【特別寄稿】c時短を活用した「ぱちんこチャンスゾーン」の考察(WEB版)/鈴木政博

2019年12月20日に警察庁生活安全局保安課長名義で「警察庁丁保発第177号」として「技術上の規格解釈基準について(通知)」が発出され、主に時短機能について大幅な緩和がなされてから2年と少しが経過し、既に「遊タイム搭載機」や「突然時短搭載機」は多数が発売されてきた。しかしここに来て新たに、「c時短」を活用した「CZ(チャンスゾーン)搭載機」が相次いで発表されている。今回はこの「ぱちんこチャンスゾーン」の仕組みについて考察してみたい。

1. 時短条件のおさらい
まずは解釈基準改正により開発が可能となっている「時短機能」についておさらいしてみたい。まずは「時短の発動条件」について。

時短の発動条件

a. 大当たり終了後に開始
b. 通常時に、大当たりが規定回数まで発生しなかった場合(規定回数は低確率の2.5倍~3倍)に開始
c. 内部通常時に、特定のハズレ図柄停止で開始

これら「a時短」は昔からあった大当たり後に発動する時短、「b時短」は遊タイムで、規定回数で発動する時短、そして「c時短」が特定のハズレで発動する時短だ。次に、時短が重複して発動した場合の規定について見てみたい。

時短が重複した場合の規定(日工組内規)

「非電サポ時」「a時短中」「b時短中」「c時短中」それぞれの状態において、新たに引いた時短については有効として差し替えるか、無視するかをあらかじめ決めておくこと

2019年末の制定当初は「後から引いた時短は無視する」「後から引いた時短と今の時短の残り回数の多い方をとる」のニ択だったものが、現在はc時短については、状態別に新しく引いた方に差し替えるか、無視するかのニ択をあらかじめ決めておく、というルールに変更されているようだ(ただしb時短は除く)。ただし、この辺りの内規は状況により変化していく部分なので、現状はこのようになっている、という状態だとご理解いただきたい。

また当初にあった「時短の性能は、先に成立した時短の性能を維持する」という規定も緩和され、新たに引いた時短性能に差し替えることができるようになった。こういった変化により、CZなど新たにゲーム性として広がっていくことは、非常に好ましい状況だといえるだろう。最後に、状態別の時短回数や性能について。

時短性能の振り分け

1. 低確時・非電サポ中(通常時)
2. 低確時・電サポ中(時短中)
3. 高確時・非電サポ中(潜伏確変時または小当たりRUSH時)
4. 高確時・電サポ中(確変中)
の4つの状態で、それぞれ違う時短終了条件や時短性能を決めておくこと

以上が、時短に関するおおまかな規定内容だ。
2. 「c時短搭載機種」について
過去にも多数「c時短搭載機」は発売されてきた。初登場は2020年7月20日導入の高尾製「P貞子3D2~呪われた12時間~」だ。こちらはヘソ回転時の282.4分の1で21回の時短に突入するc時短が搭載されていた。次に発売されたのが2020年10月5日に導入されたサンセイアールアンドディ製「P真・牙狼」。こちらは特図2にc時短があり、電サポ中に限っては「後から引いた時短は無視して重複させないタイプ」であるためc時短を引いても無効だが、電サポ終了後の特図2の残保留4回転については、電サポ中ではないので89分の1のc時短を引いた場合は有効になり、900回+遊タイム1,200回で計2,100回転の時短に突入する仕組みだった。

次に、比較的分かりやすい仕様で発売されたのがSanThree製「PAドラム海物語 IN JAPAN」だ。こちらは通常時、99.9分の1で大当たり抽選をするのに並行して163.8分の1でc時短抽選を行っており、これに当たると20回or40回の時短に突入する。遊タイムが290回到達で突入するため、時短中は玉を使わず大当たり抽選し、当たらなくても遊タイムに近づく、というゲーム性だった。

このc時短を、新しくゲーム性として組み込んだのが2021年12月6日に導入されたニューギン製「P真・花の慶次2~漆黒の衝撃~EXTRA RUSH」だ。こちらはヘソの99%が通常で40回転の時短に突入するが、特図2には73.6分の1でc時短があり、こちらは「新たに引いた時短を有効として差し替える」としているため、時短中にc時短を引くたびに50回or75回or100回or200回の時短に再突入する仕組みだ。

そして今年に入り、新たに「c時短を利用したCZ(チャンスゾーン)」搭載機が続々と発表されている。

3. 「c時短を利用したCZ(チャンスゾーン)」搭載機
初めてc時短を利用した「CZ(チャンスゾーン)」搭載機として発売されたのが、2022年2月7日から導入されている西陣(エース電研製)「P刀使ノ巫女(とじのみこ)」だ。この機種は初当たりの52%は時短250回で次回大当たり実質確定のRUSHに突入するが、残り48%は「絶対領域」と呼ばれるCZ(チャンスゾーン)に突入する。うち16%はCZ30回、32%はCZ15回だ。CZ中は左打ちで、大当たり確率は199.8分の1のままだが、このチャンスゾーン中に限り特図1で行っているc時短の抽選も有効となる。c時短は199.8分の1で、当たれば時短250回と実質大当たり確定なので、このCZ間は実質99.9分の1で大当たりするだけでなく、RUSH突入率も通常時の52%から76%にハネ上がる仕組みだ。

