ワクチン接種率で異なるコロナ流行。香港では封じ込めが仇に、スウェーデンは高接種率に基く制限解除が功を奏す

By 前田静吾

香港とスウェーデンの異なる新型コロナウイルス感染症対策で、流行の違いが明らかになったことことがわかった。流行の違いには、ワクチン接種の政策の違いによるものがあり、接種率が高い国での流行の収束傾向と、オミクロン株以前の封じ込めによる接種の遅れが感染者数の増加につながっているとこが示されていることがわかった。

日本においてもブースター接種が急ピッチで進められているが、新規感染者の高止まりが指摘されており、ブースター接種の接種開始のタイミングと接種率が今後の新規感染者と重症者数の傾向に影響を与えると思われ、この2国の事例も大いに参考にしたいと思われる。

今回同時期に発表されたニュースは、スウェーデンと香港の最新の新型コロナウイルス感染症の流行と対応に関する情報です。スウェーデンでは、新型コロナウイルスに対する制限を無くして約1カ月経つものの、制限撤廃に関わらず新規感染者が急減しています。その一方で、香港においては、昨年末には感染者数を大幅に抑え込めていたものの、オミクロン株の流行とブースター接種の遅れから現在急拡大している。

スウェーデン:制限撤廃後も感染者数、重傷者数ともに急減

スウェーデンでは、22年2月9日に新型コロナウイルス感染症の流行を食い止めるための制限を科学者らの批判にされながらもほぼ全て取り払っています。先週木曜日には集中治療を必要とする患者の数は53人と前々週に比べ24人減少、介護を要する患者も1600人から1300人に減少している。新規での患者数に関しては、検査数が減少しているので実際の患者数の把握は難しいものの、減少しています。
今回のスウェーデンの制限解除の理由としては、ブースター接種の接種率が高くなったことに加え、検査に関するコストに関する政府としての考え方がありました。解除前までに行っていた大規模な検査には、大きなコスト負担があり、検査による利益と比較して費用が掛かりすぎるとの判断がありました。この一か月間の動向に関して、スウェーデンの保健省Karin Tegmark Wisell氏は記者会見で、以下のように述べています。

「制限解除が感染を拡大させたという兆候はなく、適切で正しい判断だった。予防接種のレベルが高く、オミクロンの変異型は重症化しにくいため、感染拡大の有無にかかわらず、非常に安心できる状況だ」

BioToday: スウェーデンでのCOVID-19感染が制限をほぼ全てなくしたにもかかわらず急減

香港:ワクチン接種の遅れがオミクロン株の流行対策へのおくれ

一方で、香港では、昨年末までの封じ込め成功が仇となって香港でワクチン普及が遅れ、ここへきて患者数が急増しています。2021年の間、香港は新型コロナウイルス感染への封じ込めはうまく行っていたように見られる。1年間、香港での一週間あたり患者数は1日あたり平均17人で、感染数が一日で60人を超えることはありませんでした。

しかし1週間前の3月1日の香港での感染者数は56,000人で、死亡数は246人に増えています。感染数はその後も高止まりしており、6日には31,008人の感染が確認されて153人の死亡が報告されています。

香港ではCOVID-19ワクチン接種がそれほど普及しておらず、今年1月1日時点での接種済みの人の割合は僅か62%で、高齢者のワクチン接種率は更に低く、2月7日までにワクチンを少なくとも1回接種した80歳超の高齢者は3人に1人の33%のみでした。先週とその前の週の2週間に亡くなったおよそ1,800人の多くは老人ホームでワクチン非接種の方々でした。Hong Kong Baptist Universityの研究者の2021年6月の調査ですが、香港住民2,753人の半数超がワクチン接種に乗り気でない、もしくは反対をしていました。

Biotoday:これまでのCOVID-19封じ込め成功が仇となって香港でワクチン普及が遅れている

日本:3月3日時点でブースター接種は3割程度。新規感染者の下げ止まり傾向が続く

日本において、両国の例えは参考にする必要があると思われる。産業界をはじめとした経済を優先として新型コロナウイルス感染症対策へのプレッシャーと、蔓延防止等重点措置がどの程度新型コロナウイルス感染症対策へ有効であるのか懐疑的な世論の高まりは、更に高くなっています。

スウェーデンと香港の事例から日本も学べるものを挙げてみた。

  • 新規感染者の抑え込みで、対策を緩めてはいけない。
  • ワクチン接種の推進。特にリスクの高い層
  • ブースター接種率を指標とした制限の撤廃

スウェーデンの制限の撤廃は、科学者らの反対にもかかわらず、政府の判断で撤廃への舵を切ったことには、財政上の課題があったものの、オミクロン株に特徴とする軽い症状の傾向と、ワクチン接種が大幅に進んだことがあります。日本政府としても、ブースター接種の接種率の高まりが、経済活動に関する制限の撤廃へ向けた大切な指標であることを示すことで、ブースター接種を進めるなど、具体的な出口対策に結び付けたコロナ対策が必要と考えます。

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