アロマスプレー「長崎旅香」完成 町並みと歴史、香りで表現 「魅力と癒やし感じて」

「長崎の魅力と癒やしを感じてほしい」と話す稲田さん(右)と浦山さん=長崎新聞社

 長崎市中心部の五つの地区の町並みや歴史を精油の香りで表現したアロマスプレー「長崎旅香(りょこう)」が完成した。制作したのは、ブランディングデザイナーの稲田勝次郎さん(32)=同市=とアロマ空間コンサルタントの浦山純菜さん(32)=諫早市=の2人組。今春から長崎市内の土産店で販売予定で「『感性に触れる身近な旅』がコンセプト。心を癒やしながら長崎の良さを感じてほしい」と話す。
 長崎旅香は▽新大工「おたくさ」▽中島川・寺町・丸山「東洋薫香」▽浜町・銅座「ハレのまち」▽新地・館内「茉莉花」▽東山手・南山手「異国風雅」-の5種類。各地区の歴史や特徴を踏まえた物語を作り、2人で町を歩きながら心に響く場所を選出。その場所に関連する6種類の精油を調合した。
 例えば「東洋薫香」では、中島川に並ぶ石橋や周辺の寺社、丸山地区の華やかな梅の花が織りなす物語を考案。インゲン豆などを伝えた隠元禅師ゆかりの興福寺を表現するためにトンカビーンズの精油を、梅園天満宮の梅の花をイメージしてジャスミンの精油を選ぶなど、神聖さを感じながらもまどろむような調和が取れた香りに仕上げた。
 稲田さんは長崎市の元職員。東京でシティプロモーション業務に携わる中、多くの地方都市が地元の魅力の表現の仕方でつまずいているのを見てきた。他都市との違いを明確に打ち出し、訪れる人に満足して帰ってもらうには、地域の良さの整理とデザインやアートの力による表現が必要-。そんな思いで勉強を始め、昨年1月に地方創生専門のデザイン事務所「REGIONAL ARKHE(リージョナル・アルケー)」を立ち上げた。
 長崎に人を呼ぶための「ブランド」づくりを始めようとした矢先、共通の知人を介して浦山さんと出会った。北海道出身の浦山さんは2019年に結婚を機に東京から長崎市に移住し、普段の暮らしに生かせるアロマセラピーのイベントを開くなどしていた。

全5種類の「長崎旅香」。左から「おたくさ」「東洋薫香」「ハレのまち」「茉莉花」「異国風雅」

 魅力あるまちづくりで意気投合した2人は五感で旅を楽しむ仕組みとして昨年4月、長崎旅香の開発を始め、試作を重ねてきた。ボトルにはQRコードも印刷。香りで表現した場所の観光ガイドを聞けるようにした。「まさにお土産付きツアー。1本あれば自分で町歩きが楽しめ、訪れた後も香りと共に思い出を楽しめる。リピーター確保にもつながる」と稲田さんは強調する。
 今月20日には5種類の香りと関連する空間展示が体験できる「長崎旅香展」を南山手町の南山手地区町並み保存センターなどで開く。稲田さんは「感性に触れる機会を増やし、長崎を豊かな町にしたい」と話す。
 長崎旅香は1本2200円。今月開業する尾上町の「長崎街道かもめ市場」内の土産店「すみや」で4月1日から販売予定で、取扱店は今後も募る。「REGIONAL ARKHE」の公式オンラインストアでも予約できる。問い合わせは「こころとアロマ」(電080.5584.7287)。


© 株式会社長崎新聞社