うつ病で働けなくなったときの生活はどうなるの?傷病手当金と就業不能保険

「こころの病気で出社できなくなった」などという話を聞くことがよくあります。

厚生労働省が3年ごとに調査している「患者調査」によると、うつ病などの気分障害の患者数は1996年には43.3万人だったのが、127.6万人と3倍近くなっています。さらにコロナ禍で「こころの病気」が増加しているといわれています。

知り合いでも、コロナ禍でうつ病を発症して大学を休学しています。また、うつ病になって出社できなくなった人もいます。コロナ禍で、自宅でのリモートが続いて、コミュニケーションが取れていないなど「こころの不安」を抱えた人が多くなっています。

では、働けなくなったときの生活費は?そして家族の生活?はいったいどうなってしまうのでしょうか。今回は、働けなくなった時のお金の話をしましょう。


働けなくなったとき生活はどうなるのか?

たとえば死亡した場合には、遺族基礎年金や遺族厚生年金を受け取ることができます。また死亡保険に入っていれば、保険金を受け取ることができます。住宅ローンを組んでいる人は、団体信用保険に加入しているので、死亡した場合には住宅ローンは完済します。

でも、死亡したわけではなく、病気やケガで働けなくなった場合の保障は、どうなるのでしょうか?

生きているのですから、生活費もかかります。家族や子どもがいる場合には、家族の生活費、教育費も必要になります。働けなくなるというのは、意外とリスクが高いのです。

しかし、会社員・公務員の場合は、傷病手当金があります。

会社員などには傷病手当金がある

傷病手当金とは、病気やケガで会社を休んだときに会社などの健康保険から受け取れる制度です。

具体的には、連続する3日間(待期)を含み4日以上仕事に就けなかったときに、支給されます。この連続する3日間というのは待期期間で土・日・祝日も含まれます。

支給される期間は、1年6ヵ月です。2022年1月に改正されて1年6ヵ月の通算に変わりました。途中で出勤した場合はその日数は含まれません。ただし2020年7月1日以前に支給が開始されている場合には、通算ではなく1年6ヵ月の間になります。

支給される傷病手当金の金額は、給与の3分の2の金額を受け取ることができます。この計算は、給与の標準月額の平均を30日で割った金額の3分の2が1日分の金額です。

標準月額が30万円だとすると1日1万円ですので、3分の2だと6,667円ということになります。

6,667円×休んだ日数になります。

なんとか、これで生活はできそうです。ただし住宅ローンなどを抱えていてキツキツの家計だと3分の1の収入減になるのでかなり厳しくはなります。その場合には生命保険の就業不能保険を検討してみてもいいでしょう。

この傷病手当金は、1年6ヵ月しか受け取れないのですが、それ以上に長引いた場合、国民年金の障害等級に該当すれば、障害年金を受け取ることができます。

精神及び行動の障害が約3割

協会けんぽのデータですが、傷病手当金の疾病別の割合を見ると「精神及び行動の障害」が3割を占めています。ついで多いのが2割の新生物です。この新生物というのは「がん」のことです。がん患者の場合には、がん治療のために働けなくなることが多くあります。

年齢別・疾病別の構成割合をみると、若い人ほど「精神及び行動の障害」が多く、年齢を上がると「新生物(がん)」の割合が多くなるのがわかります。

自営業者・フリーランスは、就業不能保険で備える

会社員・公務員の場合は、傷病手当金があると説明をしました。それでは自営業者・フリーランスの場合には、何があるのか?ですが、じつはとくにありません。

ですので、自分で備えることが必要になってきます。たとえば生命保険の就業不能保険を利用するのがいいでしょう。現在発売されている就業不能保険には、多くは精神疾患の保障を付けることができます(一部精神疾患の保障がない保険もあります)。

就業不能保険の給付の条件は、働けなくなった状態が続いた場合です。さて「働けない状態」とは、どういう状態か?というと、各社で異なっています。国民年金の定める障害等級1級、または2級に認定されたとき、また入院をしているとき、医師の指示に基づき自宅で療養をしているとき……とさまざまです。

しかし、給付金は、すぐに受け取れるのではなく、働けなくなってから60日や180日など、支払い対象外になる期間があります。条件をよく確認して検討してみてください。

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