がんと就労とアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)両側乳がんになりました138 #CancerX #WCW2022 #WorldCancerWeek2022

CancerXのレポート第3弾、です。

今回はがんと働く。がん対策のなかでは進んできているものなのかもしれませんがいまだ根強い問題を抱えるがんと就労。アンコンシャスバイアス・・無意識の偏見を通して考えるセッションです。

~がんと就労とアンコンシャスバイアス~

【パネリスト】
宇都出 公也 (アフラック生命保険株式会社 取締役上席常務執行役員)
北風 祐子 (電通ジャパンネットワーク 執行役員 Chief Diversity Officer)
高倉 俊二 (厚生労働省 労働基準局 安全衛生部 労働衛生課長)
モデレーター:谷島 雄一郎 (ダカラコソクリエイト 発起人・世話人 / カラクリLab. オーナー / 大阪ガス株式会社 ネットワークカンパニー 事業基盤部 コミュニティ企画チーム)

まず、東京都のがんに関する実態調査が参考として出されました。

仕事をやめた、離職したという理由についての回答です。
『治療に専念する必要があると思ったが66.2%』
『体力面から継続困難と思った 46.5%』
ここまでは理解できる回答だと思います。

その後続くのが・・・
『職場から勧められた9.9%』
『職場にいづらくなった 8.5%』
『驚いて仕事の継続をあきらめた 11.3%』
『職場で相談できる人・窓口がなかった 4.2%』 は
本当に厳しい結果として受け止められました。

他にも残業の多さや休みをとることが難しかった、迷惑をかけるが多く『気兼ね』してしまうという声が寄せられています。やはり、職場との関係、人間関係が影響しているのではないかと思います。

気になるのは、『治療に専念』は職場では好意で言われることも推察され、これによって、やめるべきと思いこんだ人がいるかもしれないとの分析が出ました。

高倉さん『いったん辞めて、働く意欲があることから再就職した人も多いから、一時的には自信がなくなるので離職に至ったが辞めなければよかった思った人も一定数いると思う。』

職場においての声のかけ方にはやはり課題がありそうです。

厚労省の『治療・両立ナビ』 ポータルサイト
https://chiryoutoshigoto.mhlw.go.jp/

電通に勤務する北風さんからは社内研修についての共有がありました。

その名も『バイバイ バイアス』

北風さん『根っこにあるのは、弱みを見せたら負け、みんなと違うから間違っているではなく多様性をプラスのちからに、特にマネージャーは悩みを持つ人にとって安全な領域でありたい。職場での思い込みがなくなれば企業風土もよくなるのでは、ということ。』

がん患者が部下にいた場合、マネージャーは何を問いかけたらいいのか、という研修です。

職場の理解と知識が問われるなか、披露されたのは、社内からの実際の声でした。

北風さん『”おまえの代わりはいくらでもいるんだから、ちゃんと休め”。治療してほしいと、良かれと思って言ったことが、結果マイナスになることもある。さらに”ラクな仕事にかえてあげる。仕事を減らそう。”

一方的な配慮で病気の療養を引き換えに会社人生をあきらめることを予感させてしまう。』

一番やってはいけないのは、存在価値の否定、居場所の喪失感を生む発言。

北風さん『当時私が言われたのは”責任ある仕事はもうやりたくないだろう?”。仕事が来ないことになりかけた。それから仕事のストレスのせいだ、とがんになった理由の”犯人さがし”。”病名は周りの人に言わないよね?”などは内密の強要。がんになることは後ろめたいことなのかと思ってしまう。』

知っておくことで減らせることがあるのではないかと話します。

谷島さん『難しいと思うのが、誰にどのタイミングで言われたかによる。あるときはわかってほしい、あるときはわかってたまるか、と思うこともある。普通に接してほしいときもあれば、配慮してほしいときもある。気持ちと体調も人それぞれ、その時々。そこにあわせて、人の力を引き出す高度なマネージメントは大変。コスパの悪さを感じる人もいるかもしれない。』

北風さん『こういったらこう思われるかもと思って、困っている人に何もしない。触らなければ何も起きない。トラブルは起きない。(しかしそうではなく)気遣っているのであれば、気遣っている、ということを伝えたほうがいいのではないかと思っている。答えを出す必要がないと思う。突然言われるので、答えを出さなきゃと思うが、そうじゃなくて一回受け止めて一緒に考える、一緒に受け止めていくよ、が大事。人間関係が大事。がんだけではない。職場での人間関係すべて同じなのではないか。』

