アイドル主演ドラマの宝庫だった「月曜ドラマランド」
現在、アラフォー以上の方ならご存知であろう。フジテレビでかつて放映されていた 『月曜ドラマランド』はアイドル主演ドラマの宝庫だった。
小泉今日子『あんみつ姫』に斉藤由貴『野球狂の詩』、浅香唯『一休さん』などなど。おニャン子クラブに至ってはちょうど人気絶頂期にあったこともあり、メンバーが主演した作品が1986年から87年にかけて約20本もある。
オープニングやエンディングテーマに使われたのは、主演アイドル自らの歌が多く、小泉今日子が役そのままの “あんみつ姫” 名義で出した「クライマックス御一緒に」は企画盤にもかかわらず大きなヒットに至っている。
小泉今日子、荻野目洋子、中山美穂がトリプル主演「藤子不二雄の夢カメラ」
『藤子不二雄の夢カメラ』は小泉今日子、荻野目洋子、中山美穂のトリプル主演という実に贅沢な布陣でおニャン子全盛期の1986年3月3日に放映された。ひな祭りということで華やかなアイドル競演が企画されたのだろう。
トリプル主演といっても3人が常に一緒に行動しているわけではなく、それぞれが主演した3話からなるオムニバスドラマ形式。それでも同級生という設定上、貴重な3ショットも見られた。現実的なことを言えば、小泉がバーニング、荻野目がライジング、中山がビッグアップルと、当時は3人が同系列の事務所に所属していたからこそ実現した競演だったのだ。
原作となった漫画はまだ「F」と「Ⓐ」に分かれる前の藤子不二雄名義で、実際は藤子・F・不二雄によるもの。だいぶアレンジされてはいるものの、不思議なカメラを提供する “ヨドバ氏” は原作にも登場する。教師役のほか、役を替えつつ3話を通じて出演しているイッセー尾形がストーリーテラーの役目を果たした。
それにしても3人がセーラー服姿で並ぶ3ショットの威力は凄い。
第1話「不思議少女・サヨコ」に主演のミポリンは、デビュー2年目、4枚目のシングル「色・ホワイトブレンド」をヒットさせていよいよ人気を急上昇させていた。
『毎度おさわがせします』や『BE-BOP-HIGHSCHOOL』の蓮っ葉なイメージから脱却してようやく柔らかな少女らしさを見せはじめていた頃。好きな男子と一緒に写真を撮ったせいでお互いの心の中が筒抜けになってしまうという話を初々しく演じている。
第2話のオギノメちゃん主演「しあわせの黒い鳥」は家族の幸福がテーマ。歌手としてソロデビューしてからは3年目だったが、幼い頃からの芸歴のおかげで演技も板についていた。7枚目のシングル「ダンシング・ヒーロー」が大ヒットして絶好調の時期にあたる。
キョンキョンは既にデビュー6年目でパイセンの風格。奇しくも荻野目の「ダンシング・ヒーロー」と同日発売(しかも同じビクターから)だった17枚目のシングル「なんてったってアイドル」をヒットさせていたから無敵である。
ミステリー色が濃い異色作だった小泉今日子出演回
そんな彼女が主演した第3話の「じゃんけんぽん」はなかなかに怖い話だった。
キョンキョンが演じているのは双子の少女。ある日、幼い頃に死に別れた妹が現れ、じゃんけんをしようと言う。昔、自分とのじゃんけんに負けてお使いに出かけたことで妹は交通事故に遭ってしまったのだ。以来、じゃんけんがトラウマになっていた姉は拒みつつも遂に応じてしまい… とあらすじを書いただけでもちょっと怖い。
これ以上書くとネタバレになってしまうが、ドラマを観た方は岸田今日子の声がトラウマになったのではなかろうか。
なお、1年後の1987年3月2日には、第2弾が、三田寛子、富田靖子、南野陽子の主演で制作されたほか、1988年には木曜19時半の東映制作枠にて、渡辺美奈代主演の連続ドラマとして全5回で放映された。
コメディタッチの楽しいドラマがほとんどだった『月曜ドラマランド』の中で、ミステリー色が濃くちょっと怖いこのシリーズは内容的には異色作だったといえる。
この後、1989年からの深夜ドラマ『奇妙な出来事』を経て、1990年に始まって現在にまで至る『世にも奇妙な物語』に大きな影響を与えたであろうことは想像に難くない。
実は怖い話もある藤子・F・不二雄作品
藤子・F・不二雄の SF短編には怖い話がたくさんある。そういえば『ドラえもん』にだって時々ゾッとするような話があるではないか。『笑ゥせぇるすまん』の藤子不二雄Ⓐ の様にストレートでない分、藤子・F・不二雄のダークサイドは闇が深い。様々な短編集が出版されているので未読の方にはお薦めしたい。
ところで自分的な『月曜ドラマランド』のイチオシは、前川清が主演した『おとぼけ駅員 キップくん』。植田まさしの四コマ漫画が原作で、これ以上ジャストなキャスティングはなかったと思う。
原作のタイトルは『キップくん』で、やはり植田の作品である『おとぼけ課長』が加味されたとおぼしいが、“おとぼけ” というキーワードからまず思い浮かべるのは間違いなく前川清であり、そこを果敢にトライしたスタッフも、またそのオファーを受けた前川もアッパレである。
ちなみに『おとぼけ課長』は現在も連載が続いており、『おとぼけ部長代理』になっていることを知ってましたか? 漫画の中で昇進するのは島耕作だけではなかったのだ。
※2018年3月3日に掲載された記事をアップデート
カタリベ: 鈴木啓之
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