野球未経験の父が独学でサポート 出社前の朝練が結実した“父子のサヨナラ打”

墨田ポニー・長谷川岳【写真:加治屋友輝】

墨田ポニーの長谷川岳が自身初のサヨナラ打を放った

打った瞬間、笑みがこぼれた。「抜けたと思いました」。27日に開幕した中学硬式野球ポニーリーグの「第46回関東連盟春季大会」で、墨田ポニーの長谷川岳外野手(3年)は自身初のサヨナラ打を記録。殊勲の一打を最も喜んでくれたのは、三塁塁審を務めていた父・亮一さんだった。

千葉・柏市の柏の葉公園野球場で行われたポニー市川南マリーンズ戦に「9番・右翼」で出場。5-5の同点で迎えた最終7回2死一、三塁で、打席が回ってきた。「自分が決めるんだ」と言い聞かせ、2ボール1ストライクから高めの直球を叩く。打球は左中間を割り、チームは6-5で白星発進した。

「努力は必ず報われるんだなってわかりました」

そう自信をみなぎらせる岳くんは、鳥山大樹監督も「チーム内で1、2を争う努力家」と認める練習熱心。毎日素振りは400~500回行い、平日の午前6時から約1時間、自ら朝練を行っている。「大変ですけど、結果を出したいんです」。たくさんのマメが潰れた掌。そんな彼の練習相手を亮一さんが務める。

亮一さんは高校時代サッカー部に所属も息子とともに野球を勉強、今では審判も務める

51歳の亮一さんは高校時代、サッカー部に所属し、野球経験はない。ただ、岳くんが小学3年生の時、いとこの影響で野球を始めると、自らも勉強し始めた。指導本や動画で学ぶだけでなく、所属していた少年軟式野球チームでも、コーチとして手伝い、現場で知識や指導法を吸収した。そして毎日、出社前に必ず朝練に付き合い、汗を流すようになった。

知識は野球技術にとどまらない。審判講習会にも参加。ポニーリーグの大会でも、実際に審判としてグラウンドに立つ日もあった。そしてこの日、三塁付近から愛息の痛烈な一打を間近で見届けた。

大会前、岳くんは父から「中途半端なスイングはするな。打てなくてもいいから思い切って振れ」とアドバイスを受けていた。「その言葉が自信に繋がりました。お父さんのおかげで打てたと思います」と感謝する。サヨナラ打を放った時、審判を全うする父とは目は合わなかったが「きっと喜んでいたと思います」。親子の努力が実を結んだ一打だった。(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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