!ぜひ足を運んで欲しいおすすめの絶メシ3店をご紹介

こうして取材を続けた「絶メシリスト柳川」には、ちゃんぽんや惣菜、和菓子などジャンルも多彩な15店舗(2022年2月27日現在)が掲載されています。その中には、掲載後に県外からの来客がどっと増え、行列ができるほど賑わう店舗も!予想外の反響に店主のやる気に火がついている、なんて嬉しい後日談も次々と寄せられているそうですよ。

それではここで、数ある絶メシ店の中から厳選して3店をご紹介。

①「レストラン辰己屋」の筑後地方で一番歴史の長いちゃんぽん

なんと約200年続く「辰己屋」さん。洋食レストランではあれど、辰己屋さんのちゃんぽんは、本場長崎仕込みの本格派。辰己屋といえばちゃんぽんと言うファンも多いとか。

「レストラン辰己屋」
住所: 福岡県柳川市辻町10 [map]
アクセス方法: 西鉄柳川駅より車で3分
お問合わせ:0944-73-1888
営業時間:11:00〜21:00(OS 20:30)
定休日:不定休

②ほのかに甘くキメが細かい「古賀天ぷら屋」のまる天

有明海に面した柳川は海苔や珍味も有名ですが、忘れて欲しくないのがこちらの天ぷら(さつま揚げ)。古賀天ぷら屋さんのまる天は1枚15円。遠方の方は400枚くらいまとめ買いされることもあるのだそう。

「古賀天ぷら屋」
●住所: 福岡県柳川市大和町中島98-3 [map]
●アクセス方法: 西鉄中島駅より徒歩13分
●お問合わせ:0944-76-4244
●営業時間:9:00〜18:00
●定休日:月曜

③川下りのお供にぴったり「加藤商店」のお団子

30年前に前身となるお店が畳まれるところを加藤商店の奥さまに救われ、以来絶やすことなく愛されている逸品「柳川だんご」。柳川川下りのお供にぴったりです。

「加藤商店」
●住所: 福岡県柳川市稲荷町138-1[map]
●アクセス方法: 西鉄柳川駅より車で11分
●お問合わせ:0944-72-2954
●営業時間:8:00〜18:00
●定休日:第1・3・5水曜

絶メシリスト柳川の見どころ

サイト内では、読者がより多く目を向けてくれるように工夫を凝らしているのにお気づきでしょうか?その一つが、店主の人となりを表す会話形式の文体です。

絶メシ店が何十年と支持されてきた要因として、店主のキャラクターが多いに影響しているのは間違いありません。寡黙でストイックな職人肌の大将、人当たりが良く会話が途切れないおかみさん、新しいものを取り入れようと前向きなオーナーなどなど、どのお店も皆さん個性的。昔はブイブイいわしてたとか、ご主人が奥様に一目惚れだったとか、意外なエピソードが不意に飛び出して取材陣が爆笑することもしょっちゅうです。
料理だけではなく、店主の人生や生き様に触れるたびに、ますますお店への愛着が湧いてきますよね。サイトでも店主と対峙するようなライブ感を味わってほしいと、少しくだけた会話形式で紹介されています。

さらに、もう一つの見どころは、調理の瞬間を切り取った画像です。
店主によりメニューはさまざまですが、調理中の鋭い眼差しや無駄のない手さばき、料理に向き合うたたずまいは共通しています。さっきまでにこやかに話していた表情が一変。まるで真剣勝負に対峙する侍のごとく、凛としてシビれるほどかっこいいんです!普段の気さくな表情とビシッと決まった顔つきのギャップを並べることで、より店主の人物像が深まります。こんな人が作ってくれるんだと、絶メシがより一層美味しくなること間違いなし!

こちらは柳川駅からほど近いところにある、純喫茶ゴンシャンの寡黙なマスター

西鉄柳川駅にも掲載店ごとのポスターがずらり。こちらのマスターはにっこりバージョンです

後継者不足解決への第一歩に まずは柳川の絶メシを味わって

多彩なアプローチで新たな魅力を提案する“絶メシリスト柳川”ですが、未来へ向けた後継者問題の解決はまだまだこれからだそう。掲載に協力いただいた店主やファンの皆さんに報いるためにも、そして、柳川市を訪れた人、まだ絶メシを味わったことがない人に伝えるためにも、これからも絶メシリスト柳川は続きます。
「柳川でこんな美味しいものを見つけたよ」なんてご報告や「お店の味を継ぎたい」という方は、ぜひ問い合わせてみてはいかがでしょう。
このサイトを機に自分の地元でも絶メシ店を探してみると、新たな発見が生まれるかもしれませんよ。

街に元気を与えてくれる絶メシは、誇るべき地域遺産です。閉店して思い出の中だけの味になる前に、私たちにもできることを探してみましょう。
まずは「食われんごっなったっちゃ、知らんば~い」を合言葉に、ぜひ気になるお店へ足を運んでみてくださいね。

★絶メシリスト柳川:https://www.yanagawa-net.com/zetsumeshi/

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