コーチから裏方、スカウト… NPB球団で第2の人生をスタートさせた元パ選手たち

現役時代のソフトバンク・長谷川勇也【写真:藤浦一都】

日本ハム谷口は球団スタッフ、楽天下水流は2軍マネジャーに

2022年もオープン戦が始まった。新戦力や若手の台頭に期待を寄せながら、選手やコーチ陣の入れ替わりにさまざまな思いを抱くプロ野球ファンも多いだろう。そこで今回は、2021年を最後に現役を引退し、プレイヤーから立場を変えてNPB球団に残った元選手たちを紹介する。()内は現職。

○日本ハム

谷口雄也(ファイターズ スポーツ&エンターテイメント事業統轄本部)

2010年のドラフトで5位指名を受け、愛工大名電高から日本ハムへ入団。2年目の2012年に1軍に昇格し、プロ初安打・初打点を記録した。プロ初本塁打を放った2014年にはキャリアハイとなる打率.268の成績を残し、その後も1軍出場を重ねていく。

しかし、2017年に右膝の手術を行ってからは思うような成績を残すことができず、2021年限りでの現役引退を表明。10月26日に行われた本拠地最終戦に代打で出場して安打を放ち、ファンからの大声援に応えた。今後は野球の普及や指導業務のほか、2023年に開業する新球場のPR業などに携わる。

1軍通算成績:272試合140安打7本塁打42打点、打率.241

○楽天

足立祐一(スカウト部アマチュアスカウトグループ)

社会人日本代表にも選出されるなど、アマチュア時代から活躍が目立った足立は2015年、楽天から6位指名を受けてプロの世界へ足を踏み出した。ルーキーイヤーは73試合に出場し、5月22日にはプロ初安打を放っている。

2017年以降も第2、第3捕手として出場を続けていたが、2021年オフに戦力外通告を受け、2022シーズンからはアマチュアスカウトへ転身。「これからのチームを背負って立つ選手を発掘し、球団・ファンの皆さんに恩返しをしたい」と意気込みを語った。

1軍通算成績:215試合77安打5本塁打29打点、打率.195

下水流昂(広島2軍マネジャー)

2012年にドラフト4位指名を受けて広島へ入団。2018年には「2018 スカパー!ドラマティック・サヨナラ賞 年間大賞」を受賞するなど、67試合で打率.263を記録した。しかし翌2019年は出場機会を勝ち取れず、7月に交換トレードで楽天へと移籍する。

移籍初年度は50試合に出場。打率.250と上々の滑り出しを見せたが、翌年は20試合と大きく出場試合数を減らしてしまう。開幕を2軍で迎えた2021年は6試合の出場に終わり、戦力外通告を受け現役引退を表明。2軍マネジャーとして、古巣・広島に戻った。

1軍通算成績:209試合81安打12本塁打42打点、打率.237

下妻貴寛(チーム運営部チーム運営グループ・ブルペン捕手)

酒田南高から、2012年ドラフト4位で楽天に入団。2013年はフレッシュオールスターに選出された。2014年にプロ初出場を果たすと、3年後の2017年にはプロ初スタメンや初安打を記録。しかし、故障の影響で2018年からは育成選手に。

それでも2020年に支配下復帰すると、自己最多の43試合に出場。さらなる活躍を目指し1軍で開幕戦を迎えた2021年だったが、16試合の出場に終わり、オフに戦力外通告を受けた。現役引退後は、ブルペン捕手としてチームに貢献する。

1軍通算成績:72試合17安打1本塁打11打点、打率.155

西武榎田は球団スタッフ、ロッテ小窪は古巣の広島コーチに就任した

○西武

榎田大樹(ファーム・育成グループ バイオメカニクス(1軍グループ兼務)兼企画室アライアンス戦略)

2010年、東京ガスからドラフト1位で阪神に入団。2011年は新人ながらセットアッパーを任され、オールスターゲームにも出場した。左肘を痛めてからは結果を残せないシーズンが続き、2018年の開幕直前にトレードで西武へと移籍した。

移籍後は先発ローテーションの一角として11勝を挙げリーグ優勝に貢献するも、翌年以降は苦戦。2021年は二軍戦で左手に打球が直撃、骨折するという不運にも見舞われ、1軍登板はかなわなかった。引退後は球団スタッフとして、動作解析などを通じて投手のパフォーマンス向上へ貢献する。

1軍通算成績:237試合29勝25敗60H3S、523回 414奪三振 防御率4.16

駒月仁人(ファーム・育成グループ ブルペン捕手兼スコアラー)

市立塔南高から、2011年ドラフト3位で西武に入団。ルーキーイヤーの2012年から2軍で29試合に出場し、着実に出場機会を増やすと、2016年には2桁本塁打をマークした。2019年にはようやく1軍出場を勝ち取り、プロ初安打も放っている。

2020年以降、再度1軍昇格を目指したものの、声がかからないまま2021年オフに戦力外通告を受けた。10年間で得た経験を糧に、ブルペン捕手兼スコアラーとして新たな人生を歩む。

1軍通算成績:7試合1安打0本塁打0打点、打率.143

○ロッテ

南昌輝(プロスカウト兼育成担当)

県和歌山商から立正大を経て、2010年ドラフト2位でプロ入り。2016年にはチーム2位の57試合に登板するなどリリーフとして活躍していたが、2018年に黄色靱帯骨化症への罹患が判明する。

