相続における義父とお嫁さんの関係、相続人に当たらず「特別縁故者」 元アイドルの弁護士が解説

相続には「特別縁故者」という制度があります。相続人が1人もいない方がお亡くなりになった場合、その方(被相続人)が残した財産は、最終的には国庫に帰属します。

しかしながら、相続人ではなくとも、その方が亡くなるまでの数年間、生活を共にし、精一杯介護に努めた方がいるとします。典型例は義父とお嫁さんの関係ですね。例えばお嫁さんの旦那さん、つまり義理のお父さんの一人息子さんは早くにお亡くなりになっていて、義理のお母さんも先立った。しかし、お嫁さんはずっと義理のお父さんと同居し、何十年も面倒を見てきた。ほとんど本当の父娘のような関係ですが、このケースでは、お嫁さんは義理のお父さんの相続人にはあたりませんから、遺産はすべて国のものになるのが原則です。仮に同居していた家が義理のお父さん名義なら、お嫁さんは出ていかなければならないことにもなりそうです。

しかし、この原則を貫くことにほとんどの方は違和感を覚えるでしょう。そこで法律は「特別縁故者への分与」という制度を用意しています。家庭裁判所は、相当と認められるときには、(1)被相続人と生計を同じくしていた者、(2)被相続人の療養看護に務めた者、(3)その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後に残存する相続財産の全部または一部を与えることができるとされています(民法958条の3第1項)。

具体例としては、(1)内縁関係や養子縁組をしていない連れ子関係で、(2)は先ほどのべた義父とお嫁さんの例のほか、長らく介護をしてきた近所の親しい人が認められた例もあります。さらに、(3)の類型では、地方公共団体や学校法人などの法人・団体もその対象となり得るとされています。

最後にこの「特別縁故者の分与」に関する申立手続は、家庭裁判所に被相続人の遺産を管理する「相続財産管理人」の選任を申し立てるなど、それなりに手順を踏まなければなりませんので、ぜひお近くの専門家にご相談ください。

次回からは改正された相続法について解説していきます!

◆平松まゆき 弁護士。大分県別府市出身。12歳のころ「東ハトオールレーズンプリンセスコンテスト」でグランプリを獲得し芸能界入り。17歳の時に「たかが恋よされど恋ね」で歌手デビュー。「世界ふしぎ発見!」のエンディング曲に。20歳で立教大学に入学。芸能活動をやめる。卒業後は一般企業に就職。名古屋大学法科大学院入学。15年司法試験合格。17年大分市で平松法律事務所開設。ハンセン病元患者家族国家賠償訴訟の原告弁護団の1人。

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