「まき暖房機」で燃料費軽減と脱炭素 森林資源活用、西海市がモニター事業

スナップエンドウを栽培するハウスに設置されたまき暖房機=西海市西彼町

 長崎県西海市は本年度、市内の森林資源を有効活用しようと、まきを使った暖房機のモニター事業を実施し、農家2軒がハウスに設置している。再生可能な木質バイオマスを使って、高騰が続く燃料費の削減と脱炭素社会の実現を目指す。
 同市西彼町の農業法人、アグリ未来長崎は昨年12月下旬、スナップエンドウを栽培する800平方メートルのハウスに岩手の業者が開発したまき暖房機を設置した。副場長の葉山千恵子さん(59)によると、スナップエンドウは気温が氷点下になると凍害で成長がストップする。ハウスは山あいにあり、インターネットの気象予報を調べて、夜間に気温が5度以下になる日に暖房機を点火。発生した熱を送風機を使ってハウス全体に行き渡らせる。
 一晩に使うまきは約70~100キロ。市内のチップ業者から入手したり、間伐で出た未利用材を利用したりしている。近くのミカンやブドウ農家が枝を分けてくれることも。まきの投入から燃焼確認までに30分ほどを要し、手間と時間がかかるが、朝まで十分な温度を保つ。葉山さんは「いずれは燃焼灰を土壌改良材として活用できれば」と話す。
 モニター期間は3年で燃費や効率性などを検証する。市によると、重油と比べ、燃料費で7割ほどの削減効果があるという。まきを燃やすと、二酸化炭素(CO2)が出るが、伐採地に植林するなど森林資源を適正に管理すれば、同法人のハウスでは冬期3カ月間で約8トンのCO2削減につながると、市は試算する。
 市は昨年3月、森林資源をエネルギーとして地域内で持続的に活用する「地域内エコシステム」の構想を策定。ボランティアが山に入り、森と親しみながら未利用材を回収する「木の駅」事業と併せ、仕組み作りに取り組む。
 まきを使った暖房機について、担当者は「農業用ハウス以外でも、農林漁業体験民宿や温浴施設など観光面でも活用したい」と話している。


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