加藤健一事務所公演『サンシャイン・ボーイズ』加藤健一&佐藤B作、哀愁とシニカルさと温かさを感じる,犬猿の仲の往年の名コンビ。

ニール・サイモンの傑作戯曲『サンシャイン・ボーイズ』が開幕した。本来は2020年に上演するはずだったのが、コロナ禍により中止に。そして満を辞しての公演となる。
ホテルの一室に住んでいるウィリー・クラーク(加藤健一)、昔は一世を風靡したヴォードヴィルの大スターだったが、仕事がない。しかし、自分はまだまだやれると思っている。テレビを観ている毎日。そんな時にマネージャーで甥のベン・シルバーマン(佐川和正)が仕事をとってきた。

一瞬、前のめりになるクラークだったが、内容をみて企画書を放り投げる!その内容は、元相棒のアル・ルイス(佐藤B作)との往年の名コンビ”サンシャイン・ボーイズ”の名作コントを、というもの。名コンビの復活!!といきたいところだが、とにかくクラークは不機嫌。困ったマネージャー・シルバーマン。だが、なんとかしたい!そこへ!やってきたのはその犬猿の仲の相方・アル・ルイスだった。
とにかく、細かいやり取りがいちいちおかしく、客席からは頻繁に笑いが起こる。クラークvsシルバーマン、クラークは絶対に折れないことを知ってるシルバーマン、叔父であり、大スターであるクラークと丁々発止のやりとり、そして、どうにかルイスを連れてきて、ようやくその気にさせる手腕はマネージャーの鏡(笑)。また、クラークとルイスが久しぶりに会うところ、背中合わせに座ったり、握手も一瞬だったり。部屋には二人の全盛時代の写真が飾ってあり、クラークの想いをそこで感じ取ることができる。

ルイスも御多分に洩れず、写真を見つけて一瞬、過去に思いを馳せた様子。それにしても意地っ張りな2人、「稽古しよう」「嫌なのは本番だけだ」「稽古しよう」と言い、稽古のために家具を移動させるが、ここでも一悶着。稽古もいちいち、あーだこーだとはかどらない(笑)。そこから2幕は一転してテレビ局のセット。どうやらここまで漕ぎ着けたのだな、とわかる。コントの看護婦、コントの患者、これが、抱腹絶倒で対するクラークも”変なお医者さん”ぶり、出てきただけで可笑しい。ADのエディ(加藤義宗)が淡々と表情一つ変えず仕事、このコントラストも可笑しさを誘う。空気が温まったところで、ルイス登場、いかにも『ズラです』なカツラがインパクト大。いわゆる劇中劇になるのだが、コントだけでも成立しそうな。当然、すったもんだになり、うまくいかない。ルイスはプイっと帰ってしまい、ここでクラークが感情が昂って…。

登場人物たちが皆、どこか可笑しみと愛らしさがあり、田中利花演じる看護師・オニールは一応、クラークの世話はしてるが、チョコレートをポリポリしながらテレビ観てたり。加藤健一&佐藤B作のコンビ、今、『サンシャイン・ボーイズ』をやるなら、他に誰がいるのだろうかと思うくらいにハマっており、挙動、やりとりに味があって、それでいて笑えるが、哀愁も漂う。歳をとって体は以前のように動かない。杖をつくルイス、足取りがややおぼつかないクラーク。マネージャー役の佐川和正、翻弄されるだけでなく、芯が強く、往年のコンビ復活を願う役どころ、軽快さを漂わせながら熱演。配役の妙というのだろうか、コンビネーションもよく、難しいことを考えないで観れる作品。ラストは少し切なさもあり、その後の二人もなんとなく予感させる。最後の場面、二人の表情がどこか穏やか。ニール・サイモンの戯曲らしい、優しさとウイットとそれからちょっぴりシニカルさも漂わせた作品。有名すぎるのでオチも展開もわかっていても観たくなる。

<ストーリー>
元はヴォードヴィルの大スターコンビであったウィリー・クラーク(加藤健一)は、ひとりとなった今でも役者としての自分は終わっていない と必死にもがくものの、なにもかもが上手くいかず仕事にありつけない。ある日突然、TV出演の大仕事が舞い込んできたが、 その条件は元相棒アル・ルイス(佐藤B作)との“サンシャイン・ボーイズ”による往年の名作コントだと聞いて出演拒否の一点張り! 喜劇の黄金時代が生んだ史上最高のコンビとまで言われたルイス&クラーク、11年ぶりの名コンビ復活となるのか!? ラストショーの最後に待ち受けるふたりの運命は…?

◆加藤健一事務所でのニール・サイモン作品上演歴
・1988 年、92 年 『第二章』(Chapter Two)
・1989 年、91 年 『おかしな二人』(The Odd Couple)
・1999 年、01 年 『銀幕の向うに』(I Ought To Be In Pictures)
・1999 年 『おお、星条旗娘!』(The Star-Spangled Girl)
・2014 年『ブロードウェイから 45 秒』(45 Seconds From Broadway)※日本初演

<公演概要>
日程・会場:2022年3月3日〜3月14日 本多劇場
地方公演:3/26・27 能登公演、 5/3・4 京都公演、 5/7 兵庫公演、5/14 所沢公演 詳細HP
作:ニール・サイモン
訳:小田島恒志 小田島則子
演出:堤 泰之
出演:
加藤健一 佐藤B作
佐川和正(文学座) 、田中利花
照屋実 加藤義宗
韓佑華
〈声の出演〉 清水明彦(文学座)、加藤忍

<次回公演>
加藤健一、再び一人芝居にチャレンジ。

公式HP:http://katoken.la.coocan.jp
公式ツイッター:https://twitter.com/katoken1980
舞台撮影:石川 純

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