「Dappi」問題の仕掛人 小西洋之こそ“人格破綻者”|岩瀬朗 2021年10月6日、立憲民主党の小西洋之、杉尾秀哉の両参院議員が匿名アカウントのツイートで名誉を傷つけられたとして、計880万円の損害賠償と投稿一本の削除などを求める訴訟を東京地裁に起こした。「Dappi」のどのツイートが名誉棄損なのか。安倍晋三元総理を「人格破綻者」などと罵る小西議員こそ「人格破綻者」ではないのか。「Dappi」問題の真相に迫る!(写真/杉尾ひでやHP)

立憲民主党の森ゆうこ副代表が国会で吠えた

10月13日、参議院本会議の代表質問で、立憲民主党の森ゆうこ副代表はこう吠えた。

「同僚の小西・杉尾両参院議員が行った発信者情報開示請求手続きにより、重要な問題が明らかになってきました。国会質疑の動画を編集して、本来の意図とはまったく違う内容のフェイクニュースを作り上げ、拡散し、野党を攻撃してきたツイッターアカウントの運営者が法人であることがわかりました。

しかも、バズフィードニュースの調査によれば、その法人は自民党の議員や自民党の支部との取引があることもわかりました。

ソーリ、今回の選挙ではお金を使ってネット工作を行い、選挙の結果を不当に歪めるような卑劣な行為を自民党の議員に行わせないと、この場でお約束いただけませんか」

なんのことかさっぱりわからないという読者のために、この騒動の経緯を時系列でふり返ってみよう。

10月6日、立憲民主党の小西洋之、杉尾秀哉の両参院議員が匿名アカウントのツイートで名誉を傷つけられたとして、計880万円の損害賠償と投稿一本の削除などを求める訴訟を東京地裁に起こした。

10月8日、「フライデーデジタル」が《ツイッターで野党攻撃の匿名アカ…正体は「法人」だった》と初めて報道。同月13日、東京新聞が《野党攻撃のツイッターアカウント 正体は企業 取引先自民》と特報面で大々的に報道した。

記事のなかで小西氏は、提訴に踏み切った理由をこう語っている。

「私の国会質疑の趣旨をまったく別のものに仕立て上げて改変し、やりとりの断片を切り取ってツイッターに投稿していた。そんなことが何度か繰り返され、信用や人格を傷つけられた」

10月14日には朝日新聞が《匿名投稿、2議員が提訴 「Dappi」アカウントから「名誉毀損」》、10月24日にはスクープと題して、しんぶん赤旗が「日曜版」で《ウソ攻撃で野党攻撃のツイート 「Dappi」運営企業の社長 自民党本部事務総長の親戚名乗る》と報道した。

問題の核心は、自民党による関与があったかどうかだ。

11月13日、毎日新聞(デジタル)は「投稿に自民党の関与があったことを示す証拠は現段階では見つかっていない」と報じている。

ツイッターのアカウントはほとんどが「匿名」

小西、杉尾両氏が問題視したツイートは「Dappi」というアカウントで、フォロワー数は11月15日時点で17万7千人。小西議員らの提訴といういわば“言論封殺”が原因かどうかはわからないが、10月1日を最後にツイートを停止している。

「匿名アカウント」との報道をみれば、いかにも“胡散臭い”と思われる読者もいるだろうが、世の中のツイッターのアカウントは、ほとんどが「匿名」だ。

もちろん、有名人やツイッターを広告媒体としてとらえる企業は名前を明示しているが、日本で4千万以上あるとされるアカウントのほんの一部である。そもそもツイッターは「匿名」で投稿できることが特徴であり、「匿名」であること自体は何も問題はない。むしろ、「匿名」であるからこそ、表現の自由を行使することができるという側面もある。

「Dappi」のプロフィールをみると、
「日本が大好きです。偏向報道をするマスコミは嫌いです。国会中継を見てます。」と書いている。

「ただの『ネトウヨ』にはあらず」と報じたメディアもあるが、「ネトウヨ」かどうかはどうでもいい。焦点は、この「Dappi」というアカウントによるツイートが、二議員の名誉を毀損するようなものだったのかどうかということだ。