次に発表されたのが、2022年3月7日から導入される、同じく西陣(ソフィア製)の「PハイスクールD×D 真紅」だ。こちらは通常時に大当たりすると100%「時短4回+残保留4個」で、その突破率は約43%だが、通常時には「超絶領域」と呼ばれるCZが85.7分の1で抽選されており、それに当たると20回or30回or50回のCZに突入する。このCZ中に引いた大当たりは100%「時短30回+残保留4個」となるため、実質RUSH突入率が100%となる仕組みだ。

この他、執筆時の現時点では正式発表前だが、京楽産業.からは「ぱちんこキン肉マン3 キン肉星王位争奪戦(火事場ゴールド/友情シルバー)」の2機種が発売予定で、こちらにもCZが搭載されている。また、同じく正式発表前だが、藤商事からも「Pアレジンプレミアム」が発売予定で、こちらもCZを利用した天国モードが搭載されている。
4. 「c時短を利用したCZ(チャンスゾーン)」の仕組み
それではこの「CZ(チャンスゾーン)」の仕組みについて考えてみたい。ご想像の通り、このCZ中は、実は「時短中」だ。ただし、通常時よりも、ほんの少し「電チュー開放時間」が長かったり、若干「普通図柄停止秒数」が短いにすぎない。つまり、通常時よりも優遇された状態であり「時短中」であるのは確かなものの、実際には右打ちしても電チューが拾うことはない。したがって、左打ちせざるを得ない。この状態が「CZ(チャンスゾーン)」だ。

例えば、今度導入される西陣(ソフィア製)の「PハイスクールD×D 真紅」の特図1の振り分けは、以下のようになっている。

つまり、通常時(非電サポ時)は、ヘソの大当たりは100%「時短4回+残保留4個」だが、「超絶領域」と呼ばれるCZ(チャンスゾーン)中は、実際には電チューが全く拾わない状態ではあるが仕様上は「電サポ中」なので、この状態に大当たりすると100%「時短30回+残保留4個」になるため、RUSH突入率が100%となる。正式発表前ではあるが、京楽産業.「ぱちんこキン肉マン3 キン肉星王位争奪戦(火事場ゴールド/友情シルバー)」も同じ仕組みが採用されていると考えられる。

ちなみにこの機種の場合、CZ中に再度c時短を引いても無効だが、CZの最終回転にc時短を引いた場合のみ有効となり、CZに再突入する。これは、最終回転の変動開始後、早い段階で電サポが終了するため、実際にc時短ハズレ出目停止時には非電サポ状態、とカウントされるためだと考えられる。

では西陣(エース電研製)「P刀使ノ巫女(とじのみこ)」はどうか。こちらも同じく「絶対領域」と呼ばれるCZ(チャンスゾーン)中は、電チューが全く拾わない状態ではあるが「電サポ中」だ。したがって、以下のような振り分けになる。

この機種の場合、電サポ中も「拾わない電サポ」となるCZ突入が設定されているため、CZ中も100%RUSH突入とはならない。したがって、実際にRUSH突入後も、ヘソが回ってしまうとRUSH→CZに転落してしまう可能性がゼロではないので注意が必要だ。一方でCZ中にはc時短が有効となるため、大当たりする確率が倍増し事実上99.9分の1となる。よって「絶対領域」と呼ばれるCZ(チャンスゾーン)中は以下の振り分けになる。

なお通常時(非電サポ時)にも実際には「c時短」の抽選自体は同一の199.8分の1でなされていると推測されるが、通常時に引いたc時短は事実上、ほぼ無効と同一の仕様になっていると考えられる。

さらに、この機種の場合、CZ中に再度c時短を引いても無効だが、CZの最終回転にc時短を引いた場合のみ有効となり、CZに再突入する。これは、最終回転の変動開始後すぐに電サポが終了するため、実際にc時短ハズレ出目停止時には非電サポ状態、とカウントされるためだ。正式発表前ではあるが、藤商事から発売予定の「Pアレジンプレミアム」も、同じようなCZを利用した天国モードが搭載されていると推測される。

この「c時短」を活用した「ぱちんこチャンスゾーン」の登場によって今後、さらにゲーム性が大きく広がることが想定できる。パチスロの苦境は現在も継続中だが、ぱちんこ遊技機がより進化しファンが広がることを強く望む。

(以上)

■プロフィール
鈴木 政博
≪株式会社 遊技産業研究所 代表取締役≫立命館大学卒業後、ホール経営企業の管理部、コンサル会社へ経て2002年㈱遊技産業研究所に入社。遊技機の新機種情報収集及び分析、遊技機の開発コンサルの他、TV出演・雑誌連載など多数。

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