みんなもう始めてる? サステナブルな生活のススメ

パンデミック以降、環境問題に警鐘を鳴らす動きが加速している。日常生活からサステナブルなアクションを起こそうとしている人も増え、人々の意識はますます高まっているようだ。今号では日頃から取り入れられるサステナブルな生活のヒントを紹介する。(取材・文/菅礼子)


プロに直撃!サステナブルな生活を

取り入れるには?

サステナブル(持続可能)な生活を心掛けることは現代社会、とりわけパンデミック以降の生活では意識せざるを得ないほど、社会の声が高まってきている。あらゆる面で世界の最先端を走るニューヨークではどんな試みが行われているのだろう? そして、私たち生活者が日々取り入れられるアクションは?

ニューヨークを拠点にサステナブルコンサルタントとして活躍する田原美穂さんに話を聞いた。

――私たちが取り入れられるNYのサステナブルなアクションは?

アメリカでは多くの企業が私たちのライフスタイルをサステナブルなものにしようという取り組みをしています。1月にはスターバックスが「ミートレスマンデー」キャンペーンで、プラントベースの「インポッシブルサンドイッチ」を2ドル安くしたり、ファッションブランドの「リフォーメーション」はブランドサイトを通じて自宅の電気を風力発電に切り替えることで、ストアクレジット100ドルがもらえるというキャンペーンを提供していたり。消費者がトライしやすい試みを企業が提案することが増えています。ニューヨーク市でも数年前から病院の食事や学校の給食でミートレスにしようという動きが始まっています。

スターバックスが販売する「インポッシブルサンドイッチ」

――ごみやリサイクルの取り組みについては?

GrowNYCという非営利団体が提供しているコンポストがマディソン・スクエア・パークやユニオンスクエアのファーマーズマーケットに置いてあるので、野菜を買いに行く時にごみを捨てることができます。ニューヨーカーが出すごみの3分の1が食料廃棄物などの土に還るごみだといいますし、皆さんもすぐにトライできると思います。

リサイクルも多くのブランド店で引き取りをしていたり、多くのリサイクル専門店があると思います。ただ、リサイクルに出した商品がその後きちんとリサイクルされているのかを調べないと、場所によってはそのまま捨ててしまっていたり、結局ごみを増やすことにつながってしまうので、確認が必要です。最近では下着を回収しリサイクルしたり、化粧品の容器をリサイクルするブランドなども出てきています。

ファーマーズマーケットなどの一角で見られるGrowNYCのコンポスト

――ご自身が日々、実践されているアクションは?

洋服はできるだけ買わず、買う時はサステナブルなものを厳選しています。現在は「レント・ザ・ランウェー」で毎月洋服を8着借りています。あとは買ったものをそのまま捨てないようにしています。最近、15年使った炊飯器を売りました。売れたらお金にもなるし、買い手に使ってもらえる。買って終わりではなく、車のように資産化して誰かに売ることがもっと広がっていくと思います。

キッチン周りではプラスチックのラップは使わず、蜜蝋(みつろう)ラップを使用したり、コンテナを使ったり。小さな心掛けから始めるのが良いです。ミールキットもオーダーしていますが、いろいろなブランドを厳選し、パッケージや企業がどういったサステナブルな取り組みをしているかなどを見極めて、一番気に入ったものをオーダーしています。日々の生活のことなので、ストレスを溜めずにできることから始めることが重要だと思います。

●お話を聞いた人●

田原美穂さん

金融業界からキャリアをスタート。
その後、MBAを取得し、日本を拠点に「コーチ」や「H&M」など、マーケティングや戦略に携わる。
現在は独立し、ニューヨークを拠点にサステナブルコンサルタントとして活躍。
@mihoping

コンポスト&リサイクルに挑戦!

身近なところからサステナブルなアクションを起こせることは分かった。そこで今回、弊紙ライターが実際にトライ。その様子をレポートする。


コンポスト

今回は初のトライということでコンポスト用の容器は購入せず。毎朝コールドプレスジュースを飲んでおり、フルーツや野菜のごみが出るのでこちらをコンポスト用にキープ。

「Compost NYC」で検索するとNYCのホームページがトップに出てきたため、NYC.govのウェブサイトよりコンポストの設置場所を確認。意外にも自宅から徒歩1分の場所にコンポストが設置されていることに気付く。ごみ箱の横に並んでいたものの、注意深く見ていないせいか、普段は気付かなかった!

