産地偽装で揺らぐ食の信用…消費者、生産者、行政がすべきことは

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。2月18日(金)の放送では、特別企画「モニフラZ議会」を開催。産地偽装が続き揺らぎつつある「食の信用」について、Z世代の論客が議論しました。

◆ワカメにうなぎ、アサも…相次ぐ産地偽装問題

「鳴門産ワカメ」や「熊本産アサリ」、「国産うなぎ」など、ここのところ食の産地偽装が相次いでいます。なかでも大規模だったのが「熊本産アサリ」。農林水産庁の調査によると、全国の小売店で販売されているアサリの79.2%が熊本産ですが、昨年10月~12月の推計販売量2,485トンに対し、一昨年1年間の漁獲量は21トンと大きな差が。

そしてDNA分析の結果、販売されている熊本産のアサリのうち97%が外国産混入の可能性が高く、中国産・韓国産のものがあると見られています。ただ、生産者は「産地偽装しないと売れない」とも話しているそうです。

この問題に関して、食文化研究家で株式会社食の会 代表取締役の長内あや愛さんは、「アサリの価格は、国内産と外国産では倍以上違う。そんななかで消費者は少しでも安全・安心なものを食べたいと国産を選んでいるのに、実は97%が外国産混入というのは絶対に許されないこと」と憤りを露わに。また、飲食店を経営し、食文化研究家という立場からすると「国内産で安いというのはあり得ない」と消費者に注意を促します。

平和教育を研究する東京大学2年生の庭田杏珠さんは、「安心・安全なものを作ろうとすると価格が高くなるのはわかるが、それで産地偽装をしてしまったという背景があるので、今後は国内生産者の人たちをいかに守っていくかも考えていかなければならない」と生産者を案じます。

アフリカの紛争問題を研究する東大院生の阿部将貴さんは、「僕らが注意しなければいけないのは、どこ生まれでどこ育ちなのか」と消費者の視点を提示。さらには今後の対策として、生産から消費までの全ての行動を把握する"トレーサビリティ”制度の導入を挙げるも「その制度を導入すると、しわ寄せを食うのは店頭。防ぎたいのは生産者側の不正なのに、サプライチェーンの先が負担を強いられる状況になってしまうのではないか」と懐疑的な様子。

これに、長内さんは「最後にしわ寄せが来るというか、提供するのは我々飲食業なので、そこは自分たちも頑張らなければならないところ」と前置きしつつ、今回の熊本の件に関しては「販売量と漁獲量が大幅に違う、明らかにおかしい。まずは自治体と農水省でなぜ気づかなかったのかというところからやるべき」と行政に改善を求めます。

◆食の信用を回復するために、求められるルールの見直し

熊本県の蒲島知事は「今、熊本県産として売られているほとんどが偽装だったと思っている」と話し、すでに2月8日から2ヵ月程度、熊本産のアサリの出荷を停止。

そして、供給を止めても出回るアサリは偽装の疑いがあるとし「産地偽装100番」を開設。消費者からの情報提供を呼びかけつつ、漁業者らと共に熊本産アサリの認証制度を検討するなど、偽装を防ぐ仕組みを整える方針を示しています。

この行動に「熊本県知事は英断だったと言いたい」と長内さん。産地偽装が行われる一方で、熊本県内には偽装することなく真摯に国内産を扱っている生産者もいるため、バッシングが予想されるにも関わらず供給を止めることを決めた熊本県を高く評価。その上で「すぐに変わるのは難しいと思うものの、少し先の未来に関して、今回熊本県が声を上げたからこそ(効果がある)。(今後)私は熊本県産と書いてあるアサリを購入したい」と期待します。

熊本県では独自で体制を整えると同時に、国・農水省に対してもルールの見直しを求めています。それが「長いところルール」で、これは水産物を2ヵ所以上で生育した場合、最も生育期間の長い場所を原産地として表示するというもの。例えば、中国で1年間育てた場合、その後、熊本県で育てた期間が1年以内であれば中国産。熊本での日数が1年より1日でも長ければ熊本産となります。

アサリの場合、海外から輸入したものを国内の干潟に放って育てる「蓄養」が法律で認められ、通常長くても2週間程度で海外より長く蓄養することはまずないそう。加えて、アサリなどの貝類は大きさで蓄養期間を判断するのが難しいため書類などでの確認が必要なものの、その提出・保存はあくまで努力義務となっています。そのため熊本県はアサリをルールから除外するよう要望。なお、「長いところルール」はアサリだけでなく牛や豚、サケやマスといった水産物もその範囲内となります。

このルールを鑑み、キャスターの堀潤は「悪意にまみれた生産者という構図でもないとも実感する」と語り、仕組みや制度の曖昧さ、稼働領域の広さから解釈が難しいこと、かたや消費者は本当に全てを知る必要性があるのか、本当に国外産は危険で国内産は安全なのかなど、食の安全についてはまだまだ多くの問題があることを指摘していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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