3年で戦力外→決意の野手転向で「幸せ」 思い悩んだDeNA21歳が見つけた“答え”

DeNA・勝又温史【写真:小谷真弥】

昨年限りで3年間の投手生活に区切りを付け、野手として育成契約

今季から野手に転向した横浜DeNAベイスターズの勝又温史外野手。投手として入団し3年を終えた昨季限りで戦力外となり、野手の育成選手として再スタートを切った。沖縄・嘉手納で行われた2月の春季キャンプでは朝から晩まで練習に明け暮れた21歳が「Full-Count」のオンラインインタビューに応じ、現在の心境を明かした。

「今、凄く楽しいです。徐々にできるようになっていることが増えて……。ずっと練習できて幸せでした」

画面越しでも、その表情からは充実感が伝わってきた。初めて野手として過ごしたキャンプ。毎日、球場を去るのは午後6時15分の最後のバスだった。守備、打撃、走塁……。学ぶことばかりの日々に「あっという間です。すぐ1日が終わっちゃいました」と言った。

昨秋のフェニックス・リーグで初めて野手として出場した。外野の守備に就くと「自分がいかに素人か分かる状況だった」と振り返る。今キャンプでは、打球の追い方、ゴロの捕り方など一から叩き込んだ。日大鶴ケ丘時代に最速152キロを誇った投手だっただけに、肩の強さを生かした動きも身についてきた。

2018年ドラフト4位で入団。将来を嘱望されていた右腕は、すぐに壁にぶつかった。「フォームのことで……。うまく結果に結びつかなかったです」。土台作りから始まったプロ生活だったがすぐにフォームを見失い、制球に苦しんだ。2年目に入るころには、大好きだったはずの野球を「嫌だなって、そう感じてしまっていました」というほど思い悩んでいた。

投手時代のDeNA・勝又温史【写真:小谷真弥】

目標はあえて“支配下”ではなく「1年間野球を最後まで楽しむ」

苦しみを経て、投手にけじめを付けた今は「本当に心から野球を楽しんでいる気持ちを久しぶりに感じられています」と幸せを噛みしめる。野球を始めた少年時代から、勝又の一番のモチベーションは楽しむことだった。その気持ちを取り戻し「下手くそなんで、ちょっとのことでも出来ると褒められて気持ちよく野球ができているってのもありますね」と笑った。

3年間、入寮の際に持参して話題になったウクレレは今キャンプにも持参した。コードがあれば何の曲でも弾けるほどの腕前だが、宿舎の部屋がコーチ陣の近くだったため「こっそりしか弾けなくて」と苦笑い。イレギュラーはあったものの、オンオフの切り替えもバッチリだった。

背番号は3桁の「028」。当然、まずは支配下登録を目指すことになるが、あえてそこに目標を置くことはしない。

「シーズンが終わったとき、自分にこの1年間野球を最後まで楽しめたか聞いて、楽しめたといえることが目標です。結果を残さないといけないのでそこを追うのはもちろんですが、今できる野球を毎日全力で楽しんでやっていきたいです」

野球ができる喜び、野球の楽しさを全力で受け止めながら、勝又が2度目の“ルーキーイヤー”を進んでいく。(町田利衣 / Rie Machida)

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