入場から買い物まで“顔パス”、長嶋さんはデジタル化…東京ドーム大リニューアルの中身

長嶋茂雄終身監督の看板は撤去されたが、今後はデジタル広告としてビジョンに表示される【写真:荒川祐史】

メインビジョン、リボンビジョン、デジタルサイネージを連動 一体感のある演出へ

東京ドームで1988年の開場以来、過去最大のリニューアル工事が完了し、1日に報道陣向けの内覧会が開かれた。2日の西武とのオープン戦からファンにもお披露目される。外野のメインビジョンが従来の約4.4倍に拡大され、場内の全売店はキャッシュレス化。顔認証システムも導入され、洗練された“非日常”を楽しめる。昨季までと比べ、どこが変わったのだろうか? 現場からリポートする。

迫力が格段に増した。まず中堅のメインビジョンは、これまで広告看板が掲出されていた左翼席と右翼席の後方まで広がり、国内スタジアムでは最大規模の横幅約125.6メートル、面積約1050平方メートルとなった。

右翼席後方で巨人・長嶋茂雄終身監督が「セコム、してますか?」のメッセージとともに微笑みかけていた“名物看板”は撤去されたが、心配ご無用。平常時にはデジタル広告となってメインビジョンに表示される。

株式会社東京ドームの東京ドーム部企画渉外グループ長の若林聡氏は「現時点ではまだ静止画のみですが、今後、スポンサー様の看板もイニング間などに動きを出せるようになります」と明かす。“動画看板”がお目見えする日も近い。

さらに左翼と右翼の外野フェンスには、フルカラーLEDのリボンビジョンを新設。場内コンコースにも、約260台に及ぶデジタルサイネージを設置した。メインビジョン、リボンビジョン、デジタルサイネージを連動させ、特定の映像を一斉に流すことも可能。これまで以上に、球場全体で一体感のある演出が実現できる。

各入場ゲートのデザインも一新され、バックネット裏の最高ランクのシート「ダイヤモンドボックス」は従来の160席から290席に増設された。ここには、全日空で研修を受けた専属アテンダントがおり、客室乗務員経験者も一部配置される予定だとか。三塁側スタンドには、ダイヤモンドボックスに次ぐグレードの、白を基調とした4人掛けL字型ソファ席「ザ サード プラチナ ボックス」も18区画新設。ラグジュアリー感のある席が増えた。

顔認証システムも本格導入【写真:宮脇広久】

場内は「完全キャッシュレス化」一部店舗では“顔”で支払い

また、場内の全売店をはじめ、売り子による客席販売、場内チケットカウンターなどを完全キャッシュレス化。支払いはクレジットカード、Suicaやnanacoなどの電子マネーやコード決済で行われ、基本的に現金の受け渡しはなくなる。店員との接触機会が減ることによって、新型コロナウイルスの感染対策も強化され、観客の待ち時間短縮も見込まれる。

となると、キャッシュレス決済に不慣れな年配者や子どもが戸惑うのではないか、という心配も浮かぶが、前出の若林グループ長は「そういった方々のために、場内4か所にサポートデスクを設置し、お問い合わせへの対応、電子マネーの販売などを行います。電子マネーをお持ちでない方や不慣れな方でも、“ゼロ”の状態からご利用できる準備をしています」とうなずく。

顔認証システムも本格導入する。チケット購入時に顔画像とクレジットカード情報を登録しておけば、“顔パス”で入場可能。球団直営グッズショップや場内一部店舗では、顔認証と暗証番号の入力だけで支払いを行うこともできる(顔認証入場は3月25日の公式戦開幕から運用開始)。

入場ゲートのデザインから、試合中の演出方法、入場や売店での支払いシステムに至るまで、ガラリと変わった東京ドーム。開場35年目にして、新たな時代に入った。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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