QRコードからアプリをダウンロード。このアプリがないとコンポストをオープンすることはできない

ダウンロードしたアプリがこちら。トレーサビリティーを意識し、捨てたごみに対するフィードバックを受け取ることもできる。

実際に使ってみての感想は、いつもは捨てている生ごみがきちんと土の肥料になるためのアクションが簡単にできるため、やってみる価値あり。反省点としては、やはり匂いが出てしまうので、ふた付きの容器、またはコンポスト用の容器を購入することをおすすめする。


リサイクル

今回リサイクルできるショップとして訪れた「パレード」は、環境に配慮したものづくりとダイバーシティーで注目されている下着ブランドだ。ビジュアルやお店のデザイン、ブランディングまで、パワーがみなぎり多様性を感じさせるブランド。現在はソーホーに店舗を構えている。

ちなみに同ブランドの下着は、地球に優しい繊維素材の証であるエコテックス認定の素材を使用している。超軽量の糸を使用したクールタッチな触り心地で、360度全方位ストレッチが効いている。触っただけで履いた時の快適さが想像でき、デザインがカラフルなので身に着けただけでテンションが上がりそうだ。

そんな店内の一番奥に、リサイクルボックスが設置されている。このリサイクルプロジェクトはアメリカのみで展開。リサイクルすると新しい下着を20%OFFで購入できる。どんなブランドの商品でもリサイクルが可能だが、水着やブラレットは不可。店頭に行かずともオンラインで無料キットを注文し、チェックアウト時に「Free Second Life Shipping」を選択することで利用できる。1回の注文につき3枚まで、きれいな古い下着を入れた袋を返送し、完了!


自宅でできる、コンポスト一覧

市販のコンポストを買えば自宅でも簡単にコンポスト化することができる。ごみも減って環境に優しい。どんな商品があるかチェック!

Simplehuman

Photo by Simplehuman

ステンレス製で生ごみなどを溜めても匂いを抑えることができる。ソフトシールのふたは生ごみの匂いを呼吸でき、害虫を防ぐ優れもの。バクテリア、菌類、カビの繁殖を抑制することができる安心仕様となっている。

Compost Caddy $50
simplehuman.com


Bamboozle

小型の可愛らしい見た目のコンポスト。フィルター付きのふたはガスと匂いの吸収に役立つので、生ごみを保管するのに最適な商品。食洗機でも使用できるため、清潔に使用を継続できる。小さく、取っ手が付いているので持ち運びも便利。

Composter $50
bamboozlehome.com


Joseph Joseph

Photo by Joseph Joseph

スリム型のコンポストは収納にも便利で初心者にもトライしやすい。開口部が広いので、皿に残った生ごみも簡単に捨てることができる。湿気と匂いを抑えてくれるので虫も寄り付きにくい。食器棚の中にも収まる。

Compo 4L Food Waste Caddy $20
us.josephjoseph.com


まだまだある!リサイクルで地球に優しく手持ちの服に第二の人生を

多くのブランドでリサイクルが行われている。不要になった服が次の人の手に渡る手助けをしよう。

Goodwill NYNJ Store & Donation Center

障害者やホームレスなど社会的弱者に職業訓練や雇用サービスを提供する目的で、巨大リサイクルドネーションセンターとして全米展開している非営利団体。お店に不要となった洋服や雑貨を持ち込めるので、ただ単に処分する前に寄付をすることができる。

7 W. 14th St./TEL: 212-206-1619


H&M

「H&M」が展開する古着回収プログラム「ガーメントコレクティング」は2013年よりスタート。店舗にリサイクルボックスを設置し、レジで古着を渡すと感謝チケットがもらえる。「H&M」以外のブランドも持ち込み可能なのがうれしい。

hm.com


GrowNYC

ニューヨーク市が運営する「ゼロ・ウェイスト・プログラム」では、衣類、ペアの靴、リネン類、ハンドバッグ、ベルト、その他、繊維製品の回収が可能だ。回収された後、再利用可能なものは服に、難しいものは雑巾にされる。回収場所はホームページより確認。

grownyc.org

プラントベース食品をチェック

買わない、消費を減らすこともサステナブルな行動だが、日々の食材を賢く選ぶことも地球に優しいアクションの一つといえるだろう。


肉食が地球に与える負荷が大きいことは、近年周知の事実となっている。畜産の際に伐採される森林、飼育の際に消費される大量の水の問題、家畜から出される二酸化炭素は深刻な地球温暖化の原因になっている。

