【コラム】ソニーとホンダの夢の提携がテスラを超える戦略とは?〜妄想を暴走させて日本の可能性を感じてみた〜

バブル最終年の’91年に就職した世代の自分にとっても、SONYとHONDAの二大ブランドはまさに別格だ。

先進的でアグレッシブ、グローバルで更に”カッコいい”そのブランドは、ウォークマンやシビックといった世界を変える製品とともに、日本の若者の”自信”のようなものの支えになっていたと言っても過言ではない。

そんな昭和のオジサン的ノスタルジーをくすぐるだけでなく、今のこの大きな社会変化の中で考えれば、この提携には大きな可能性を感じざるを得ない。

ここからは完全に個人的な妄想に過ぎない。

やや過剰反応なのも自覚しているが、自分のイメージはこうだ。

ポイント2つある。

まずはSONYが、今や家電メーカーでも音響メーカーでも無く、今や押しも押されぬ世界有数の”ゲーム会社”だということだ。

復活して余りあるその業績の内訳を見ても、ゲームを含めたエンタメ事業の重要度は言うまでもない。

もう一つは、HONDAがその技術もさることながら、F1で名を馳せたメーカーだということ。

ついこの間の昨年末、残り1周での大逆転という劇的な幕切れで30年ぶりに優勝し、撤退の有終の美を飾った大ニュースは記憶に新しい。

個人的には今回の提携の鍵が、この2点から紐解けるのではと思えてならない。

つまり、(比較して失礼かもしれないが)トヨタとパナソニックの提携だとしたら、車体と電池を分業して作る以上の想像はあまり膨らまないが、今回はそのレベルに留まって欲しくはないのだ。

「どんなカッコいい、性能の良いEVができるんだろう?」

そういうレベル感の期待値では、とてもトヨタの時価総額の3倍にもなるあのテスラを超えるとは思えない。

そうでなく自分がつい妄想してしまうのは、もっと根本的な変化をもたらす製品だ。

目指すべきは”世界最大のゲーム機”かもしれない

今やYoutubeやテレビで見ない日のない、あの「ひろゆき」さんが言っていた。

「メタバースなんて、もう枯れてるんですよ。ゲームの世界は既にあれは実現されているんです。みんなメタ社を買いかぶり過ぎです」

相変わらずの煽り度合いだが、なるほどごもっともな気もする。確かにビジネス用途の手軽さという意味ではかつてのセカンドライフのレベルを大きく超えて「ついにここまで」と思わせるメタ社の世界も、まだまだ誰もが使いやすいと言える完成度には程遠い。

それと比べてファイナルファンタジーにやフォートナイトや”あつ森”などのゲームの世界は、アバターとなって別世界で生きる世界を味わう人が、既に世界中に広がっている。

もしこの両社の提携で、こうしたメタバース的な世界とEVが繋がったら、一体どんな世界が広がるんだろう…。

つまりそのEVは車というより、巨大なゲーム機という位置づけになるはずだ。

更ににやや大げさに言えば、世界初の「リアルとメタバースを行き来する車」を目指すべきなのだ。

もちろん、通常のEVとしての機能は普通に満たす必要はある。

しかし、例えば自宅のガレージに止めている間も”フロントガラス”に映像が写り、その映像に合わせて揺れたり傾いたりする「シミュレーター」のような機能がついたら、これはもう誰もがメタバース世界のF1ドライバーになれる、夢のコクピットになるだろう。

それだけではない。

通常のドライブでも、「ポケモンGO」や「ピクミンブルーム」のような仕掛けで、あちこちを巡る楽しみを引き上げることだってできるはずだ。

地方創生に携わる身としては、そこにはやはり「地方のおすすめスポット」や「隠れた名店」情報をうまく絡めた仕掛けも期待したい。仮想空間でのドライブが、地方への集客に一役買う可能性は十分あると思う。

全国各地でいわゆるMaaSの”実証実験”が盛んだが、正直未だにGoogleMapを超える仕掛けにはお目にかかったことが無い。
しかしこうしたゲーミフィケーションがうまく加われば、Googleにも全然太刀打ちできそうだ。彼らはコンテンツで成功した試しはほぼ無いのだ。