宇都出さん『がんという固定観念、アンコンシャス・バイアスがまだある。それを解いていくのは就労の問題の解決が大事。目に見えるものを作って現実に動かしていくことが必要。(がん保険の会社という状況もあるが)社員の中のがん経験者のコミュニティもある。業務も行い、声も出していってもらう。ロールプレイングも行っている。ジェンダーの問題も一緒、様々な形で物事の考え方を変えていく。ビジネスだけのことではない。』

国立がん研究センター 就労支援についてのハンドブック

https://ganjoho.jp/data/public/support/work/qa_files/kigyomukeManu_2013.pdf
https://ganjoho.jp/public/qa_links/brochure/pdf/guidebook_sm.pdf

谷島さん『一方で、心の声として、規模が大きくていい会社だからできるんじゃないの?
多くは中小企業、フリーランスなどいろんな環境の方がいる。置かれた環境によって可能な合理的配慮も異なってくると考える。』

高倉さん『配慮への線を引くのは現実問題難しい。でも例えば骨折でも配慮すると思う。これと一緒で、がんをごく普通の一部として治療・継続するなど話し合いを持てる環境作りはできるのではないか。』

北風さん『マネージャーの啓発は日本規模でやらなくてはいけないのではないか。がんに限らない。』

谷島さん『でも経済合理性を考えると厳しい。がんに罹患した人が今まで通りの働きをしたり、新たな価値を急に発揮するのは難しい。がん罹患者も会社側もともに幸せになるにはどんなロジック、マインドが必要か。』

宇都出さん『がんになられたとしても積み上げられたものを持っている。それをもってどこかに行かれたらもったいない。半分の方ががんになる時代で、ニーズやソリューションを考える中で、がん患者さんの意見・経験は価値を生む。生かすかどうかは着眼点ひとつ。

がんは多様。個別性を大事にして、ごく普通に人生の中の経過としてがんになって、治療して継続する。コストや経済合理性は考えることはほとんどない。あたりまえになっていけばどうってことはないと思う。ジェンダーもそう、そのためには知識を広め、これまでを塗り替えていく。問題も変わっているのではないかと。』

次のフェーズに進むには?

(がんと就労の問題に対し)いろいろなリソースが出されていても、未だしんどい人が多い中、どう次へ向かえばいいのでしょうか?

高倉さん『医療機関に関しては、まずは就労の意思があるかどうかを患者から聞いてもらって勤務状況と合わせて、両立への可能性を探ってほしいと思う。企業側としては両立支援はどこまでやらねばいけないのかと不安なのではないか。活用可能な勤務時間制度を取り組みとして進めてもらいたい。

患者さんに関して言うと職場に続けたい意思を表明してほしいと思う。誰かが起点になって、情報連携して可能性を探れるのではないか。当たり前の空気を広めてほしい。仕事を続けるということが、疾患予後として医学的な予後が良くなるデータへの研究がなされていない。そういう医学研究もデータが出てくると、発信力が出て進みやすくなるのでは。』

北風さん『経済的合理性だけを求めている会社は数年以内に認めてもらえなくなる時代がは来る。みんなの個性をそれぞれ持てる力を発揮できればと考えていけるようにならなければいけない。規模かかわらず、トップにいる人たちが想像力働かせて、いい職場を作っていこうね、と。がんだけじゃなくいろいろトラブル起きるけど、相手を思いやってやっていこうよとトップがガツンと言わないとその考えがいきわたらない。いい文化ができていかない。非常に経営陣の責任は大きい。』

宇都出さん『そう簡単には変わっていかない、病名を言わない時代から、確実に変わってきている。ビジネスだけではなく、がんの就労の問題などは強く言っていきたい。社会全体でいろんな角度からがんに対する偏見や無意識のバイアスをとっていくことが就労そのものの問題にもつながる。』

最後に谷島さんからは、自分の中にある思い込みにも話が及び、『がんの多様性を可能性に変える』、勇気のある一言でしめられました。

うなづくことばかり、みなさんの一歩が次の一歩につながればと望まずにはいられません。

#CancerX #WCW2022 #WorldCancerWeek2022

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