【津川哲夫F1新車私的解説】フェラーリのBチーム脱却へ。明確に見えたアルファロメオF1『C42』の独自性

 2月23〜25日にカタロニア・サーキットで行われた第1回プレシーズンテストでは迷彩柄をまとい、周回を重ねていたアルファロメオF1チーム・オーレンの新車『C42』。テスト終了後の27日に、ようやくオンライン上で正式発表を迎えた。

 2021年シーズンまでのアルファロメオはスクーデリア・フェラーリのBチーム的ポジションでマシン製作を行っていた。実際、パワーユニットとギヤボックス、そしてリヤサスペンションなどがフェラーリのパーツ、あるいはフェラーリと酷似した仕様だった。

アルファロメオF1の2022年型マシン『C42』

 しかし、2022年シーズンからの新レギュレーション施行に伴い、アルファロメオは独自の道を歩み出した。それは、同じフェラーリPU(パワーユニット)勢のハースのデザインオフィスがイタリアのフェラーリの本拠地マラネロに置かれたなか、アルファロメオがフェラーリのBチーム的ポジションを維持するわけにはいかなくなったという事情も無関係ではないだろう。

 そんな、フェラーリからの“独立”を図った新車『C42』は、これまで以上にアルファロメオが独自開発に踏み切った車両だと言える。

アルファロメオF1の2022年型マシン『C42』/フロント

 アルファロメオは依然としてフェラーリPUユーザーだが、『C42』のリヤサスペンションはフェラーリ『F1-75』とは異なりプッシュロッド式を選択している。これは、サスペンションパーツだけではなく、ギヤボックス・ケーシングやベルハウジングなどがアルファロメオF1独自の物になったという証だ。

『C42』はプッシュロッド式を選択したことで、ギヤボックス下部をよりコンパクトにまとめ、ベンチュリーフロア開発の自由度を広げている。また、サイドポッドも上面を後方に伸ばしてデッキを構成する点はフェラーリ的だが、サイドポッド下部に前方から後方へ深く、長く伸びるアンダーカットを設置し、フロア側面の渦流を制御している。フロアエッジをほとんど持たないフェラーリ『F1-75』とは大きくコンセプトが異なっている。

アルファロメオF1の2022年型マシン『C42』/リヤ

 バルセロナではメカニカルトラブルにより走行距離を稼げなかった『C42』。しかし、ルーキーの周冠宇がいきなり中段勢のタイム(1分21秒885/C3タイヤ)で走っており、潜在的なポテンシャルの高さを伺わせる。

 フェラーリからの脱却で独自路線に戻るアルファロメオは、『C42』とともに未知の領域での戦いに挑むことになりそうだ。

《プロフィール》津川哲夫(つがわてつお)
1949年生まれ。F1メカニックを志して1977年に単身渡英。トールマン、ハース、ベネトンなどのチームでメカニックを勤め、1990年シーズンでメカニックを引退。その後、F1中継でピットレポートやセッション解説、そして雑誌やwebメディアでメカニック経験を活かしたメカニカルな視点でF1の魅力を伝え続けている。

2022年F1バルセロナテスト3日目 周冠宇(アルファロメオ)
アルファロメオF1の2022年型マシン『C42』/上部
アルファロメオF1の2022年型マシン『C42』/フロント

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