そうした理由から最近では肉食を減らす動きが活発化している。臨機応変に肉食を減らすことで食肉製品の生産を減らし、地球温暖化を食い止めようという動きは、日々の心掛けで行えるアクションだ。

こうした動きがある中で、プラントベース(植物由来)の代替肉市場も拡大している。「ビヨンドミート」や「インポッシブルフーズ」が有名だが、最近は多くのブランドがこの市場に参入している。見た目からは気が付かない精巧な見た目の肉は、大豆などの植物由来から作られたものだ。今ではパテだけでなく、鶏や魚、「ジャストエッグ」のように卵までも植物由来でできている。

肉とは違う、プラントベースの良さ

実際に食べてみると、生肉のような動物特有の脂の感じはなく、サラリと食べられる。味はブランドにより、生肉に近いものからそうでないものまでさまざまだ。ただ、食後にお腹が軽く、体が楽な感じがする。そこが植物由来の特徴なんだと実感する食べ応えだ。肉を食べるのをやめる必要はない。生肉でしか味わえない肉の魅力はもちろんあるからだ。健康のために、地球環境のために、気分に合わせてプラントベースの食品を取り入れてみるという選択もあると心得よう。


Beyond Meat

Photo by Beyond Meat

えんどう豆ベースのイタリアンスタイルの代替肉ミートボール。チーズやスパイスを配合し、風味豊かな仕上がりになっている。パスタにも最適。

Beyond Meatballs
beyondmeat.com


Impossible Foods

Photo by Impossible Foods

代替肉のパテはさまざまなメニューに使うことができる。ウェブサイトには牛肉と比較し、どれだけヘルシーか、生産過程でどれだけ地球に配慮されているかが記されている。

Impossible Burger
impossiblefoods.com


Field Roast

Photo by Field Roast

セージ&ガーリックで味付けされた植物由来のローストも登場。特別な日の食卓を彩る豪華なローストにもヘルシーな選択肢が加わった。玉ネギやバターナッツスクウォッシュ、レンズ豆などで作られている。

Sage & Garlic Plant-Based Celebration Roast
fieldroast.com


Morning Star Farms

Photo by Morning Star Farms

大豆由来の代替肉ナゲット。オーブンやマイクロウェーブで簡単に調理でき、表面のサクサク感が好評だ。従来のチキンナゲットに比べ、脂質を約49%カット。罪悪感も減りそうだ。

Veggie BBQ Chik’n Nuggets
morningstarfarms.com


Just Egg

植物由来の卵は、いわゆる卵を割ってかき混ぜたような状態の液状で販売されている。緑豆を主原料に作られ、味わいは本物の卵に近い。ターメリックなどスパイスが程よく効いて食べやすい。

Just Egg
ju.st


Gardein

Photo by Gardein

オメガ3配合のフィッシュフィレももちろん植物由来。大豆由来で作られたプロテインを9g配合。見た目からは植物由来と分からない完成度の高さとなっている。

f’sh filets
gardein.com


お買い物や外食もエコなショップへGO!

ニューヨークはサステナブルを意識したお店が多い。各ショップが理念を持ってサステナブルな取り組みをしているため、共感できるショップで買い物をするのもおもしろい。

PACKAGE FREE

できる限りパッケージのないものを販売し、パッケージがあってもプラスティック不使用のものを厳選。店内にはリフィルができる液状せっけんなども売られており、小さな心掛けでごみを減らす努力を問いかけている。セレクトしたブランドだけでなく、オリジナル商品も扱う。

25 Bond St./support@packagefreeshop.com
packagefreeshop.com


PANGAIA

科学者集団がサステナブルな独自の素材開発を行っているのが「パンガイア」だ。植物や果物から作られた糸を使用し、野花の繊維を使用したダウンなど、さまざまな自然素材を使っている。ECがメインだが、現在マンハッタン57丁目をはじめとする「ノードストローム」13店でポップアップショップを5月まで開催中。

pangaia.com


ROSELLA

地元の魚にフォーカスし、持続可能な方法で養殖されたものや環境負荷を最低限にした捕獲法で捕られた天然物の多くを取り扱うレストラン。珊瑚礁にダメージを与える捕獲は避け、内陸の養殖場から仕入れ、再循環型養殖システムを採用している。

137 Ave. A/TEL: 646-422-7729
rosellanyc.com

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