本題に入る前に、まずは「Dappi」がどのようなツイートをしていたのかを紹介しよう。

9月29日のツイートでは、自民党の岸田文雄新総裁の記者会見を取り上げ、朝日新聞記者の「コロナ禍での新総裁の1回目の会見を30分で終わらせるのは少ないのでは?」との質問に対し、岸田氏が「出来るだけ多くの質問を受けたいが、時間制限なしは政治日程(的)に難しい。皆さんに協力いただき、やりとりを出来るだけコンパクトにし効率的に行わせてほしい」と回答したことを引用し、《記者にビシッと釘をさす岸田さんが心強い》とコメントしている。

9月8日のツイートは、朝日新聞が「金学順が慰安婦と名乗り出てから30年。安倍前総理は被害者への手紙を拒否したり日本側に誠意を疑わせる言動があった!当時の経緯は資料・証言に基づき継承すべき!救済最優先!」といった趣旨の社説を掲載していることに対し、《慰安婦問題は“朝日の捏造報道”が元凶なのに、そこには触れず日本批判の朝日新聞は屑》といった批判コメントを付している。

「野党攻撃のツイート」というウソ

メディアだけではなく、批判の目は野党にも向けられている。

8月13日、今井雅人氏(立憲民主党)の国会での発言「閣僚なら靖国参拝するな!韓国は遺憾の意を表明してる!日韓関係改善の障害!韓国に配慮をしながら行政に携われ!」を紹介し(動画も添付)、《韓国のために『閣僚は靖国参拝するな』と国会で主張するのが立憲民主党です》とコメントしている。

8月4日、厚生労働委員会での長妻昭氏(立憲民主党)の発言「医療行政の正念場!皆さん、コロナの恐怖に震えてる!」を紹介したうえで(動画も添付)、《今日も批判だけで不安を煽る立憲民主党。そもそも本当に皆が恐怖に震えてるなら人出は減少してる筈では?》と述べている。

森ゆうこ氏は「全く違う内容のフェイクニュースを作り上げ」と語り、しんぶん赤旗は「ウソ情報で野党攻撃のツイート」と報じているが、これらのツイートのどこがウソ情報なのか。

「!」は「Dappi」の主観だろうが、引用した言葉にウソはない。また、「野党攻撃」というのも正確ではない。野党議員でも評価できる発言には率直に賛辞を送っている。

6月11日のツイートでは、立憲民主党の松原仁氏の拉致問題解決に向けた質問に《その通り!》などとコメントし、外務省の真摯な対応が見られないことに《どこか他人事の外務省が腹立たしい》と不満のコメントを出している。

同じく、国会で国民民主党の玉木雄一郎代表がコロナ禍で困っている事業者の家賃支払いについて早急に与野党協議を行うよう求めたことに対し、《その通り!雇用を守るために与野党が協力しないといけない》(20年4月29日)と賛辞を送っている。

問題となったツイートのどこが問題なのか?

問題は、「Dappi」のどのツイートが小西、杉尾両氏の名誉を毀損したのか、である。11月8日、ジャーナリストの岩上安身氏によるインタビューのライブ配信で、小西氏はあるひとつのツイートを示しながら、「これですよ!」と明言している。

では、そのツイートとはどのようなものか。

《門田隆将「朝日や毎日は自殺した近財職員の元上司が『改竄はやるべきでないが野党から追い詰められ少しでも作業量を減らす為にやった』という音声部分はカットし事実と真逆の報道。近財職員は杉尾秀哉や小西洋之が1時間吊しあげた翌日に自殺」》と「Dappi」は門田氏の記事(要約)を紹介したうえで、《左派メディアは野党に都合が悪いことは報じない》(20年10月25日)とコメントしたものだ。

このどこが問題なのか。

「Dappi」が引用した門田氏の「新聞に喝!」(産経新聞20年10月25日)には、こう書かれている。

「平成30年3月5日、福島瑞穂氏(社民)、森裕子氏(自由)ら野党は近畿財務局に乗り込み、数時間も居座り、押し問答を続けた。また東京では翌6日、民進党の杉尾秀哉、小西洋之両氏が財務省に乗り込み、約1時間、職員をつるし上げている。当該職員(赤木俊夫氏)の自殺はその翌日の7日だった」

小西、杉尾両氏が財務省の役人を1時間吊し上げた翌日に、赤木氏が自殺したのは事実だ。
「Dappi」のツイートに問題があるとすれば、小西、杉尾両氏が赤木氏を吊るし上げ、それによって赤木氏が自殺してしまったと読める点だ。ここは反省が必要だろう。

だが、所詮「この程度」なのである。朝日をはじめとした左派メディア、野党と野党支持者による「反安倍キャンペーン」に比べれば、取るに足らない。

さらに驚くべきことは、小西氏が先のライブ配信で、産経新聞と門田氏に対しても訴訟を起こしたと明らかにしたことだ。

実は、小西氏は事あるごとに「法的措置を取る」とツイートしている。

「安倍真理教を打破」で大炎上!