手術を経て翌年には1軍へ復帰したものの、以前のような投球は戻らなかった。そして2021年10月29日、現役引退を表明。最終登板は高濱祐仁内野手を全球直球勝負の末に空振り三振に抑え、11年間を戦い抜いたマウンドに別れを告げた。プロスカウト兼育成担当として、今後もチームに貢献し続ける。

1軍通算成績:190試合11勝8敗37H、203.1回 183奪三振 防御率3.59

小窪哲也(広島1軍内野守備走塁コーチ)

2007年大学生・社会人ドラフト3巡目で広島に入団。2016年から2年間は選手会長も務め、チームリーダーとしてリーグ連覇に貢献した。2020年オフに自由契約となると、2021年6月に九州アジアリーグ・火の国サラマンダーズへ入団。同年8月、ロッテと契約してNPB復帰を果たす。

移籍後初出場となった9月9日のオリックス戦では本塁打も放ったが、その後は6試合に出場しながら安打が生まれず。同年限りでの現役引退を決断した。引退後は1軍内野守備走塁コーチとして広島に復帰している。

1軍通算成績:712試合386安打19本塁打155打点、打率.257

松田進(プロスカウト兼育成担当)

国学院久我山高時代は同校OBである「井口資仁2世」との呼び声も高く、2年春には甲子園にも出場。卒業後は中大、Hondaを経て、2018年のドラフト7位でロッテに入団した。1年目は3試合に出場し、プロ初スタメンの試合では初安打・初打点も記録している。

2020年秋に再び1軍昇格を果たしたが、試合に出場することはなかった。3年目の2021年も1軍試合出場はなく、戦力外通告を受けて現役引退を決断。南昌輝氏と共に、プロスカウト兼育成担当への就任が発表された。

1軍通算成績:3試合1安打0本塁打1打点、打率.200

オリックス岡崎はアマチュアスカウト転身、ホークス川原は1軍スコアラーに

○オリックス

岡崎大輔(球団本部編成部アマチュアスカウトグループ)

花咲徳栄高時代は3度の甲子園出場を経験し、2016年ドラフト3位でオリックスに入団。ルーキーイヤーは代走として1軍デビューを果たすと、翌日にはスタメンに名を連ねるなど5試合に出場し、プロ初安打初打点もマークした。

しかし以降は1軍出場できず、育成選手として4年目のシーズンを迎える。2021年8月には再び支配下登録選手となったが、昇格することなく10月に戦力外通告を受けた。引退後はアマチュアスカウトに転身している。

1軍通算成績:5試合2安打1打点、打率.143

稲富宏樹(球団本部アシスタントスタッフ・ブルペン捕手)

三田松聖高時代、日光を浴びると体調が悪化する紫外線アレルギーを発症。それでも諦めずに野球に打ち込み続け、2017年にオリックスから育成ドラフト1位指名を受けた。

ルーキーイヤーはオフに「2018アジアウインターベースボールリーグ」へ参加。翌年には2軍で80試合に出場するなど経験を積んだが、2021年までの4シーズンで支配下登録を勝ち取ることができず。同年限りで現役を引退し、ブルペン捕手としてチームを支えていく。

○ソフトバンク

高谷裕亮(2軍バッテリーコーチ)

小山北桜高を卒業後、富士重工を経て白鴎大へと入学した異色の経歴の持ち主だ。2006年、大学生・社会人ドラフト3位でソフトバンクに入団すると、以降15年間にわたってチームを支え続けた。

2021年オフに戦力外通告を受けた際には、現役続行か引退かで揺れる心境を吐露しつつも、現役引退を決断。その後2軍バッテリーコーチへの就任が発表された。捕手の育成へ、その手腕を振るうこととなる。

1軍通算成績:643試合201安打10本塁打101打点、打率.194

長谷川勇也(1軍打撃コーチ)

酒田南高から専大へ進学後、2006年のドラフト5位でソフトバンクに入団。198安打を放った2013年には最多安打と首位打者のタイトルを獲得したものの、翌年に故障して以降、常に右足首の不安と戦い続けた。

2021年は代打や指名打者として70試合に出場。打率.263を記録したが、怪我の悪化を理由に現役引退を決断した。引退後は1軍打撃コーチに就任し、積み上げてきた打撃理論を伝えていく。なお、2012年から10年間背負った背番号「24」は、栗原陵矢外野手が引き継いだ。

1軍通算成績:1233試合1108安打76本塁打434打点、打率.288

川原弘之(1軍スコアラー)

2009年ドラフトで2位指名を受け、福岡大大濠高から地元球団であるソフトバンクに入団。2012年には1軍登板を経験したが、度重なる故障に悩まされた。2016年からはトミー・ジョン手術を受けた影響で3シーズンを育成選手として過ごしている。

2019年に支配下へ復帰すると、6年ぶりとなる1軍登板でプロ初ホールドを記録。2020年には22試合に登板して防御率2.00をマークしたが、2021年は3試合の登板にとどまった。今後は1軍スコアラーとしてチームに貢献していく。

1軍通算成績:47試合0勝0敗5H、50回 31奪三振 防御率2.88

吉住晴斗(球団統括本部野球振興部スタッフ)

鶴岡東高時代には2年夏に甲子園に出場。2017年のドラフト1位で福岡ソフトバンクに入団した。2020年までの3年間は三軍戦を主戦場としており、オフに育成契約を打診される。

この時点で現役引退の可能性を口にしていたが、チームメイトである石川柊太投手、ダルビッシュ有投手(現・パドレス)の支援もあり、現役続行を決めた。しかし、2021年も一軍には届かず、戦力外に。現在は球団の野球振興部スタッフに就任している。(「パ・リーグ インサイト」吉村穂乃果)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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