子どもたちの社会課題解決策を「これこそアクティブ・ラーニング」と尾木ママが評価

社会課題を解決するアイデアを小・中学生がプレゼンテーションする国内最大規模の大会「Startup Jr. AWARD 2021 Supported byマイナビ学生の窓口」の決勝大会が6日、東証Arrowsで開かれた。

この大会は、今年度が3回目の開催で、434組(延べ人数1288人)の応募があり、書類審査などを経て、小・中学生部門各5組、計10組がこの日の決勝大会に進んだ。小・中学生は制限時間8分の中で、資料や動画をモニター画面に映し出し、手振り身振りなど体を大きく使って、自身のアイデアを披露した。

小学校の部で大賞に選ばれたのは、根木絢未さん(玉川学園小学部5年生)。不衛生が原因で死亡する子どもが多いことに注目し、自ら手洗いロボットを制作した。

特別審査員の尾木直樹さんは「3Dプリンタでロボットまでつくっちゃって、とっても科学的。身近なところにとどまらず、世界に目を向けていくのもすごい! これが本当の学力なのよ。あなた、尾木ママのお墨付き!」と講評した。

中学校の部では、宮原知大さん(都立立川国際中等教育学校 1年生)が大賞に選ばれた。宮原さんは、経済発展後も国内で餓死者がいることに着目し、お金でモノを買うということとは別の方法として、「物的ベーシックインカム」の構想を披露。一定年齢に達した人が1次産業に従事することで、すべての人が一生涯食料を保証される構造をプレゼンした。

審査員長の前田鎌利(プレゼンテーション協会代表理事)は「圧倒的なプレゼン力だった。パブリックの情報を集めて分析して考えをまとめていた。まるでジャーナリストみたい。宮原くんの構想が世の中を変える仕組みになってくるといいなと思います」と話した。

◆尾木ママ「つまんないクイズ番組より、こちらを放送したほうがいいのに」

尾木ママはファイナリストの小・中学生を前に、「この大会はどこかテレビ局が全国放送したらいいと思うわ。つまんないクイズ番組とか、騙し合って落とし穴に落っこちちゃうような番組ばかりでなくて、皆さんのプレゼンを多くの人に見てもらいたいと思った。なんとかしてくれないかしら。皆さんがやっていることは、文部科学省が進めようとしているアクティブ・ラーニング。もう、暗記モノでテストをやるなんて終わっているのよ。きょうは、すごく励まされた」と話した。

この大会は小・中学生のプレゼン大会としては国内最大規模で、主催のバリューズフュージョンは文部科学省が主催する「青少年の体験活動推進企業表彰」で優秀賞に選ばれた。決勝大会は、前田鎌利(プレゼンテーション協会代表理事、審査員長)、横川正紀(株式会社ウェルカム代表取締役)、高谷理佳(マイナビ学生の窓口マガジン編集長)、堺井啓公(2025年日本国際博覧会協会広報戦略局長)の各氏と、特別審査員の教育評論家、尾木直樹さんが審査にあたった。

大賞を除く各部の受賞者は以下のとおり(各部のファイナリストの氏名と発表内容は、資料末尾をご参照ください)。

【小学生の部】

・優秀賞=吉田詩さん(東京農業大学稲花小学校3年生)

・特別賞=水野翔真さん(尾道市立土堂小学校5年生)

【中学生の部】

・優秀賞=宮澤 優月さん(軽井沢風越学園2年生)

・特別賞=萩原一颯さん(群馬大学共同教育学部附属中学校1年生)

【受賞チームを牽引した先生を表彰する「ベストナビ・ティーチャー賞」】(今年度から新設)=軽井沢風越学園

◎【小学生の部 ファイナリスト】

吉田 詩(よしだ うた) 東京農業大学稲花小学校 3年生

世界から貧困をなくすための「子ども募金プラットフォーム UTA」

今大会最年少ファイナリスト。小学生という立場から絶対貧困層をなくすためにできる取り組みを発案。子どもは勉強や運動の目標を設定し、達成したら親や企業からお金をもらい、絶対貧困の課題解決に取り組むNPO団体などに寄付するプラットフォームを提案。