2019年4月6日、小西氏は以下のようにツイート。
《Japan in depth での島田洋一福井県立大教授の「憲法改正と小西洋之参議院議員」という記事は私への悪質な誹謗中傷の名誉毀損記事だ。直ちに法的措置を取る。
安倍政権では、内閣法制局長官だけでなく公立大教授も国会議員に違法攻撃をする。本当に恐ろしい時代だ》

自身が批判されると激しく憤るのが小西氏の“習性”だが、他者を批判することはお構いなしである。

2021年5月26日、菅総理が意見交換などのため各大臣と昼食をともにしていることについて、
《あり得ない。コロナの国難にある中に、総理が日中に暇があるとは。無能だから暇だというほかはない》とツイートし、一国の総理を無能呼ばわり。

6月16日には自身の性格などについて、
《『国民の命や生活よりも選挙が大事』、『(国民の命が託されている)憲法なんか無視していい』という人格破綻者としか思えない安倍総理や菅総理と闘っているから人格が変わっているように見えるのでしょうか。。悩?》とツイート。

2018年7月7日には、
《オウム真理教では教祖が唱える荒唐無稽な教義に洗脳されたエリートらが大量殺人を犯した。
今の日本は、安倍総理が唱える「昭和47年見解の中に9条の基本論理が書かれている」という荒唐無稽な虚偽を各層エリートらが黙殺し、国民を戦争に巻き込もうとしている。
皆で、安倍真理教を打破しなければ》とツイートし、大炎上。

名誉を毀損しているのは、どうみても小西氏だろう。「国会のクイズ王」の異名を持つ小西氏は2013年3月、国会で安倍総理に次のように問いかけ、大恥をかいたこともある。
小西 高橋カズヒロさんという憲法学者をご存じですか?
安倍 存じ上げておりません。
小西 憲法を学ぶ学生なら、誰でも知っている学者ですよ!

高橋カズヒロなる学者は存在していなかった……。後日、小西氏は《高橋和之先生の名前を読み間違えたのは、直前に安倍総理が憲法学の第一人者である芦部信喜先生を「存じ上げておりません」と言ったのに驚愕したからです》と言い訳をしている。

立憲民主党議員の“体質”にうんざり

憲法51条は「両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない」と規定し、議員に対し免責特権を与えている。だから、院内の演説や質疑のなかでどのような発言をしても、名誉毀損などに問われることはない。

しかし、これは院内での発言などに対するもので、議会活動の一環とは言えないツイッターなどでの発言は当然のことだが、一般人と同じ“常識”が求められる。その常識すらかなぐり捨て、一国の総理を「無能」「人格破綻者」と罵っているのだ。

こうした傾向があるのは小西氏だけではない。

立憲民主党の石垣のりこ参議院議員は、安倍総理が健康上の問題で辞職せざるを得なかった際、《「大事な時に体を壊す癖がある危機管理能力のない人物」を総理総裁に担ぎ続けた自民党の「選任責任」は厳しく問われるべきです》とツイートしている。

「言っていいことなのか悪いことなのか」という幼児レベルの常識が欠如している。これ以上、ツイートを紹介することは止めるが、立憲民主党を中心とした野党議員のツイートには、相手に対する敬意などを決定的に欠いたものが多く、常に“上から目線”で批判するだけだ。

「モリカケ桜」を激しく追及してきた立憲民主党の辻元清美氏、黒岩宇洋氏、今井雅人氏、川内博史氏は今回の衆院選挙で落選。国民が立憲民主党議員の“体質”にうんざりしているからだ。「自民によるネット工作だ!」とキャンキャン吠える前に、わが身を振り返るのが先決だ。

(初出:月刊『Hanada』2022年1月号)

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岩瀬朗

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