小泉今日子「100%男女交際」アレンジに注目!キョンキョンの恋愛応援ソング  小泉今日子 デビュー40周年のアニバーサリー・イヤー!

同世代の気持ちを代弁した、小泉今日子「100%男女交際」

正直にお答えください。

「100%男女交際」… この曲、覚えてますか?

「タイトルは知ってるよ」という方、この曲、歌えますか?

そう、この曲は「なんてったってアイドル」の次にリリースされたのに、何故かちょっと存在感の薄い曲なのである。

その「なんてったってアイドル」は、アイドル自らが「アイドルはやめられない」と歌う、なかなかにセンセーショナルな曲だった。アイドルといえばまさに「清く正しく美しく」という存在だったわけで、あっけらかんとアイドルの本音をぶっちゃけてしまう、ともすれば単なる悪ふざけだと解釈されかねない内容だが、これが大衆にウケた。それはキョンキョンのキャラクターと見事にマッチしたからだろう。当時あれを違和感なく歌えるアイドルはキョンキョン以外にはいなかったと思う。

そして、そんなキョンキョンの代表作とも言える曲のあと、約5ヶ月ぶりにリリースされたのが「100%男女交際」である。

堂々と明るく楽しく恋愛してもいいよね!

… という同世代の気持ちをキョンキョンが代弁する。「恋愛」ではなくあえて「男女交際」というワードを使うところが巧い。

まるでミュージカル? イキの良いひたすら明るい曲で勝負!

 みんなの願いは 明るい男女交際

まるでミュージカルのオープニングのように、ドラマティックに始まったかと思うと一転、ブラスをフィーチャーしたアレンジに乗せて、アップテンポでイキの良いポップなメロディが流れていく。

 いつでもどこでも いちゃいちゃしたい

アイドルにしてはのっけから結構あけすけなフレーズ。しかしキョンキョンにもう怖いものはない。「なんてったってアイドル」が受け入れられたことで、「キョンキョンなら何を言っても大丈夫」「キョンキョンが言うなら間違いない」という下地は出来ている。

 青春は永遠ですもの
 忘れないで
 青春は永遠ですもの
 一人ぼっちじゃつまらない
 みんなの願いは1ツ
 あかるーい あかるーい
 明るい男女交際

始まりから終わりまで、賑やかなミュージカルを見ているような構成。大ヒット曲の次に勢いを持たせるには、ひたすら明るい曲で勝負しようということになったのだろうか。ハイセンスなイメージのキョンキョンにあえて「青春」「男女交際」という言葉を持ってくるのも、一種の「ひねり」だったのかもしれない。

チャートを占めたおニャン子勢、途絶えてしまった連続1位の記録

ところが、レコードセールスとしてはオリコンシングルチャート最高2位。「渚のはいから人魚」から7曲連続1位(12インチシングル除く)の記録はここでいったん止まってしまう。売上枚数も14.0万枚と「なんてったってアイドル」(28. 4万枚)のほぼ半分だ。

無理もない。この年のオリコンシングルチャート1位はほとんどおニャン子勢によって占められていたのだ。「100%男女交際」リリース前後も、新田恵利「恋のロープをほどかないで」、おニャン子クラブ「おっとCHIKAN!」、うしろゆびさされ組「象さんのすきゃんてぃ」、国生さゆり「夏を待てない」といった曲が、毎週代わる代わるオリコン1位を獲得していたのである。キョンキョンを含む、ほとんどの80年代前半デビュー組は影響を受けていたと思う。

アイドル小泉今日子の分岐点的楽曲、編曲は山川恵津子

それでも、この曲には輝かしい受賞歴があるのだ。それは「第28回日本レコード大賞 編曲賞受賞作品」である。

編曲したのは山川恵津子。八神純子のバックバンド “メルティングポット” でこの方の存在は知っていたけれど、ここでアレンジャーとして名前を見つけたときはとても嬉しかった。カラフルな音使いとオシャレなハーモナイズがこの方のアレンジの魅力。この曲でもその魅力が溢れていて、フレーズの節目に一瞬使われるコード(例えばオーギュメントとか)がスパイスになっている。全体的に「これでもか!」というくらいたくさんのキラキラした音が詰め込まれていて、“応援ソング” というコンセプトにピッタリな、とてもチアフルな印象を受ける。

山川恵津子はこの「100%男女交際」でレコード大賞編曲賞を受賞したのだ。そしてキョンキョンとしても、1983年のゴールデンアイドル賞(「艶姿ナミダ娘」)、1985年の優秀アルバム賞(「Today's Girl」)に続いて作品が評価されたことになる。

この曲の次にリリースされたのが「夜明けのMEW」で、そのあたりからだんだんと作品がアーティスティックになっていったように感じる。ということは「100%男女交際」がアイドルとしての分岐点になるのだろうか。そういう意味ではとても貴重な楽曲と言える。

ちなみにこの曲がリリースされた当時、私は男女交際からは程遠い、暗く寂しい青春を過ごしていたので、ラストのフレーズ「Hooray Hooray 青春!」をとてもいじけた気持ちで聴いていたことを思い出してしまった。まぁそれも今となっては懐かしかったりする。

ところで「100%男女交際」のジャケット写真に写っている、後ろ姿のデカい男性は一体誰なんでしょうね? 気になるなぁ(笑)。

カタリベ: 不自然なししゃも

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