タイヤメーカーのミシュランが、車で遠出をしてタイヤをすり減らしてもらうために、世界の隅々にあるレストランを紹介するガイドを作ったのは有名な話だ。

それと同じく、仮想空間とリアルを橋渡しするようなモビリティが登場したら、世界中の人々がかつて無く自由に「移動」して交流し、世界がもっと平和になるに違いない。

こうした方向性は当然、自動車業界のビジネスモデル面にも大きな影響をもたらすはずだ。

もう5年以上も前、2016年にこのネイティブ.メディアを始めた頃にこんなコラムを書いた。

これはGoogleが自動運転に参入する理由が、そのビジネスモデルに大きくひも付いていて圧倒的に有利だということを指摘したものだ。

この視点では未だに日本のどのメーカーも解決策を見いだせていない。つまり”車の所有”が激減する次の時代で、得意の広告事業を自動運転の車内でも必ず仕掛けてくるGoogleには未だに対抗策は見つかっていないのだ。

しかし、こと”ゲーム”となると局面は一変する。

コンテンツ事業で成功体験がほぼ無いGoogleとも十分対抗でき、正しく「ゲームチェンジャー」となる戦略ではないか。

SONYとHONDAが、リアルでも仮想空間でも世界中を移動できるモビリティを創ったら…これは間違いなく、かつてのウォークマンやシビック以上に世界を変える、真のモビリティDXとなるのではないだろうか。

蛇足:新会社の社名への期待

当事者の皆さんにとっては、何ともありがた迷惑なほど勝手に期待と想像を膨らませてしまったかもしれない。

いやもしかしたら、その程度のイメージはもう大前提で進んでいる可能性もある。

何れにせよ、どうか広い心でお許し頂きたい。

余計ついでに、両社で立ち上げるという新会社の社名(ブランド)についても、一言言わせていただきたい。

もちろん、「SONDA」や「HONY」になんて、なるはずがないのは分かっている。

しかしどうか、「HONDA SONY」や「SONY HONDA」みたいな、どこかのメガバンクのような「たすき掛けブランド」にだけはしないでいただきたい。

世界の誰もが知るブランドを利用しない手はないという理屈もわかる。

これだけ勝手に期待を押し付けておいて言うのも何だが、どうか新しい時代の新しいブランドをゼロベースで築いて欲しい。

井深さんや本田さんの写真を使うのは、最初のプレスリリースだけで十分ではないかと思う。

新しい次代のワクワクする製品を担うのは、その両社のDNAを引き継いだ若い世代に違いない。

できれば我々のような50代以上は、彼らのサポートに回るほうが良いかもしれない。

今回の提携のニュースには、本当にいい刺激をいただいた。

どんなに暗いことが起こっていたとしても、常に挑戦する姿勢を忘れず、やるべきことをやるしかない。

社会の暗さに引っ張られて、打つ手がないとネイティブにとらえてしまいがちだが、そんなことはないはずだ。

そもそも両社が生まれた時代は、我々が想像できないくらい荒廃した社会だったはずだ。

いつもどんな時代でも、アイデアや打開策はあるはずなのだ。

勝手な妄想が過ぎたが、日本にもまだまだ、可能性はいくらでもあるという勇気をいただいた今回のニュースに、小さいながらも事業を営む端くれとして、心から感謝したい。

そして、自分も改めて頑張ろうと思う。

文:ネイティブ倉重

【著者】ネイティブ株式会社 代表取締役 倉重 宜弘(くらしげ よしひろ)
愛知県出身。早稲田大学 第一文学部 社会学専修 卒業。金融系シンクタンクを経て、2000年よりデジタルマーケティング専門ベンチャーに創業期から参画。大手企業のデジタルマーケティングや、ブランディング戦略、サイトやコンテンツの企画・プロデュースに数多く携わる。関連会社役員・事業部長を歴任し、2012年より地域の観光振興やブランディングを目的としたメディア開発などを多数経験。2016年3月にネイティブ株式会社を起業して独立。2018年7月創設の一般社団法人 全国道の駅支援機構の理事長を兼務。

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