2年目のTGR UKとなるSWM、ブッチャーとの契約延長を発表。WSRもエース残留が確定/BTCC

 共通ハイブリッド機構導入初年度となる2022年のBTCCイギリス・ツーリングカー選手権に向け、トヨタ、BMW、ヒュンダイ、ヴォクスホールなど各陣営の体制が続々と確定。TOYOTA GAZOO Racing UKとして2年目のシーズンを迎えるスピードワークス・モータースポーツ(SWM)は昨季加入のロリー・ブッチャーと契約を延長し、新たなエースを軸に3台体制への拡張を計画している。

 また、ファクトリー支援を受けチームBMWとして参戦する名門ウエスト・サリー・レーシング(WSR)は、不動の4冠王者コリン・ターキントンの残留を発表し、2021年はシシリー・モータースポーツの『BMW330i M-Sport』を走らせたトム・チルトンはエクセラー8への移籍を表明。これにより、ヒュンダイ陣営はトム・イングラム、ダン・ロイドの強力トリオで新シーズンに挑むこととなった。

 世界のツーリングカー・シーンをリードしてきた長い伝統を持つBTCCも、過去数シーズンに渡って入念に準備を進めてきた電動化の方針を受け、この2022年から新時代に突入する。

 2021年にファクトリー体制となったTGR陣営に加入し『トヨタ・カローラGR SPORT』で3勝を挙げたブッチャーは、SWMとの新規契約条件に合意したことで、自身のBTCCキャリアで初めてパッケージ変更なく2年目に挑むこととなった。

「チャンピオンシップ5年目のシーズンで、初めて移籍や体制変更なく新年を迎えられることをうれしく思う。同じチームとマシンで新年のグリッドに戻るのは初の体験で、その継続性はポジティブなものだ。とくに、すべての変更を伴う新しいハイブリッド時代に向かうときはね」と、意気込みを語った34歳のブッチャー。

「新しいメンバーや新しいマシンを学ぶ必要がなく、心配する要素がひとつ減ることになる。つまり、これまでに学んだことをすべてまとめて活用できるということ。昨年、カローラを完全に理解するのに少し時間がかかった事実は秘密にしない。適応事項がたくさんあったが、一度“クリック”した後はどこに行っても最速の1台だった。それが現在のモチベーションと自信に繋がっている」と、2021年は前半戦の取りこぼしを挽回し、ランキング7位に入ったブッチャー。

「クルマの可能性を最大限に引き出すため、細部に渡って煮詰める分野があるのも事実だが、利用できるデータがたくさんあり、シーズン前の開発も計画している。そうすべきでない理由はまったくないし、すべてのサーキットで勝利を狙い、僕自身最初のチャンピオンシップを勝ち獲るのが今季の目標だ」

 かつてインディペンデント系チームとして『トヨタ・アヴェンシス』を走らせていたSWMは、このオフに新たなTOCA BTCCライセンス(参戦枠)も獲得し、初めて3台でのエントリーに拡大する予定だ。

 一方、BMWのファクトリーチームとして長年3台体制を敷いてきた古豪WSRは、先にアナウンス済みのジェイク・ヒルに加え、絶対エースであるコリン・ターキントンとステファン・ジェリーの残留を発表。前人未到5冠目を狙う北アイルランド出身ドライバーは、ハイブリッド技術の導入がトラック上での新たな挑戦になることを認めつつ、レースへのアプローチは「同じままである」と語った。

2021年前半戦は新たな愛機に手を焼いたものの、後半戦で3勝を記録したロリー・ブッチャー
チーム代表のクリスチャン・ディックも「彼は非の打ちどころのない倫理を持った一流のドライバー」と全幅の信頼を寄せる
2021年には前人未到、BTCCキャリア通算100勝目を記録したコリン・ターキントンは、順当にWSR残留を発表した
これで2022年はタイトル奪還を目指すターキントンを軸に、ジェイク・ヒル、ステファン・ジェリーの3台体制に

■キャリア通算14勝を記録するチルトンはエクセラー8移籍へ

「新シーズンに向けチームBMWに戻って来られてとてもうれしい。世界のツーリングカー史上最大のメーカーであるBMWを代表し、20年前にBTCCデビューを果たして以降、すべてのタイトルをともに獲得したチームで戦えることを、心から誇りに思っている」と続けたターキントン。

「もちろん、チャンピオンシップに勝つことが目標だが、ハイブリッド・テクノロジーへの移行はさらなる課題を追加することになる。テクノロジーと重量の変化により、グリッド上のすべてのドライバーがまったく未知の難題に挑むことになるだろう」

「そのため落ち着きを保ち、すべてのポイントの機会を最大化し、信頼性を維持し、レースをうまく戦うことがより重要になる。これまで存在しなかった追い越しの機会を生み出す可能性があり、より持続可能なレースをする機会を私たちに与えてくれる。これは僕にとっても非常に重要なことだ」

 そしてBTCCでキャリア通算14勝を記録しながら、2021年は表彰台に未登壇という苦心の1年を過ごしたトム・チルトンは、エクセラー8モータースポーツに移籍して『ヒュンダイi30ファストバック Nパフォーマンス』のステアリングを握ることを決めた。

「2022年のエクセラー8と、この契約を発表することに大いに興奮している。そして、前輪駆動のツーリングカーという慣れ親しんだ環境に戻るのも楽しみだ」と語った34歳のチルトン。

「BTCCでも、それ以外のカテゴリーでも魅力的な契約条件があったが、ジャスティナ(・ウイリアムズ/エクセラー8代表)と話をし、チームが選手権での勝利についてどれほど真剣であるかがわかった」と、かつてはWTCC世界ツーリングカー選手権でも活躍し、昨季は電動ツーリングカー『ピュアETCR』初年度でヒュンダイ陣営にも所属したチルトン。

「エンジニアから舞台裏、クルマのドライバーに至るまで、適切な人材を配置するために多大な労力が費やされてきた。チームが再び前進するため、僕ら全員が協力できると思う」

「トム(・イングラム)は僕と似たドライビングスタイルで、とても速いドライバーなのは周知の事実だ。そしてダン(・ロイド)も世界戦の舞台で多くの実績を重ねた男だ。グリッド上でも最強のラインアップで、みんなと一緒に働くことを楽しみにしている」

 そのチルトンが抜けたシシリー・モータースポーツのシートには、25歳の新人ジョージ・ギャンブルが加入し、新たにハイブリッドを搭載する『BMW330e M-Sport』をドライブ。同じくダン・ロイドの抜けたヴォクスホールのファクトリーチーム、パワー・マックス・レーシングは、38歳の大ベテランでシリーズ復帰組のマイケル・クリースと契約し、ヴォクスホール・アストラBTCCの1台を託すことをアナウンスした。

 シリーズは今後、3月29日と4月6日にドニントンパークとクロフトの双方で、クローズドとなるオフシーズン合同テストを実施し、4月13日にはスラクストンで、ファンも動員する予定の最後のテスト兼お披露目会となる公式テスト“メディアデイ”を開催。そして同月4月22~24日のドニントンパークで新時代の開幕を迎える。

アダム・モーガンが勝利を挙げる一方、FR駆動のBMWに苦戦を強いられたトム・チルトン
「新しいハイブリッドに今季は皆、混乱するだろうが、ETCRで得た経験は僕らに利点を与えてくれるはず」とチルトン
チルトンの後任としてシシリー・モータースポーツに加入する25歳の新人ジョージ・ギャンブル
元Jack Sears Trophy覇者のマイケル・クリースは、パワー・マックス・レーシングからBTCC復帰を果たす

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