富所 凜(とみどころ りん) 早稲田実業初等部 5年生

ありそうでなかった!「新しい読書スタイル」とその先にあるニューノーマル

幼稚園時代にすでに1000冊以上の本を読んできたという「読書家」。同世代で本の話題が出ないのは、情報共有の場がないことが原因だと分析。自分が書き続けている読書記録をオンライン化することを提案。プラットフォームはゲームなどの要素も盛り込んだ。

根木 絢未(ねぎ あやみ) 玉川学園小学部 5年生

正しい手洗いで みんなのHAPPYへ

5歳の誕生日を迎えられない子どもが地球に560万人いる。手洗いをすればこの人数を減らせる。ここから手洗い中に励ましたりほめてくれたりする「手洗いロボット」を開発。ロボットの普及で得た利益で、世界各地に水を敷くことを考えている。

萩原 竜誠(はぎわら りゅうせい) 群馬大学共同教育学部附属小学校 5年生

未来を守る電気船充電ステーション

2年連続でファイナリストに選出。日本の物流を支える大型商船から排出するCO2を削減することに着目。開発が進む電気船のエネルギー源として、波力を利用した「岸壁波力発電」を考案。全国各地に電気船充電ステーションを配置し、新しい物流システムを提案する。

水野 翔真(みずの しょうま) 尾道市立土堂小学校 5年生

日本の未来を変える「自己肯定感」

自らフィールドワークを実施し、日本人は外国人に比べて自己肯定感が低いことがわかった。自己肯定感を高めるための「ポジティブ変換メソッド」を考案。このメソッドを使うと、日本の未来を変えていけると提案する。

◎【中学生の部 ファイナリスト】

萩原 一颯(はぎわら いぶき) 群馬大学共同教育学部附属中学校 1年生

ボードゲームで日本の漁業活性化!!

小学生部門の萩原竜誠君の兄。後継者不足や魚食離れ、漁獲量の減少など漁業の衰退を回避するため、漁師体験ができるボードゲームを1年半かけて5回の改良を重ねて考案した。水産資源の大切さやサステナブルな漁業のあり方も学べる機会を創出している。

宮原 知大(みやはら ともひろ) 都立立川国際中等教育学校 1年生

真のソーシャルイノベーション 物的ベーシックインカム

国内で増加している餓死。お金がないと生きていけないという社会の問題を解決するため、国民が一定期間1次産業に従事する代わりに、国民すべてに食料を生涯保証する物的ベーシックインカムを考案。餓死が減るだけでなく働き方の変化が起きる効果もアピールした。

尾関 駿(おぜき しゅん) 埼玉栄中学校 2年生

骨伝導イヤホンで視覚障がい者が暮らしやすい社会を!!

視覚障がい者が安心して外出できるよう、足音などの環境音が聞こえる骨伝導イヤホンの活用を考案。博物館の音声ガイドのように、点字ブロックから位置情報などの音声ガイドを発信する。途中で途切れた点字ブロックがあっても1人で目的地に行けるようになる。

松井 優人(まつい ゆうと) 埼玉栄中学校 2年生

雑草を再生紙に加えることは可能か?

雑草の葉肉を溶かして繊維だけを取り出し、再生紙に変える方法を、埼玉県の紙製造業者と一緒に紙を製造した。現状では書き心地などは市販の紙には及ばないが、雑草の処分に困る課題を解決し、世界で行われている木材の違法伐採を減らす効果がある。

宮澤 優月(みやざわ ゆづき) 軽井沢風越学園 2年生

ペットショップ改革〜命を繋ぐ場所「Connect Life」をつくりたい〜

保護犬を救う活動を行っている彼女は、飼育放棄されるペットを減らすため、人とペットをつなぐ新たな架け橋となる場所を提唱。その場所となる「Connect Life」では生体販売をせず、アドバイザーを配置して病院・シェルターを併設することを提案している。

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