【寄稿】遊技機市場での競争加速へ(WEB版)/POKKA吉田

まだ、令和4年に私が期待していたことのメイン部分については本稿を書いている時点で触れることが難しいのでそれは置いておくとして、1月を振り返ると遊技機市場が活性化しつつあるという実感を少しは感じることができるようになってきた。もちろん旧規則機撤去もあってホール営業としての業績に与える悪影響は大きいが、新規則機に対する遊技客の支持の形が具体的に見えてきたということが私にとっては好感なのである。

ぱちんこについては昨年の牙狼、そしてガンダムユニコーンと来て昨年末のエヴァがあった。1月の319市場は何が抜けてくるかと期待しつつ見ていたが、早々に客の強い支持を集めたのはRe:ゼロ。既にパチスロ市場のシェアでは大手メーカーになって久しい大都技研だがぱちんこでここまでの成功は初めてのことではないだろうか。さらにはまだ本稿執筆時点では結果が出たとは言えない導入週でもあるルパン。シリーズの安定したポテンシャルを支持するホールは多く、Re:ゼロ、エヴァ、ユニコーン、ルパンと、客の支持を得続けることができればそろそろ周遊ではなく遊技頻度増あるいはさらに遊技客増への転換の可能性もうかがえると言えば言い過ぎだろうか。

パチスロは苦しいというのが多くのホールの現場感ではあるが、沖ドキDUOが気が付けばかなりの支持を集めつつある。ジャグ系の需給逼迫は今に限らず常のこととして、それにチバリヨやバイオがあって、新しいところでも続くかどうかの番長ZERO、ディスクアップがある。ただしパチスロ市場への不安を完全に払拭できないでいる現場感もわかる。バイオはジャグ系ほどの設置台数構成を求められるほどに供給されていないし、チバリヨは店というか地域をかなり限定してしまう。番長ZEROやディスクアップはまだ導入したばかりで結論が出たわけではない。この点がぱちんこと比較したときの不安要素ということになると思うが、これら6号機のポテンシャルはおそらく昨年末時点での多くのホール関係者の想像よりも上を行ってくれたかと思う。
ここでちょっとナナメ目線を。1月に結論が出た成功機種と言えばRe:ゼロと沖ドキということになるかと思う。この2機種、導入直後にいずれもWEB上では軽く炎上していることを思い出す。Re:ゼロはパンク関連の話、沖ドキはモード移行の話であるが、導入直後にこういう新機種にとってかなりマイナスになりそうな情報がSNSなどを通じて膨大な件数流布されていたことを知っている人は多いことだろう。

SNS上の情報で市場動向を読み解こうとしている人たちは、この当時(沖ドキはRe:ゼロよりも時期は少し前になるが)、いずれもRe:ゼロや沖ドキを「失敗したかも」と考えたはずだ。結果はしかし現状である。少なくとも本稿執筆時点ではPSの新機種ではこの2機種が筆頭になるのだ。

このことから、SNSによる情報拡散が市場をあまりコントロールするものではないという仮説も成り立つ。これは裏返せばSNSによる販促効果が多くのホール関係者が思っているよりも乏しいということも示唆するということも言えるかもしれない。

販促の効果は昨年のガンダムユニコーンのとき、地上波のCMにかなりのものがあることを私は再認識した。地上波そのものは確実に凋落産業だ(内需産業のままだと人口低下でぱちんこ業界と同じく市場規模は減少を続ける)。番組がその魅力を激減させているという評価が一般的になってきた。報道系も雑な番組が増えていることは一昨年のサンデーモーニング発端による強烈なぱちんこバッシングを思い出せばわかるだろう。サンデーモーニングは一昨年に都内の某店の開店前の並びを中継で映してスタジオから出演者が罵声を浴びせるということをやった。それ以降、一昨年の緊急事態宣言が終わるまで、休業要請を無視するホールを地上波各局は毎日報じていたのだが、きっかけはTBSのサンデーモーニングだったのは事実である。
それでもガンダムユニコーンは地上波のCMに力を入れればポテンシャルが高ければ多くの遊技客の根強い支持を集めることができる好例となった。ガンダムユニコーン登場前までは牙狼がすぐに別の機種に遊技客の支持で捲られるなんて想像したホール関係者はいなかったことだろう。

そういう意味では、特にホール営業者はSNSを活用した販促について、しっかりと費用対効果を再度確認した方がいいと思う。1月の遊技客動向はSNS上での炎上劇を無視して2機種を支持したわけだ。

こういうことを考えると、地上波のCM(ホールCMならローカル局のCMがメイン)はもちろん、案外、スポーツ紙への広告出稿や折込広告にも今も一定の効果があったりするかもしれない。この数年、SNSを利用した販促活動の提案がホールに対してものすごく増えているが、私は1月の動向を見てあらためてSNSによる販促の効果を疑問視する部分が多くなっている。

それはともかく。

2月以降も新規則機しか販売されないわけであり、PSともに新規則機だけの市場になってきたわけだ。ぱちんこの場合は「319系の脱周遊化」が市場活性化のゴール地点だと思う。換言すれば「特定機種のみに需要が集中している状態の改善」だ。何かヒット機が登場したときに前のヒット機が急に支持を失うというのは誰も得をしない。少なくとも300万円レベルの中古価格だったものが半年もせずに新台販売価格を下回るという相場の乱高下はホールの営業成績にとってはむしろ困るくらいのものだと思っている。

パチスロの場合は、まずは不安点の払拭。ジャグ系は安定としてもAT系での軸になる機種が登場が求められる。条件としては「各店舗に最低一列は導入されるレベルの設置台数」で「長く支持される」機種。1万台レベルの供給台数ではまだ心もとない。今の時代10万台なんてものは期待するのも無茶であるが、5万台レベルのヒット機が複数登場することが早急に求められる。もっとも本稿で少し名前を出したディスクアップのようにAT系でなくてもそれは構わない。ジャグ系の遊技客とディスクアップの遊技客とは、同じノーマルタイプとはいえ全く客層が異なっている。重なる客層もそれぞれを遊技する際のメンタリティや打ち方も違う。そういう機種がもっと登場することももちろん良いことである。
いろんな大きな流れで令和4年の反転攻勢をたくさん語りたいところだが、本稿ではひとまず1月の旧規則機撤去の時期に新規則機の市場での競争が加速されてきたということを言いたかったわけだ。当たり前だがたくさん新機種が出てきてもすべて鳴かず飛ばずじゃホール職域はやっていけない。ぱちんこは脱周遊化に進むことができるかどうか、パチスロはまずはロングランの設置台数の多い(たとえ供給台数が少なくとも中古等でBOX台数を確保しようと多くのホールが躍起になるレベルの需要があれば良い)成功機種の複数登場が実現することができるかどうか、これらを2月、3月に期待したい。

先の話はどうしても中・長期展望になる。それは短期展望があってこそ、じっくり構えて対応することができるというものだ。まずは足元の短期展望推移。私の感覚では1月は想定内の中で最高とは言わないが最低ではなく、ひとまずギリギリ及第点だったと思っている。

■プロフィール
POKKA吉田
本名/岡崎徹
大阪出身。
業界紙に5年在籍後、上京してスロバラ運営など。
2004年3月フリーへ。
各誌連載、講演、TV出演など。
お問い合わせ等は公式HP「POKKA吉田のピー・ドット・ジェイピー(www.y-pokka.jp)」か本誌編集部まで。

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