スペースXの「クルードラゴン」で民間初の船外活動実施へ、宇宙飛行ミッション「ポラリス」発表

2021年9月に、民間人だけの宇宙飛行ミッション「Inspiration4(インスピレーション4)」を実施した実業家のJared Issacman(ジャレッド・アイザックマン)氏は、同氏が手掛ける新たな宇宙飛行ミッション「Polaris(ポラリス)」を発表しました。

ポラリスは最大3回の有人飛行ミッションから構成されており、最終的には現在スペースXが開発中の宇宙船「スターシップ」による初の有人宇宙飛行も計画されています。最初のミッションとなる「Polaris Dawn」(ポラリス・ドーン)は、2022年第4四半期(10月~12月)以降に実施される見込みです。

【▲ ポラリス・ドーンのクルー4名。左から:アンナ・メノン氏、スコット・ポティート氏、ジャレッド・アイザックマン氏、サラ・ギリス氏(Credit: Polaris Program)】

ポラリス・ドーンでは2021年のインスピレーション4に続いてスペースXの有人宇宙船「クルードラゴン」が用いられ、フロリダ州のケネディ宇宙センター39A発射台から打ち上げられます。

インスピレーション4では国際宇宙ステーション(ISS)や「ハッブル」宇宙望遠鏡よりも高い高度585kmの軌道を飛行しましたが、アイザックマン氏によればポラリス・ドーンではさらに高い軌道を飛行することが計画されています。5日間の軌道滞在中には、主に医学関係の実験や研究を実施。ミッションの成果は医学への応用や、今後の月・火星有人飛行への知見として活用されます。

また、ポラリス・ドーンではスペースXの衛星ブロードバンドサービス「スターリンク」の衛星との間でレーザーを用いた通信試験を行う他に、民間宇宙飛行における船外活動が世界で初めて試みられる予定です。船外活動用の宇宙服には、現在クルードラゴンで使用されているスペースXが開発した船内用の宇宙服をアップグレードしたものが用いられるといいます。

【▲ ポラリス・ドーンのミッションパッチ(Credit: Polaris Program)】

なお、ポラリス・ドーンミッションには、ジャレッド氏を含めて4人が参加します。ジャレッド氏は前回の飛行と同様に船長を務めます。

Scott "kidd" Poteet(スコット・“キッド”・ポティート)氏は、パイロットとして参加します。アメリカ空軍出身のポティート氏は航空宇宙企業「Darken International(ドラケン・インターナショナル)」に勤務後、ジャレッド氏がCEOを務める決済会社「Shift4 Payments」の戦略担当副社長に就任。2021年のインスピレーション4ではミッションディレクターを務めています。

Sarah Gillis(サラ・ギリス)氏は、ミッションスペシャリストとして搭乗します。SpaceXのリード・スペース・オペレーション・エンジニアとして働くギリス氏は、宇宙飛行士のトレーニングプログラムを監督しています。これまでにアメリカ航空宇宙局(NASA)とスペースX初の有人宇宙飛行ミッション「Demo-2」や初の運用飛行「Crew-1」、そしてインスピレーション4にも関わってきました。

Anna Menon(アンナ・メノン)氏は、ミッションスペシャリストおよび船内での医療を担う「看護師」として搭乗します。メノン氏はギリス氏と同じくスペースXで働いており、有人ミッションに加えてISSへの物資輸送ミッション「CRS-22」や「CRS-23」に関わった実績があります。スペースXに就職する前は、NASAで生物医学飛行管制官を7年間務めています。

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  • Image Credit: Polaris Program / John Kraus
  • Polaris Program \- Polaris Program will Undertake a Series of Pioneering SpaceX Dragon Missions, Demonstrating New Technologies and Culminating in the First Human Spaceflight on Starship

文/出口隼詩

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