【追う!マイ・カナガワ】3.11福島の今(下)神奈川県内からも被災地への声続々 地方紙連携アンケート

福島県の今について最も関心があることは?

 東日本大震災から11年を前に、神奈川新聞「追う! マイ・カナガワ」などオンデマンド調査報道(JOD)のパートナーシップに加盟する全国17地方紙が共同実施した読者アンケートには、神奈川県内からも12~83歳の男女計309人が回答した。

 「あなたが、福島県の今について最も関心があることは何ですか」との問いに、「原発事故の廃炉作業について関心がある」とした回答が134人と最も多く、次いで「地震、津波からの生活の復興状況について」(64人)「避難区域の現状について」(30人)と続いた。

◆「目を向けてほしい」

 「原発事故の廃炉作業─」を選んだ横浜市の会社員男性(42)は、「近所に福島出身の方が避難後に始めた飲食店があり足しげく通っていたが、コロナ禍で最近行けず気をもんでいる」とし、「廃炉、残留放射能の問題を解決しない事には避難者の復興、ひいては今後の国内電力の問題解決につながらない」と憤った。

 福島・浜通り出身の横須賀市の主婦(67)は風評被害に心を痛めつつ、「同級生の家も津波に流され、やっと家を建て替え頑張っています。なんとか世間が福島に目を向けてほしい」と声を上げた。

 「地震、津波からの生活復興─」を選んだ父親が福島出身の横浜市の会社員男性(57)は、「いまだに続く帰還困難区域、避難指示は解除されるめどはあるのか? 11年がたち、住民の皆さんはどのくらい帰る意思を持っているのか。帰りたいと思っていても住居は住める状態ではないはずで、今後の生活を立て直すことはできるのか」と厳しい現状をおもんぱかった。

◆「福島産買うように」

 「避難区域の現状─」とした同市の会社員女性(57)は「福島県産の食材は、買うようにしている」といい、「住民は以前住んでいた場所に帰れているのか、全く戻れないのか、あまり情報がないので気になる」と寄せた。

 「宮城や岩手の現状やその他のことなどについて、あなたが知りたいことは何ですか?」との問いには、「被災された方々の今の暮らし。何に一番困っているかや、私たちがサポートできることは何かを知りたい」(同市の45歳会社員女性)などと声があった。

◆原発の現状追認は問題

 明治大の勝田忠広教授(原子力政策)の話 今後の原発政策について「積極的な脱原発」を望む回答が減っている。全国で再稼働が徐々に進む一方で、政府は原発活用について本格的な議論を避け続けている。既成事実が積み重なり、現状を追認する国民が増えていくのは良い状態ではない。「分からない」との回答増も気になる。気候変動対策で原発を活用すべきか悩む人が多いのかもしれない。大事故が発生しない限り、今後もこの傾向が続くのではないかと心配している。

 一方、福島について最も知りたいことが「原発の廃炉作業」だった。これは逆に、メディアからの発信が減ってきていることも影響していないだろうか。メディアがそれに応えていくことで、原発政策に対する議論も活性化できるはずだ。

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